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JARI、「ADAS試験場」を城里テストセンターに新設
2024年度JNCAPより追加予定の「交差点AEBS試験」などに対応
2022/07/10
JARI(日本自動車研究所)は2022年7月より、城里テストセンター(STC。茨城県東茨城郡城里町)内に新設した「ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems。先進運転支援システム)試験場」の運用を開始。4日に同試験場の完成記念式典を開催した。
「ADAS試験場」は長さ×幅=500×15mと300×20mの直線路を交差させた形状となっており、最高80-60km/hの交差点試験に対応。2024年度JNCAPより追加が予定されている「交差点AEBS試験」のほか、試験内容の厳しさではJNCAPより先行する、ユーロNCAPの様々な交差点事故を想定した評価試験にも対応するADAS開発への活用が見込まれている。
JARI城里テストセンター内に新設された「ADAS試験場」の航空写真
JARIの坂本秀行代表理事・理事長は開催記念式典の場で、「皆様のおかげで、かねてからの悲願だったADAS試験場を完成させることができた」と挨拶。
「2005年に従来の谷田部から移転・開設されたSTCには8種類のコースがあるが、近年は用途が非常に変化しており、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKKAS(レーンキープアシスト)、AEBS(衝突被害軽減ブレーキ)などの評価をする必要性が高まっている。他にもヘッドランプの夜間すれ違い時における配光制御や、燃費に関わる転がり抵抗の試験なども行っており、現時点ではご要望をいただいてもすぐにコースをお貸し出しできずご不便をおかけし、非常に悔しい思いをしている。また、第2総合試験路では、NASVA(自動車事故対策機構)からご依頼の予防安全アセスメントとして日中だけではなく夜間もAEBSの評価が行われている」と近況を説明した。
ADAS試験場については、「従来の悪路試験場を改修し、3年間で約10億円という大工事で作り上げた。従来の第2総合試験路では車の出会い頭など、道路に停止したりステアリング制御を入れたりして危険を回避するといった、複雑なシナリオの評価ができない。こうした新しい時代の評価を行うために、コース幅を大きく取り、交差点でのAEBSや危険回避の評価ができるよう、300mと500mの交差路を設けた」と、新設の経緯を明らかにしている。
JARIの坂本秀行代表理事・理事長
続いて、経済産業省製造産業局自動車課ITS・自動走行推進室の福永茂和室長と、国土交通省自動車局の野津真生次長が、来賓として挨拶。
福永室長は、「現在世界のOEMやサプライヤーはADASの開発に力を入れており、今後は電動化に加えて自動化やデジタル化が競争軸になっていくと思われる。このADAS試験場が、今後のADASの普及・高度化に向けて大きな役割を果たしていくことを期待している」と展望を示している。
野津次長は、「ADAS試験場は、これまでの試験路では難しかった交差点での評価試験が実施可能になると伺っている。これは、自動運転技術を含めた安全技術の進展において大変重要な試験施設になると、大きな期待を抱いている」と述べた。
国土交通省自動車局の野津真生次長
また、JARIの鎌田実代表理事・研究所長は、日本国内における交通事故削減に向けた取り組みや、JNCAPおよびユーロNCAPのロードマップ、ADAS試験場新設工事の詳細を説明。その後ADAS試験場へ移動し、JARI役員と来賓によるテープカットを実施した。
ADAS試験場内で行われた完成記念式典テープカットの様子
その後はコース上で、対車両および対歩行者の交差点AEBS試験デモンストレーションを実施。交差点に進入し曲がろうとしたトヨタ・ノアが対向車や歩行者を模したダミーに衝突する前にAEBSを作動させ衝突を回避する様子が見られた。
(文=遠藤正賢 写真=JARI、遠藤正賢)
交差点AEBS[対歩行者]試験デモの様子
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