JOURNAL 

    JATTO、第1回「クルマ社会の安全な未来を考える会」を開催

    電子制御装置整備の現状と課題の解決策を協賛会員企業30社55人と討議

    • #ニュース

    2022/02/23

     JATTO(日本技能研修機構)は2022年2月18日、JATTO協賛会員企業との合同会議「クルマ社会の安全な未来を考える会」の第1回目をSBIグループ本社会議室で開催。協賛会員企業からは30社55人がリアルまたはオンラインを通じて参加した。

     JATTOの石川明男代表理事は会議の冒頭、「2024年10月より始まるOBD検査に向け、昨年2021年11月から新型国産乗用車の衝突被害軽減ブレーキ装着が義務化されるなど、今後自動車技術は急速に進化しパラダイムシフトしていくと予想される。今回は各専門分野で業界をリードする皆様にお集まりいただき、激動する自動車業界、特に自動運転における電子制御装置整備の現状・課題から、今後の安全な未来に向けた整備体制の拡充を、皆様と共に目指したい」と、開催主旨を説明した。

    開催主旨を説明するJATTOの石川明男代表理事

     続いてJATTOの関根武史理事が、特定整備制度における電子制御装置整備の現状について解説。直近の統計データによる自動車整備事業者数は約9万1千件で微減、車体修理工場軒数は2万9千件で減少傾向にある中、特定整備認証の取得件数は2022年1月末の速報値で約3万1千件と、単純計算で全体の25%しか取得しておらず、「現在は2024年10月のOBD検査開始に向けた準備期間にある中で、25%という取得率は自動車アフターマーケットにとって大きな危機」と懸念を示した。また、国土交通省が収集した自動車整備事業者のスキャンツール使用実績約6万台分から、約4割の車両で約1万1500種類の故障コードが検出され、それらが放置されたまま公道を走行していることのリスクの大きさも指摘している。

    自動車整備事業者数、車体修理工場軒数の推移および特定整備認証取得件数速報値

     さらにJATTOの藤田隆之理事は、「故障コードがどこから出ているのか、どんな不具合でそのコードが出ているのかを見つけ出せる整備士は一工場あたり数名。それは、現場の整備士の技術力よりも自動車の性能が格段に早い時期に上がっていったことと、スキャンツールを運用しながら作業する機会が、欧米よりも認知度も含めて低かったことによる」と整備工場の実態を吐露。「2022年内に始まる自動車のサイバーセキュリティ対策にも整備工場の現場は対応していかなければならないが、目の前にある検出頻度の高い故障コードを見つけ出して、それを速やかに整備していくことがこれからは必須になる」と説いた。

    国土交通省が約6万台から収集した故障コードの検出実績

     これらの現状を踏まえ、自動車整備業界における共通課題とその具体的な解決策について、協賛会員企業を交えて討議。電子制御装置整備認証取得率向上について、会員工場の取得率がすでに約7割に達しているというDRPネットワークの岡本貞夫会長は、「取引先からデッドラインが示されたことが非常に大きい。期限までに取得しなければ入庫誘導されなくなるため、それを会員工場に周知した」と、その理由を分析している。

     一方で他の団体などからは、知識・情報が不足しており工場側の理解が進んでおらず、コロナ禍も相まって先送り・様子見する工場が多いことを指摘する声が相次いだ。ただしそうした状況下でも、スキャンツールの販売は順調に推移していることが、スキャンツールメーカーおよび取扱商社から異口同音に示されている。

     自動車整備士の処遇改善については、給与のみならず社会的地位も低いことが指摘されたほか、コロナ禍で外国人の来日が制限されていることもあり、欠員が出ても補充できないほど人材不足が深刻化している窮状が訴えられた。一方でマイスター制度などがあるドイツでは待遇・地位・人気とも高いことも紹介。一般カーオーナーにも分かりやすい言葉を用いた電子制御装置整備のPRによる認知度向上と適正な作業価格の設定、作業効率向上による収益アップ・待遇改善などの解決策が案として挙げられている。

     2回目以降の「クルマ社会の安全な未来を考える会」は年2回、上期と下期に1回ずつ開催される見込み。

    第1回「クルマ社会の安全な未来を考える会」に参加したJATTO理事および協賛会員企業

    (文=遠藤正賢/写真・図=JATTO)

    ログインして コメントを書き込む
    コメント入力者
    •  
    • ※こちらのお名前がウェブサイトに掲載されます。

    コメント

    投稿する