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国交省、レクサス高輪の指定自動車整備事業の指定を取消。トヨタ、11社12拠点の不正車検と再発防止策を公表
サービス部門の業務量増加に対する慢性的な人員不足、設備増強の遅れが主要因か
2021/10/08
国土交通省関東運輸局は2021年9月29日、不正車検を行ったトヨタモビリティ東京レクサス高輪に対し、指定自動車整備事業の指定の取消処分を行うとともに、自動車検査員4人を解任した。
これは、同年6月17日に国交省関東運輸局がレクサス高輪の監査を実施した結果、一部検査の未実施や検査結果の改ざんが判明したことを受けてのもの。7月20日には、トヨタモビリティ東京が国交省東京運輸支局に報告、トヨタ自動車がレクサス高輪の不正車検と今後の対応策を報道発表している。
その後トヨタ自動車は、トヨタおよびレクサス販売店の指定・認証工場および車検センター全4,852拠点の総点検を実施。国交省の各地方運輸局も8月以降、トヨタ系列販売会社に対し順次監査を実施してきた。
その結果、レクサス高輪を含む11社12店舗の不正車検が判明。トヨタ自動車は9月29日に国交省自動車局へ報告するとともに、調査結果と再発防止策を公表した。概要は以下の通り。このうち1~6は故意性あり、7~12は過失によるものとしている。
【指定整備違反が判明した販売店/拠点/違反内容/台数/判明経緯】
1.トヨタモビリティ東京/レクサス高輪/排ガス検査未実施、4WD車の速度計未検査、ヘッドライト光度改ざん、サイドスリップ計測値改ざん、パーキングブレーキ検査未実施/517台/監査
2.トヨタモビリティ東京/江戸川瑞江店/4WD車の速度計未検査/5台/監査
3.広島トヨタ/広店/他人のIDで電子保安基準適合証を承認・発行、検査員が自ら整備作業を実施/8台/自社
4.トヨタカローラ山口/安岡店/4WD車の速度計未検査、ディーゼル車の排ガス検査未実施/10台/自社
5.ネッツトヨタ山梨/本社セイリア店/排ガス検査未実施、4WD車の速度計未検査、ヘッドライト光度改ざん、ブレーキ制動力検査の不適切実施、サイドスリップテスタをロックしたまま検査/260台/監査
6.トヨタカローラ愛媛/中央通店/一部の部品交換せずに保安基準適合証を発行/1台/監査
7.ネッツトヨタ沖縄/南風原店/サイドスリップテスタをロックしたまま検査/20台/自社
8.鳥取トヨペット/米子店/サイドスリップテスタをロックしたまま検査/519台/自社
9.トヨタカローラ宮崎/日南店/同一性の異なる車両に保安基準適合証を交付/1台/自社
10.徳島トヨペット/阿南店/同一性の異なる車両に保安基準適合証を交付/1台/自社
11.沖縄トヨタ/宮古支店/同一性の異なる車両に保安基準適合証を交付/2台/自社
12.長崎トヨペット/琴海店/保険が不足している状態で保安基準適合証を交付/1台/自社
【総点検結果から見えてきた課題と販売店における今後の取り組み】
1.サービス現場における過大な業務量と、エンジニアの人員不足
・作業手順や作業内容が決まっていない、または見直しが不十分
・エンジニアがお客様の納車引取りや洗車作業等、付随する業務に追われていたこと
↓
・標準作業の明確化とTPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善活動
・エンジニアを本来業務に集中させる対応(作業の切り分けや専用スタッフ配置など)
・エンジニアの採用促進(外国人留学生や技能実習生を含め多様な人材登用など)
・土日などの車検整備の入庫集中を回避するため、平日入庫、他拠点での対応を促進
2.車検制度への役割認識と遵法意識の不足
・経営層・管理者や検査員本人が、国の業務を代行している認識の甘さ
・サービスと営業間のコミュニケーション不足、サービスへのしわ寄せ
↓
・代表者や店長、営業スタッフ、エンジニアに対する指定事業の重要性の教育強化
3.経営層・管理者と現場作業者の風通しの悪さ
・経営層と管理者が目標や実績のみを管理し、現場の実態を把握できていないこと
・エンジニアが働く環境、ストレス、処遇等の悩み・不満を言いづらい雰囲気
↓
・代表者や経営層が現場をまわり「現場の困り事」に対応する活動の継続実施
・困り事を相談できる窓口の設置と従業員への周知
4.指定整備における監査機能の不備
・監査の目的や内容への理解が不足し、帳票類の確認に留まるなど監査手法が不十分
・完成検査が正しく行われたかを、第三者が確認する手段がないこと
↓
・監査内容の見直し(従来の記録簿点検のみならず、作業実態も確認)
・定期的な自主点検・店舗間のクロスチェック
5.車検を正しくおこなうためのお客様への確認や説明の不足
・車種・年式等問わず、1台当りの作業時間が一律に固定され時間が目的化していたこと
・車からの荷物降ろし、ご来店時間等、お願いすべき事項が出来ていないこと
↓
お客様への周知(入庫前の車両状態確認、荷物降ろし、追加作業発生時の延長等)
【トヨタ自動車における今後の取り組み】
1.TPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善活動・販売店活動の支援
・車検標準作業手順書のひな型や作成ツールの配付、教育コンテンツの提供
・改善や風土改革のノウハウを有するトヨタ自動車工場現場の社員の派遣
・トヨタ自動車の工場現場における店舗マネジメント研修
2.販売店との向き合い方・制度の見直し
・全国一律の方針・目標管理から1店舗1店舗の困り事をベースとした働き方へ見直し、販売店表彰制度、販売店契約の見直し など
トヨタ自動車は、不正車検発生の背景として前述のほか、「メーカーとして、お客様を最前線で支えている現場の実態や要望を十分に把握できずに、入庫台数や売上などの数値目標を中心とした方針や表彰制度を展開してきたことは、メーカーの責任であり、要因の一つとなっていたのではと受け止めている」と補足。
また、各店舗における不正車検の対象車両とそのオーナーに対しては、「直ちにお詫びの上、当局のご指示も仰ぎながら、再検査等を順次実施している」。
国交省自動車局は、トヨタ自動車からの報告を受け、対象車両の再検査の早急な実施、系列販売会社に対する事案の周知及び再発防止の徹底、四半期ごとの状況報告(当分の間)をトヨタ自動車に要請した。今後は地方運輸局において、レクサス高輪以外の11店舗における違反の事実が確定次第、速やかに処分を実施する見込み。
なお、トヨタモビリティ東京は、今回の処分に伴い、社長以下全役員およびレクサス高輪関係者の懲罰処分を実施。「今回の不正車検においては、レクサス高輪において増加する仕事量に対し、エンジニアを中心とした人員や設備の増強が追い付かず、慢性的な高負荷状態であったにもかかわらず、会社が適切な対応をしてこなかったことに要因があった」として、レクサス高輪および同社全社で、以下の改善に取り組む計画。
【レクサス高輪での改善取り組み】
・ヘッドライトテスター等、サービス機器の交換
・エンジニア休憩室の移設・拡張
・オペレーション改善・人員増強による現場の負荷低減
・小集団活動による職場のコミュニケーション強化・風土改革
【全社での改善取り組み】
1.働く環境の改善
・老朽化した設備機器・ 店舗ファシリティの改善
2.現場の負荷軽減
・人員増強(エンジニアおよびサポート人員の増強)
・車検業務オペレーション改善
3.人材育成・社員教育の強化
・経営陣からスタッフまで、職層別コンプライアンス教育の強化
4.業務改善活動・監査の継続的強化
・標準作業の再構築と作業時間の見える化
・監査項目に「検査業務に係る確認とヒアリング」を追加
・フィールドマネジャー(巡回指導員)による確認項目を追加
5.人事制度・処遇
・エンジニアを中心とした処遇改善
・チーム制作業体制の検討
6.マネジメント改革
・目標マネジメントの見直し
・横断的監査組織の構築
7.風土改革
・職場内コミュニケーション活性化、社員相談窓口の周知徹底
レクサス高輪
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