JOURNAL 

    独創的なスプレーガンの開発で付加価値を提案

    大井産業と恵宏製作所の「二刀流」

    • #トピックス

    2020/11/15

     大井産業(田中俊二社長、本社=福岡県福岡市)は6月1日より、上塗り用スプレーガン「二刀流」の販売を開始した。
     企画は遡ること3年前。自動車補修塗料部の中村宜史次長と熊本営業所の宗村晋課長、松村薫係長、中村大輔主任の4人を中心にプロジェクトチームを立ち上げ、今年8月に迎えた創業70周年記念事業の一つとしてオリジナル製品の開発に着手した。
     4人で協議した末、新たに開発する製品はスプレーガンに決まった。「塗装技術者の武器であり、こだわりを持つ人が多い。他社との差別化を図り、自社の競争力を高めてくれる製品だと考えた」(宗村課長)。
     また、「開発するからには従来にはない機能が必要」と製品仕様にあるアイデアを加えた。それが、1丁でサイドカップ式とセンターカップ式の両方を兼ねる独自機構の採用である。それぞれの良さを両立することで、塗料による使い分けを可能にした革新的な機構は、実用新案を取得した。
     このアイデアを形にしたのが、共同開発した恵宏製作所(村上正明社長、大阪府東大阪市)。「ものづくりの街である東大阪市の会社で、技術力の高さには定評があり、申し分のないパートナー」(中村次長)として協力を依頼。村上社長は二つ返事で引き受けた。時には意見を激しくぶつけ合うこともあったが、3年の歳月を経て、まったく新しい1丁2役をこなすスプレーガンは完成した。

    (写真右から)中村宜史次長、松村薫係長、宗村晋課長、中村大輔主任

     こだわりは、独創的な機構だけでなく細部にまで至る。コンセプトは「和」で統一を図り、製品名は塗装技術者の武器としての意味と、投手兼野手として活躍する大谷翔平選手から想起して「二刀流」と名付けた。また全9色のカラーバリエーションを用意し、黒色は「夜霧」、ピンクは「桜花」など和を連想させるネーミングとした。
     プロジェクトメンバー以外の社員もまた、熱い思いをスプレーガンに込める。「二刀流」の文字は、本社1課の神山明彦氏が筆を入れた。今年11月で定年を迎える同氏は、何度も筆を入れ直しながら書き上げ、「定年前に一仕事ができた」と胸を張る。デザインを担当したのは、グラフィック事業部の川村哲人氏。手描きのスケッチを作り、一切の妥協を許さず美しいフォルムを追い求めた。
     当初、毎年4月の同社主催による展示会「大の市」で披露する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため中止となった。一度は披露する場を失ったが、6月1日より各色限定50丁で発売。さらに10月には、プレミアムモデルとして迷彩柄などのデザインをあしらった5色の追加モデルを発表した。
     「競争が激化する中、自社の競争力を高め、永く付き合うことができるファンを増やしていきたい」(宗村課長)。「社員の熱い思いが詰まったスプレーガンを一人でも多くの人に手に取ってもらいたい」(中村次長)。鈑金塗装市場の縮小により、ボデーショップと同様に塗料販売ビジネスも過渡期を迎える中、独自性を打ち出して顧客に付加価値を提案していく。

    化粧箱も同社のこだわりの一つ。商品名を十字に見せるのは松村薫係長のアイデア

    「二刀流」特設サイト。開発秘話や商品ラインアップのほか、塗料カップの付け替え方法を動画で紹介

    プレミアムモデルは全5色で各色限定10丁を販売する(上から赤鉛、孔雀青、黒鉛、深緑、八重桜)

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