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損保料率機構、「自動車保険の概況」2025年度版を発行

物価の高騰や労務費の価格転嫁などによって、支払い1件当たりの修理費が上昇傾向を示す

  • #トピックス

2026/05/20

 損害保険料率算出機構(損保料率機構)はこのほど、「自動車保険の概況」2025年度版(2024年度データ)を発行した。同書は統計数値などを用いて、自賠責保険及び自動車保険の仕組みや一般的な補償内容、収支動向、自賠責保険の損害調査などを保険契約者や交通事故被害者などに知らせることを目的に毎年作成されている。


2024年度は収入保険料・支払い保険金ともに前年度を上回る

 同書によると、2024年度の任意自動車保険の収入保険料(グラフ1)は4兆126億円で、前年度に比べ1,396億円(3.6%)増加、支払い保険金(グラフ2)は2兆1,781億円で同比1,171億円(5.7%)増加した。


 補償種目別(表1)の支払い件数では、対人賠償、人傷実損払、車両保険が増加、対物賠償、人傷定額払が減少。一方支払い金額では、対人賠償、対物賠償、車両保険が増加、人傷実損払と人傷定額払が減少した。また、車両保険の事故形態別統計(表2)を見ると、新型コロナウイルスの発生による緊急事態宣言などを受けて交通量が減少した2020年度を経て、翌2021年度から増加傾向にあった「他車・物・人との衝突、接触、転覆、墜落」の支払い件数が減少に転じていた。一方、支払い金額は増加傾向を維持しており、1件当たりの支払保険金が上昇していることが分かる。


表1 2024年度の補償種目別契約・支払い状況

補償種目

 内容

対人賠償

新契約台数(台)

67,971,212

(対前年比)

72,054

支払い件数(件)

320,919

(対前年比)

2,101

支払い保険金(千円)

305,044,994

(対前年比)

3,771,439

対物賠償

新契約台数(台)

67,894,917

(対前年比)

67,302

支払い件数(件)

1,897,221

(対前年比)

-17,044

支払い保険金(千円)

769,154,001

(対前年比)

49,380,614

人傷実損払

新契約台数(台)

62,161,120

(対前年比)

239,244

支払い件数(件)

226,633

(対前年比)

2,769

支払い保険金(千円)

118,211,497

(対前年比)

-778,293

人傷定額払

新契約台数(台)

27,962,102

(対前年比)

-978,021

支払い件数(件)

285,384

(対前年比)

-6,018

支払い保険金(千円)

38,232,536

(対前年比)

-944,636

車両

新契約台数(台)

41,106,852

(対前年比)

282,982

支払い件数(件)

2,315,696

(対前年比)

18,536

支払い保険金(千円)

947,454,212

(対前年比)

65,711,084


表2 2024年度の任意自動車保険 車両保険 事故形態別統計

事故形態

 内容

他車・物・人との衝突、接触、転覆、墜落

支払い件数(件)

1,653,269

(対前年度比)

-24,228

支払い保険金(千円)

689,503,244

(対前年度比)

35,481,192

台風・竜巻・洪水・高潮

支払い件数(件)

6,874

(対前年度比)

-9,779

支払い保険金(千円)

5,802,201

(対前年度比)

-11,715,659

盗難

支払い件数(件)

4,041

(対前年度比)

35

支払い保険金(千円)

12,081,092

(対前年度比)

2,229,636

その他

支払い件数(件)

597,481

(対前年度比)

50,451

支払い保険金(千円)

226,853,623

(対前年度比)

38,036,045

※販売用・修理工場等受託車、特殊な用途・使用方法の保険契約及び特殊な契約条件による保険契約を除く

※「その他」には、火災・爆発、飛来物・落下物との衝突等が含まれる


物価高騰や労務費の価格転嫁によって、修理費は上昇傾向

 支払い1件当たりの修理費の推移では、車両保険(グラフ3)が前年度から29,728円増加し392,877円、対物賠償(グラフ4)が同比29,517円増の416,624円で、ともに増加した。


 修理費を費目別で見ると、車両保険では部品費が前年度比11,431円増の195,634円(構成比49.8%)、工賃が同比8,375円増の91,081円(同23.2%)、塗装費が同比7,266円増の70,159円(同17.9%)、その他が同比2,656円増の36,003円(同9.2%)。なお、消費税や諸費用が含まれる「その他」を除いた車体修理費(部品費、工賃、塗装費の合計)は356,874円で、各費目が車体修理費に占める比率は部品費54.8%、工賃25.5%、塗装費19.7%だった。


 いずれの費目も前年より増加しているが、特に工賃が前年比10.1%、塗装費が11.6%と上昇率が高い傾向が見られた。損害保険会社各社は消費者物価指数を参考に、指数対応単価を設定してきた。総務省の発表によると、2022年度より消費者物価指数が上昇傾向を示しており、それを受けて損害保険会社各社においては2023年度、2024年度と指数対応単価を引き上げる動きが見られた。その結果、支払い1件当たりの工賃と塗装費がそれぞれ増加したと考えられる。


 一方、対物賠償では部品費が同比10,747円増の173,900円(構成比41.7%)、工賃が同比5,258円増の73,047円(同17.5%)、塗装費が同比4,144円増の59,788円(同14.4%)、間接損害が同比7,174円増の78,777円(同18.9%)、その他が同比2,192円増の31,110円(同7.5%)。「その他」と代車料や休車損害などを含む「間接損害」を除いた車体修理費は306,735円で、各費目が車体修理費に占める比率は部品費56.7%、工賃23.8%、塗装費19.5%だった。


 対物賠償においても、全費目が上昇していたが、最も上昇率が大きかったのは間接損害だった。国土交通省が示した「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」では代車費用ついて、依頼者に過失割合があった場合でも、「事故との相当因果関係(車格・日額・期間)が認められる代車費用については、過失割合に応じた損害賠償金支払いの対象となるとされているものが多い」と言及されている。同指針は2025年3月に公表されたものだが、国交省はそれに先立ち関係省庁と連携して損害保険会社との対話を設けており、その対話を通じて代車費用対応の改善が進められた可能性があるだろう。


物価高や人材不足などの課題が山積する中、車体整備事業者においては各種取り組みの継続が求められる

 2025年度は、日本自動車車体整備協同組合連合会と損害保険会社との間で、時間当たり工賃単価に関する団体協約が締結されるなど、業界全体で労務費の価格転嫁へ向けた動き見られた。また、国交省が実施した事故車修理標準作業時間の実態調査の結果も近日中に公表される見込みであり、車体整備事業者においては修理工賃全体のさらなる上昇が期待される(※修理工賃は一般的に、工賃単価×標準作業時間の合計で算出される)。

 一方で、物価や輸送費、エネルギーコストの高騰を受けて、車体整備に伴う経費は上昇し続けている。また、物価上昇が続く中で人材を確保・育成していくためには、労務費の価格転嫁に向けた交渉の継続が求められる。

 2026年度中には、車体整備事業者の経営実態などに関する基礎統計調査の実施が予定されている。車体整備事業者においては、事業経費や業界動向などの情報を整理した上で適切な価格転嫁を推進し、物価上昇に負けない賃上げの実現と継続が求められている。さらに、人材不足やコスト高に耐えうる収益体制を築き、事業を継続させていくための生産性向上も重要な課題となっている。