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繁忙期にこそ試したい 洗車が売れるセールストーク
【BSRweb独自連載】洗車で始める顧客獲得 第11話
2022/12/01
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前回は「ウォッシュマン流、洗車の教科書」と題して、洗車の技術についてお話させていただきました。鈑金塗装の仕事において洗車は必ず付帯する作業です。仮に洗車に割く時間が1台当たり30分だと仮定すると、年間200台洗車したら年間6,000分=100時間が費やされます。1日8時間労働とすると、12.5日です。より疲れにくく、きれいにできる洗車の方法を身に付けることで、次の工程へスムーズに移れるようになり、コスト削減や稼働時間の増加につながります。
洗車品質を高めることができたら、次はぜひ洗車サービスの販売にチャレンジしてみていただきたいです。 第1話でもお話しした通り、従来「洗車を買う場所」であったガソリンスタンドは年々減少しています。残った店舗もより一層セルフ化が進み、洗車機の導入が増える見込みです。つまり、人の手で洗う洗車の売り場が減っていくのです。
鈑金塗装を主軸とする工場の強みは、なんといってもボデーのプロフェッショナルだということです。品質の高さを前面に押し出して提供すれば、こだわりを持つカーオーナーに出会えるチャンスが増えるかもしれません。
洗車を商品化する上で重要なのは、次の5つです。
・洗車品質を平準化する
・“売れる”時期やタイミングを逃さない
・まずは“まねる”ことから始める
・自分たちの強みを知る
・正しく、分かりやすく、知ってもらう
そこで今回から2回に分け、この5つに関して解説します。今回は洗車品質の平準化と、洗車が売れる時期やタイミングについてお話しします。
洗車品質を平準化する
趣味でやる洗車とは違い、洗車ビジネスにはコスト、費用、品質のバランスが取れているかどうかが問われます。したがっていつ誰が作業しても一定の品質になるように、作業工程の平準化は欠かせません。どこまで洗うのか?どれぐらいの時間で仕上げるのか?といったルールを決め、作業時間のばらつきや品質の偏りなどを減らしていきます。
手洗い洗車は門型洗車機とは異なり、グリルやホイールの細かな個所もていねいに洗えるのが強みです。そのため、こだわって洗おうと思えばどこまでも追求できます。しかし重要なのは自分が満足できる仕上がりを求めることではなく、洗車を収益化することです。お客様が満足する洗車を常に提供し、リピート利用につなげていきましょう。
手洗い洗車は複雑なデザインのホイールなども細部まで洗えるのが強み。だからこそ仕上がり品質の基準は明確にしておく必要がある
繁忙期に売り上げを最大化するテクニック
第7話でもお伝えしましたが、洗車における購買行動を理解することは洗車ビジネスにおいて欠かせません。そこで洗車ニーズが高まる時期に車はどんな汚れが付着するのか深堀りすると、お客様への勧め方も考えやすくなります。
洗車が最も売れやすくなるのは、年末年始です。家の大掃除をするのと同じように車もきれいに洗い、気持ちよく新年を迎えたいという気持ちの表れでしょう。しかし特定の時期に来店が集中すると、一度に対応しきれなくなってしまいます。混雑による機会損失を限りなく抑えるためには、来店を分散させる必要があります。そこでお勧めしたいのは、タイヤ交換とのセット割です。スタッドレスタイヤに履き替えるお客様は11月から12月はじめにかけて来店されますので、「タイヤ交換でお越しの方には特別価格で洗車します」などと勧めてみましょう。他にも事前予約で割引する「先割」の推進など、来店人数をある程度予測できるようにしておくのも良いでしょう。
年末年始のほかGW、お盆などの長期休暇前には「洗車」の検索数が増加する(出典:Googleトレンド)
季節に合ったセールストークで成約率アップ
季節の変わり目も洗車をお勧めするのに最適です。そこで、四季によって変化する車の汚れ方と、その時に合ったセールストークを考えてみたいと思います。
車に付きやすい汚れは季節によって異なる。季節ごとの汚れを抑えて営業トークに活かしたい
春は黄砂や砂埃によって車が汚れやすくなります。これらの汚れは誤った洗い方をするとボデーが傷付いてしまうので、注意が必要です。そこで「ボデーのプロがていねいに洗車します!」というアピールが有効です。加えて花粉や樹液といった植物の汚れも付着しやすくなります。これらは粘着性があり、そのまま放置しておくと砂埃や泥など他の汚れも巻き込みながら固着し、非常に取りにくくなります。特に花粉は年々飛散量が増加しているので「車の黄ばみが気になったらすぐ洗車に来てください」とお伝えするのが良いと思います。
初夏は雨シミが付着しやすい時期です。さらに紫外線量が増えるのでボデーの退色、塗膜の劣化なども心配されます。そこで洗車と併せて紫外線吸収効果のあるボデーコーティングを訴求してみましょう。「定期的にコーティングすれば、愛車が長持ちします」とお勧めするのがポイントです。また、「雨の日は交通事故が増えるので、前方の視界が確保できるようにしておきませんか?」と言ってフロントガラスの撥水加工も勧めてみましょう。
真夏になると日差しが強くなり、ボデーの傷や汚れが目立つようになります。また、高温時にセルフで洗車するとボデーに付着した水分が蒸発してシミになりやすいです。そこで「真夏こそプロに洗車をおまかせください!」と宣伝し、来店を促してみましょう。
秋から冬にかけては、融雪剤がボデーにこびりつくと腐食の原因になります。また、秋は祝日が多いので車で遠出する機会が増えます。山や公園などに出かける方も多くなるので、ドライブ前後に来店をお勧めしましょう。ドライブ前にはタイヤの空気圧チェック、ドライブ後には内装の清掃をセットで行うと、お客様にも喜ばれます。
洗車ビジネスを軌道に乗せるには、洗車が売れる時期やタイミングを理解し、お客様が「なるほど」と思うような情報を提供できるかどうかが鍵を握っています。それには自分たちの強みを理解し、それを正しく分かりやすくお伝えしていくのが重要です。
しかし、すぐに実践するのは難しいのも事実です。そこで、すでに洗車をメニュー化して成功している車屋さんを観察し、積極的にまねをすることから始めるのをお勧めします。
今回お話しできなかった他者をまねることと自分たちの強みを理解することの重要性や、情報を正しく分かりやすくお客様に伝える方法については、次回紹介します。
著者プロフィール
平井新一(ひらいしんいち)
株式会社本荘興産 代表取締役社長
岡山県倉敷市出身 1974年生まれ
大阪の音楽系専門学校を卒業後、北海道の美装専門店での現場修行を経て1999年に同社へ入社。営業担当として全国を飛び回る傍ら、国産カーメーカーの純正ボデーコーティングの企画・開発にも関わる。2014年より現職。
近年は洗車ビジネスに関するセミナー講師やクライアント企業のブランディング・PRのサポートなどにも取り組んでいる。
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