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【CEATEC 2022:東芝】「超電導モーター」と「Cu2Oタンデム型太陽電池」を参考出品
「超電導モーター」は大型モビリティの脱炭素化を推進。「Cu2Oタンデム型太陽電池」はBEVの利便性向上に寄与
2022/11/29
2022年10月18~21日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された、IT・エレクトロニクスの展示会「CEATEC 2022」(主催:電子情報技術産業協会(JEITA))。東芝は2022年6月に発表した「超電導モーター」の実物大模型を展示し、CEATEC AWARD 2022トータルソリューション部門のグランプリを受賞した。
「超電導モーター」の実物大模型
「超電導モーター」は、特定の金属などを一定以上の温度まで冷やすと電気抵抗がゼロになる超伝導現象を利用し、大幅な高出力化または小型軽量化を図ったモーター。今回の試作機およびその模型は最高出力2MWのもので、外径は約500mm、シャフトを除いた全長は700mm。同等の最高出力を持つ一般的なモーターに対し非常にコンパクトで、体積・重量とも1/10以下となっている。
従来の2MW級モーターと「超電導モーター」とのサイズ比較イメージ
ただし、超伝導の状態を維持するためには、素材によって異なるものの、医療用MRIなどに用いられている液体ヘリウムのほか液体窒素、液体水素などではマイナス200℃前後もの低温を保つ必要がある。
同社説明員によれば、この中で液体ヘリウムは天然ガスの分離・精製過程で製造されることが多く、脱炭素化に寄与しない」ものの、液体水素は「FCトラックなどに燃料として搭載されれば、その一部を『超電導モーター』の冷却に利用できる」と、相性の良さを示唆していた。
東芝ではこの「超電導モーター」を、CO2排出量削減ひいてはカーボンニュートラル達成に寄与するものと位置付け、航空機のジェットエンジンや、船舶または大型トラック・バスのディーゼルエンジンなど、大型モビリティ用パワートレインの代替ソリューションとして提案。さらなる小型軽量化を図りつつ、2030年までの実用化を目指している。
2MW級「超電導モーター」の実物の試作機
「Cu2Oタンデム型太陽電池」は、銅と酸素を原材料とし、透過型Cu2O(亜酸化銅)をトップセルとして用いた太陽電池。
銅と酸素は地球上に豊富に存在するため資源調達の地政学的リスクが低く、かつ透過型Cu2Oセルは既存のスパッタ装置で安価に大面積で生産できるうえ、製造後に大気環境で未封止の状態で1年間経過させても発電効率や透過率がほとんど変化しないため、ガリウムヒ素(GaAs)を原材料としたものより比較的安価に製造しやすい、という大きなメリットがある。
「透過型Cu2O太陽電池」(左)と「Cu2O/Siタンデム型太陽電池」(右)のモック
これを発電効率25%の高効率シリコン(Si)太陽電池をボトムセルとして組み合わせ積層することで、太陽電池全体の発電効率は28.5%に達すると試算。これをBEVへ搭載し、設置面積3.33平方メートル、1日あたり発電量3.0kWh、電費12.5km/kWhを確保した場合の1日あたり航続距離は約37kmに及び、「近距離ユーザーなら自宅への充電設備の保有が不要になる」と、東芝では想定している。
取材時点で実現しているCu2Oセルの発電エリアサイズは1セルあたり10×3mmだが、以後段階的に大型化。2025年度を目標とする量産時には、125×40mmにまでサイズを拡大することを目指している。
(文・写真=遠藤正賢、写真・図=東芝)
「Cu2O/Siタンデム型太陽電池」搭載BEVのイメージ図
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