JOURNAL 

    リサイズ 社長 中野 剛氏

    購買行動から考える顧客本位の店舗作りを支援

    • #インタビュー

    2022/08/10

    工場がトータルカーサービスを提供するに当たり、Webサイト製作やコーチング、販促物のデザインなどを通じて支援を続けるリサイズ(埼玉県さいたま市)。長年の業界経験に裏付けされた豊富な知識と手厚いサポートは、多くの工場から支持されている。本誌連載「失敗談から学ぶより良い接客講座」の監修も手掛ける中野剛社長に、顧客のニーズをつかむコツやリピート率向上に関するポイントなどを聞いた。

    ──昨今のカーアフターマーケットにはどのような傾向が見られるか

     ディーラーが鈑金塗装内製化、メンテナンスパックや残価設定型ローンなどによる顧客囲い込みを進めたことで、下請けから脱却し、カーオーナーと直接向き合う工場が増えた。軽補修という新たなマーケットができたのも、その後押しになったと見ている。
     昨今はカーリースの利用者が増え、車検整備で売り上げを上げていた専業工場は苦境に立たされている。中には7年、11年と長期にわたる契約も見られ、顧客が他社とそのような契約を結んでしまえば、自社に戻ってくる可能性は限りなく低くなる。地域密着経営を志向する工場であれば、車両販売の比率を少しずつ高めていかなければ今後の経営はさらに厳しくなると見ている。

    ──工場経営において改善すべきポイントはどこにあると見ているか

     中長期的には紹介件数やリピート率のアップが重要だが、むやみに販売品目を増やすよりも先に自社の現状分析から始める。当社では工場に導入されている顧客管理システムに蓄積されたデータを基に、より緻密な分析を行っている。

     当社のクライアントである杉戸自動車(埼玉県北葛飾郡)の事例を基にすると、2016年、2017年は初度登録以来最初の車検を迎える車両の入庫が最も多くなっているものの、それ以降は同様の傾向は見られない。ボリュームゾーンとなっている2013年式、あるいは2014年式の車両に関しても、初度登録から10年が経過すると買い換えを検討する顧客が増えるため、次回入庫するかは不透明である。

    年式別の年間車検台数。赤色部分は初回車検を迎える年式、青字は最も入庫が多い年式(提供:杉戸自動車)

     また、同社の利用年数を見ると、国産車・輸入車ともに1年利用が最も多い。つまり複数年にわたり利用する割合が低く、顧客の定着につながっていないことを示している。

    車両別の利用年数実績。国産車は4割、輸入車は6割が1年利用に終わっている(提供:杉戸自動車)

     何らかの打ち手によってこのうちの数%でも複数年利用につながれば、収益性は大きく改善する。そこで車検のみ利用している顧客にその他のサービスを訴求して入庫回数を増やし、徐々に関係を深めた後にカーリースを訴求する、といった対策が考えられる。

     しかし、当社で行っているモニター調査の結果を見ると、工場の対応に不満を覚えたカーオーナーは少なからず存在する。したがって販売品目の拡充はさることながら、接客応対のスキルを磨き、顧客との関係構築に努めることも並行して進めなければならない。

    ──顧客との関係構築においてはどんなことを心がけるべきか

     まずは顧客の声に耳を傾け、自社が選ばれなかった理由の考察から始めてほしい。顧客に対してアンケートを行うのも良いが、Googleマップで見られる店舗の口コミも参考になる。
     当社の調査によると、不満を漏らす口コミの中で最も多かったのが接客応対に関するものだった。「話し方が偉そう」、「態度が威圧的」、「対応がいい加減」といった声もあり、接客業として致命的な評価を受けていると言える。

    埼玉県内の工場に寄せられた不満に関する口コミの分析結果(リサイズ独自調査)対象工場数:1,272軒 対象口コミ数:192件

     しかし見方を変えると、挨拶や話し方、礼儀作法などに気を配れば、他のサービス業から見れば当たり前の対応であっても顧客からすると「感じの良い車屋さんだ」と良い印象を与えやすいとも言える。それを逆手にとって「街の車屋さんなのに?!」という良い意味でのサプライズを演出できれば、大きな差別化につながるはずである。

     また、本誌連載でも解説したが、自社のWebサイトは見やすく分かりやすいものに整えておくことを改めて勧めたい。新規顧客が工場と最初に接点を持つのはWebサイトであることが大半であり、来店につながるかどうかを決定付ける最初のターニングポイントにもなる。また、Webサイトがしっかりできていれば、その画面をプリントしてチラシのように配布することもできる。コストを抑えつつ宣伝効果も狙え、非常に合理的である。

    ──ボデーショップにメッセージを

     コロナ禍の影響で多くの産業がダメージを受けたが、カーアフターマーケットは生活に不可欠な産業として動き続けている。その歩みが止まらないよう、何とか工場運営の一助になりたいと強く願っている。
     そこで開設したのが、工場運営に必要な知識を体系的に学ぶ「ネットdeプライマリースクール」という特設サイトである。顧客の購買行動分析、接客応対における注意点、自社の分析方法、単価アップに必要なメニューなど、他業界では一般的な手法をボデーショップが採り入れやすいよう分解し、説明している。
     カーアフターマーケットの中心にある工場が繁盛しなければ、業界の明日はない。工場が顧客と向き合い、顧客本位の店舗を作っていけるよう最大限サポートしていく所存だ。





    取材協力先:株式会社リサイズ
    Webサイト:https://resize.co.jp/
    ネットdeプライマリースクール:https://primary-school.jp/
    ※パソコンでの閲覧のみ対応

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