JOURNAL 

    メンテモ 代表取締役  若月 佑樹氏

    カーオーナーと工場の隔たりをWebの力で埋めていく

    • #インタビュー

    2022/05/16

    自動車整備、鈑金塗装工場をWebで検索・予約できるシステムを運営するメンテモ(山梨県甲府市)。
    2021年8月に山梨県内でサービス開始後、関東地方にもエリアを拡大。利用者数・登録事業者数のいずれも順調に増加している。
    その陣頭指揮を執るのは、若くして起業後、Webサービスの第一線で活躍する若月佑樹社長である。鈑金塗装業を営む祖父の姿から着想を得たという同サービスの特徴や、今後の戦略などについて聞いた。

    ──メンテモの開発に至った経緯とは

     祖父が鈑金塗装業を営んでおり、主に下請け仕事で成り立っていた。一方で知り合いから「車を修理したいが、おたくだといくらで直るのか?」と質問を受ける機会が多く、工場とカーオーナーの間には隔たりがあるのを何となく感じ取っていた。

     自身の車を購入した時、友人たちに車検整備や修理をどこに依頼しているのかたずねたところ、車を買った店舗や、自宅近くのディーラーや工場に持っていくという回答が大半だった。また、町の工場に対して敷居の高さを感じていたり、そもそも信頼できる工場をどうやって見つければ良いのか分からない、と考えていることも分かった。
     命を乗せて走る車なのに、多くのカーオーナーがその預け先を選ぶ判断基準があいまいなのには驚いた。数ある工場の中から信頼できるところを見つけられる手段があればカーオーナーの選択肢が広がり、車に愛着を持つ人々も増えるはずだと考えた。そこで地域の工場が検索できるサービスを作ろうと決心した。

    ──メンテモの特徴を教えてほしい

     カーオーナーと工場の双方にとって価値あるサービスを提供すべく、(1)事業者に正当な利益を還元する、(2)こだわりと自信のある工場が評価される仕組みを作る、(3)事業者とユーザーの間に信頼関係を築く、の3点が守られるような仕組みを構築している。

     具体的には、システムの構築や紹介ページの作成などは自社で内製してコストを削減し、その分を事業者に還元する。一方、事業者に対しても修理作業はすべて外注せず、ガラス交換やセンサー校正など一部の作業にとどめるよう定めている。

     また、各工場に寄せられた問い合わせは休業日を除き24時間以内に応答するよう求めており、平均応答時間や利用者からの評価などはすべて可視化している。

     工場の質を担保するため、登録に際しては分解整備認証及び電子制御装置整備認証の両方を取得するか、日本自動車車体整備協同組合連合会の独自制度である「先進安全自動車対応 優良車体整備事業者」の認定を受けるよう求めている。登録時には担当者が工場を訪問し、面談した上で手続きを進める。その際には工場の雰囲気や作業風景などを確認しつつ、経営者の人柄や工場の方針が我々の考えとマッチするかどうかも見ている。なお、成約ごとに手数料が発生する仕組みではあるが、登録時の初期費用は当面無料とする方針である。

    メンテモのトップページ

    ──Web集客に不慣れな工場に対するサポート体制は
     
     各工場の紹介ページに掲載する写真の撮影や紹介文の執筆及び校正は我々がサポートしている。そのため登録に必要な書類の準備と、訪問時のヒアリングへの協力ならびに工場内撮影の許可があれば、Web集客に不慣れな事業者でも気軽に登録いただける。

     また、メンテモの構築に当たっては各工場の作業風景や技術者たちの動き、PC及びスマートフォンの使用頻度などをよく観察し、デスクに向かって作業する時間が取りづらい人々でも使いやすい設計を意識した。現場作業が多い経営者や技術者でもスムーズに対応できるよう、カーオーナーから問い合わせが入った時にはメールとLINEで通知する機能も付与している。

    Web予約やLINEでの工場検索機能を付与。見積り希望の場合は工場に直接問い合わせる仕組み

    ──メンテモにアクセスするカーオーナーはどのようなキーワードでWeb検索をしているのか

     最も多いのは「地域名+車修理」、「地域名+凹み」のようにカーオーナーが工場を探す上でよく使われるキーワードである。また、「地域名+アライメント調整」や「地域名+ATF交換」のようにややニッチなものや、「ランドクルーザー+全塗装」、「セドリック+車検」のようにコアな車好きを連想させる内容もある。他にも輸入車に関する検索ワードも流入している。

     この結果を踏まえ、アクセス数を増やすための対策(SEO)には特に注力している。たとえばカーライフにまつわる情報発信を強化し、幅広い層の関心を集められるよう努めている。また、現在は各社の得意な車種や作業などを設定し、それに関連するキーワードを検索すると上位に表示されるような仕組みを構築中である。

    リピーターからの口コミは目立つように表示される

    ──事業拡大に向けた今後の戦略は

     今は関東地方に注力し、首都圏と郊外、地方都市でそれぞれどのようなニーズがあるかを調査している。その中で得られた仮説の検証も並行して進め、メンテモの収益化に必要な規模感やマーケティング戦略を見極めようとしている段階だ。
     
     我々にとって重要なのは登録事業者の数そのものより、質の高い事業者からの登録を集め、カーオーナーとマッチングさせていくことである。それによってメンテモの価値が高まり、カーオーナーと工場の間にある隔たりも少しずつ埋めていけるだろう。
     
     一方、カーアフターマーケット全体に目を向けると、人材不足や材料費の高騰、流通網の乱れによる部品の調達難など、あらゆる問題が山積している。我々が持つWebに関する知見を活かし、これらの問題にアプローチできるようなサービスを開発・運営していくことも視野に入れている。

    ──読者に向けて一言

     EV、コネクティッドカーといった車が普及する一方で、保有年数の長期化によって低年式車の比率は高まり、整備のニーズは多様化している。確かな腕を持った工場がそのニーズに対応できるよう、メンテモを通じ多くの出会いを創出していきたい。それが我々のミッションである「クルマの未来を、みんなで創る」にもつながる。

     また、カーアフターマーケットは裾野が広く、各分野に携わる人々がそれぞれ課題を持ち、危機感を抱いているはずである。その課題に対してWebのプロとして向き合い、あるべき姿をともに作り上げていきたいと考えている。私自身も1人の車好きとして、車の文化を次代に伝えるべくこの先何十年も業界に関わり続け、課題解決に向けた糸口を探していく。


    取材協力先:株式会社メンテモ
    Webサイト:https://mentemo.com/

    若月社長(写真右)の愛車はトヨタ・スプリンタートレノ(AE86)

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