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    【IAAE2023:国土交通省】自動車整備技術の高度化や整備士人材不足を乗り越えるための制度改正や支援策とは?

    特定整備制度、OBD点検・検査、整備士資格制度改定、車検証電子化、各種補助金など、自動車整備業界の課題と解決策を総括

    • #イベント

    2023/03/24

     2023年3月7~9日に東京ビッグサイトで開催された、自動車アフターマーケット総合展示会「国際オートアフターマーケットEXPO(IAAE)2023」。

     セミナー「整備業界を取り巻く状況とその対応」には、国土交通省自動車局整備課の竹村圭史(たけむらよしふみ)課長補佐(総括)が登壇。自動車整備業界が直面している課題とその対応策について講演した。

    国交省の竹村圭史氏

     交通事故低減に寄与する自動運転技術とCO2排出量削減に寄与する電動化技術の進化・普及が進み、政府もそれらを支援する中、整備技術の高度化も急速に進行している。

     そうした状況を踏まえ、従来の分解整備に「電子制御装置整備」を加えた「自動車特定整備制度」が2020年4月より開始されているが、「電子制御装置整備」の認証取得数は2023年1月時点で4万2103件に留まっている。

     12ヵ月点検の際に「OBD(車載式故障診断装置)の診断の結果」を点検する「OBD点検」が2021年10月より開始され、経過措置を適用せず「電子制御装置整備」の認証を受けていない指定整備事業者は対象車両の保安基準適合証を交付できなくなったことに加え、2024年3月末には経過措置も終了するため、「それまでに、できるだけ早めに『電子制御装置整備』の認証を取得してほしい」と呼びかけた。

     そして2024年10月(輸入車は2025年10月)からは、車検時に検査用スキャンツールを用いて電子制御装置の検査を行う「OBD検査」が開始される。

     国交省では「OBD検査」導入決定以前より、約10年間にわたりスキャンツールの導入補助金を交付しているが、「皆様からのニーズが非常に強いので、来年度以降も継続することを考えている」と、今後の交付に意欲を示した。

     加えて、2022年5月には、自動車整備士資格制度を改定。一級の大型・小型、二級および三級のガソリン・ジーゼル・シャシを統合したうえで、一級・二級・電気・車体整備士に電子制御の内容を含めたほか、受験の要件を緩和することにより「人材不足の解消も期待できる」としている。

    自動車整備士資格制度改定の概要

     とはいえ、整備要員の人材不足はすでに深刻化している。自動車の保有台数は依然微増傾向にある一方、有効求人倍率は建築や介護分野よりも高い4.55倍。自動車整備学校への入学者は2020年より回復に転じているものの、それでも2021年の入学者数は8455人と、大幅に不足しているのが実情だ。

     それに対し政府は、2022年1月13日に岸田文雄内閣総理大臣と斉藤鉄夫国土交通大臣が自動車整備工場を視察するとともに、自動車整備士3人(若手、ベテラン、女性)と車座対話。また経営者向けセミナーで整備士処遇改善の重要性を説明し、各運輸支局長が高校を訪問し自動車整備業をPRしている。

     また、2022年度からは、脱炭素化対応整備人材の育成を開始。同年8月30日には、特定技能外国人制度を見直し、特定整備およびそれに付随する電子制御装置整備や車体修理を「特定技能外国人が従事する業務」に格上げした。

    自動車保有台数、自動車整備要員有効求人倍率、自動車整備学校入学者数の推移

     その一方で、整備事業者の生産性向上を支援する取り組みも進めている。点火装置の点火時期およびディストリビューターキャップの状態の点検を削除するなど車検時の点検項目を見直すほか、整備振興会などが行う勉強会などの開催を支援。また事業再構築補助金「グリーン成長枠」では、電動車整備対応のための設備投資や人材育成を行う整備事業者に対する支援を行っている。

    事業再構築補助金「グリーン成長枠」の想定事例

     そして、指定整備事業者が継続検査時に運輸支局などへ来訪するのを不要とすべく、2023年1月より車検証をICカード化。検査標章の仕様も一新したほか、これらの更新を行う記録等事務代行サービスを開始。

     また、電子車検証を読み取る車検証閲覧アプリの提供も開始したほか、自動車重量税、検査登録手数料、技術情報管理手数料(OBD手数料)の支払をクレジットカードで一括決済可能とすることで、運輸支局等での印紙購入・貼付を不要にした。

     そのほか、乗用車の点検整備実施率が約6割に留まっていることや、大型車の車輪脱落事故、不正車検による指定工場の取り消しが増加傾向にあることにも言及。適切な点検整備を呼びかけて、講演を終了した。


    (文・写真=遠藤正賢/図=国土交通省)

    車検証電子化に伴う検査標章仕様変更の概要

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