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DXの入り口としての洗車
【BSRweb独自連載】洗車で始める顧客獲得 第7話
2022/10/01
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社会のデジタル化が加速する今、車のアフターサービスにもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が訪れています。DXとはデジタルによる業態変容を指します。街の車屋さんに関しては、成約率や顧客満足度アップに向けて宣伝、集客、予約受付といった一連の流れをデジタル化していくことがDX推進と言えるでしょう。
車屋さんにおけるDX推進と、洗車にはどのような関係性があるのでしょうか? その答えを見つけるために、まずはお客様が洗車をしたいと思うタイミングについて触れつつ、そのニーズをキャッチするためにどんな打ち手があるのか説明していきます。
洗車における購買行動を理解する
コロナ禍の影響で長らく敷かれていた行動規制が少しずつ緩和され、車を使って出かける人が増えています。元々、秋から冬にかけては車が汚れやすく、洗車を訴求するにはうってつけの時期です。ドライブの前にはタイヤの空気圧チェックやフロントガラスの清掃がてら来店いただくよう案内し、ドライブの後には土や泥、落ち葉などが付着した車をきれいにするよう勧めるのが効果的です。
特に、高速道路上ではタイヤのパンクやバーストによって救援要請につながるケースが多く見られます。「安全で楽しいドライブのために、お出かけ前には車のチェックをしましょう」と呼び掛ければ、来店につながりやすくなるでしょう。
昨年行われたアンケート調査では、車で遠出した時や、雪道を走った時には洗車したいというニーズが高まることが分かっています。一方で普段の洗車は土日祝日にするという回答が多く、特に午前中に集中する傾向にあるようです。
購買行動を理解していないと季節特有の需要に対応しきれず、機会を逃してしまいます。洗車を有料化する時には「いつ、どんな時に洗車をしたくなるのか?」をお客様目線で考えて、そこから価格やメニュー表を考えていくべきです。
たとえば春、秋の行楽シーズンは毎週末ドライブに出かける人が増えると推測できます。そこで日ごとの入庫予定と照らし合わせつつ、月のうちどこか1回でも「洗車デー」と決めてお客様に宣伝することから始めてみてはいかがでしょうか?逆に洗車の来店を分散させたい時には「平日限定割引」などを設定し、案内するのも有効です。
顧客の心理を理解すると、自社のサービスを無理なく訴求できます。購買につながる消費者心理は、ぜひ押さえておきたいものです。
土日祝日の午前中、長距離ドライブ、雪道の走行後には洗車のニーズが高まる(出典:レソリューション「『洗車』に関する調査」)
車がしゃべる時代がやってきた
インターネットに常時接続し、車両状態や周囲の道路環境などを収集する「コネクティッドカー」は日々進化を続けています。具体的には走行距離に応じてオイル交換を促す通知が届いたり、事故による衝撃を検知した時は保険会社に自動で通知し、保険会社とすぐに連絡が取れるような仕組みがあります。
ほかにもナビの履歴、走行距離といった使用履歴を基に、趣味や嗜好を分析して発信する「レコメンド機能」もあります。最適な情報をお客様自身が検索して得ていた情報がタイミングよく自動で配信されるようになれば、購買率は向上するでしょう。
コネクティッドカーの登場によって、車が様々な情報を自動で収集し、ドライバーに伝えてくれるようになったのは非常に便利です。1980年代に人気を博したアメリカのドラマ「ナイトライダー」に出てくるナイト2000のように、そのうち車が「そろそろ洗車はいかがですか、最も近い車屋さんは200m先にあります」と喋り出す時が来るかもしれません。
トヨタ車のコネクティッドサービス「T-connect」でできること
身近なことからDXは始められる
さすがにコネクティッドカーの領域に着手するのは現実的ではありませんが、洗車の勧め方は他にもたくさんあります。たとえばYouTubeやInstagramといったSNSは、手軽に始めやすいので宣伝ツールとして採り入れている車屋さんが多いと思います。LINEを使ってキャンペーン情報を流し、同じ画面で予約もできるようにしておくのも、立派なDXです。
最近は60秒以内に終わるショート動画にトレンドが移り変わろうとしています。ショート動画のさきがけはTikTokですが、今はYouTubeやInstagram、LINEでも公開・閲覧できます。複雑な情報を伝えるには不向きですが、秒数が短い分多くの人に見てもらえる可能性があります。さらに撮影や編集の手間がかからないので、気軽に始められて投稿本数も増やしやすいです。
60秒以内のショート動画は投稿数・視聴数ともに増加傾向にある(出典:エビリー「YouTubeショート動画調査最新動向」)※同社の動画SNS分析データツール「kamui tracker」での分析結果
洗車は比較的写真や動画映えするので、洗車前後の車両を映すだけでも充分アピール効果が期待できます。デザイン性が高い洗車グッズや、スタッフが笑顔で洗車する様子は見ている人をワクワクさせ、「どんな店舗なのか気になる」と興味をそそるはずです。
単にSNSを始めればDXになるわけではありませんが、SNSを通じて集客を図り、来店や購買につなげるという流れを生み出すのはDXの目的に沿っています。昨今はショート動画が流行しているということも踏まえると、車屋さんがDXを推進するのに洗車は最適だと考えます。
DXはデジタルを通じた業態変容であると冒頭にお話ししましたが、「より多くのお客様に来店いただくにはどうすれば良いか?」を模索する中で、本業にとらわれず柔軟な発想を持つことこそ、業態変容だと言えるでしょう。
次回は時代に先駆けてDXに取り組み、鈑金塗装業以外にも活躍の場を広げるY´sボディー(長野県千曲市)の小林洋平代表との対談を通じ、DXと洗車について引き続きお話ししていきます。
著者プロフィール
平井新一(ひらいしんいち)
株式会社本荘興産 代表取締役社長
岡山県倉敷市出身 1974年生まれ
大阪の音楽系専門学校を卒業後、北海道の美装専門店での現場修行を経て1999年に同社へ入社。営業担当として全国を飛び回る傍ら、国産カーメーカーの純正ボデーコーティングの企画・開発にも関わる。2014年より現職。
近年は洗車ビジネスに関するセミナー講師やクライアント企業のブランディング・PRのサポートなどにも取り組んでいる。
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