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補機バッテリーとブレーキフルードの交換需要は消滅する!?【人とくるまのテクノロジー展2024横浜から見えた点検整備の未来】
鉛代替リチウムイオン補機バッテリーと四輪電動ブレーキを各社が提案
2024/07/31
2024年5月22~24日にパシフィコ横浜で開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)では、過去最多の590社・1115小間が出展。近い将来の点検整備に大きな変化をもたらすことを予感させる新技術も、数多く出品されていた。
その中でも、今後のパラダイムシフトがほぼ確実視できるようになった技術が二つある。一つは補機バッテリーのリチウムイオン化、もう一つがブレーキのバイワイヤ=フルードレス化だ。
リチウムイオンバッテリーによる12V/24V鉛バッテリーの代替は、2022年の同展示会において、東芝がチタン酸リチウムイオンバッテリー「SCiB」で提案。2024年の今回は24V鉛代替バッテリーを2025年度中に量産開始する計画を明らかにしている。
東芝のチタン酸リチウムイオンバッテリー「SCiB」。手前中央が24V、右が12V鉛代替バッテリー
なお、ジェイテクトもこの流れに追随。リチウムイオン補機バッテリーに同社の高耐熱リチウムイオンキャパシタ「リバディ」を組み合わせることで、鉛バッテリーに対しエネルギー密度が低いリチウムイオンバッテリーの弱点を補いつつ、リチウムイオンバッテリーの小型軽量化と長寿命化、メンテナンスフリー化を図ることができる、としている。
リチウムイオンバッテリーは鉛バッテリーに対し、軽い、充電時間が短い、補水が不要、サイクル寿命が長いなどのメリットがあり、適切な充放電状態と年間走行距離を維持できれば無交換も非現実的ではなくなるのが大きなメリット。
一方でリチウムイオンバッテリーは数種類のレアメタルを用いることからイニシャルコストが高い。そのため実用化初期段階では、交換用よりも新車装着用から先に普及すると予想される。
だがリチウムイオン補機バッテリーを新車装着する車両の普及が進めば進むほど、補機バッテリーの交換需要が減退する可能性は高い。その頃には交換用補機バッテリーのニーズが、鉛バッテリーを新車装着していた旧車のオーナーに限られたものになるのかもしれない。
ジェイテクトの高耐熱リチウムイオンキャパシタ「リバディ」。手前右側が12Vモジュール
ブレーキのフルードレス化に関してはコンチネンタル・オートモーティブが、やはり2022年の同展示会などで、前後ブレーキとも電動機械式として油圧システムを排除した「FBS3」(Future Brake System 3)として提案している。
と同時に、「FBS3」よりも手前の技術として、電動車向けにローターをソリッド化し厚みを減らす一方で外径を拡大、キャリパーとパッドを小型化した「グリーンキャリパー」、四輪ドラムブレーキ、機械式ペダルと電子ペダルの双方に対応するブレーキ・バイ・ワイヤ「FBS1」、リヤブレーキのみを電動機械式とした「FBS2」も紹介している。
コンチネンタル・オートモーティブの「グリーンキャリパー」(中央右側)
その後アイシングループと日立アステモも、それぞれ「電動ディスクブレーキ」と「電動機械式ブレーキ」をジャパンモビリティショー2023や今回の人テク展2024横浜に参考出品し、この動きに追随。
アイシングループの「電動ディスクブレーキ」
これらのフルードレス化されたブレーキシステムは、回生ブレーキへの依存度が高い電動車のみならず、緻密なブレーキ制御が求められる自動運転車両の進化・普及によっても採用車種が拡大する可能性がある。
回生協調ブレーキを備えた電動車ではすでに、ブレーキパッド・ローターの交換頻度が大幅に低下する傾向が顕著に表れている。そしてフルードレス化されたブレーキシステムを搭載する車両では、ブレーキが事実上メンテナンスフリー化することも、想定しておく必要があるだろう。
(文・写真=遠藤正賢)
日立アステモの「電動機械式ブレーキ」
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