JOURNAL 

    自動車技術総合機構 交通安全環境研究所 所長 江坂行弘氏

    変化を見据えた調査研究で自動車技術の発展・課題解決に貢献

    • #インタビュー

    2021/09/15

    今年7月、自動車基準策定のための試験研究、型式指定審査、リコールの技術的な検証などの役割を担う交通安全環境研究所の所長に、江坂行弘氏が就任した。国土交通省自動車局整備課長や同技術政策課長、同次長などを歴任してきた江坂氏に、就任の抱負や自動車技術の変化への対応などについて、話を聞いた。

    江坂行弘所長

    ──就任の抱負を

     交通安全環境研究所(交通研)は、自動車の急速な普及による事故の増加や公害の深刻化を受けて1950年に設立された。自動車の安全と公害の防止に必要な調査研究を進めて国の政策を支援するという設立の目的、加えてリコールに関する技術検証や各種基準策定のための試験研究を担うという使命は、今後もしっかりと果たしていかなければならない。
     一方、5年前には旧自動車検査独立行政法人と統合し、自動車技術総合機構の交通研として新たなスタートを切った。この統合を受けて、自動車検査時に蓄積されるデータの活用や、検査の効率化に向けた改善提案など、それぞれの長所を活かしたシナジーの創出にも取り組みたい。
     また、情報発信の強化も進めてい
    く。これまでも研究所の役割及び重要性を社会に伝えることを目的に、適宜情報を提供してきた。今後はその目的にプラスして、人材確保のための情報発信という観点も求められる。様々な業界で人材不足が叫ばれているが、それは公的な機関においても例外ではない。私たちの仕事の重要性ややりがい、過去の実績などを分かりやすく伝えていく。


    ──自動運転技術の高度化への対応について

     自動運転技術の評価を目的とした試験設備や、システムから人へ運転を交代する際の安全性を検証するドライビングシミュレーターなどを導入し、自動運転車の実現・市場投入などの支援を目指した調査研究を進めている。また、国際連合欧州経済委員会自動車基準世界フォーラム(WP29)において、自動車のサイバーセキュリティーなどに関する専門家会議に参画し、当研究所の職員が共同議長を務めるなど国際基準の策定にも貢献してきた。
     政府は官民ITS構想・ロードマップにおいて、2025年に高速道路でのレベル4自動運転車の市販化を目指す方針を示している。カーメーカーとの情報交換を進め、オールジャパンとして国際基準を提案できるような体制を構築し、日本が自動運転技術において世界をリードするための支援をしていきたい。


    ──カーボンニュートラルへの対応は

     カーボンニュートラルの実現に向けて、国内でも電動化が加速すると見ている。電動車に搭載されるバッテリーの安全確保も、我々の重要な使命となる。バッテリーの安全性を評価するために専門家の育成に取り組むなど、将来を見据えた体制作りを進めている。
     また、これまで研究所では電動化に対応した排出ガス・燃費基準の高度化に貢献してきた。今後はLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方に基づく自動車のCO2トータル排出量の公正・公平な算定方法の開発や、電動車の燃費(電費)測定法の精緻化などに取り組んでいきたい。
     さらにはeフューエルなどの合成燃料の本格投入も予想される。新たな燃料が登場した際、使用時に有害物質が排出されることがないかなど、その安全性・環境性への評価についても対応が求められる。
     カーボンニュートラルに向けた動きは、今後国内外で急激に加速していくだろう。その動きに遅れることなく先を見越して準備を進め、しっかりと対応していく。

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