JOURNAL 

    シネマエンドレス 「LAMB/ラム」

    A24が配給する、禁断のネイチャー・スリラー

    • #一般向け

    2022/09/20

     アイスランドの人里離れた山間部。この地で静かに暮らすのは、羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”が産まれてくる。

     言葉を失い目配せし合う二人だが、衝撃も束の間、二人は自身の子どものようにその存在を受け入れると、過去に亡くした娘の名前から"アダ"と名付け、育てることに決めたのだ。アダとの穏やかで幸福な生活はいつまでも続くかに思われたが、周囲で不審な事件が起きるようになり、不穏な空気が立ち込め始める。その存在はなぜ産まれてしまったのか? 前代未聞の衝撃展開が、観客の想像力を刺激する。


     本コーナーおなじみの話題作を世に送り出す制作・配給会社「A24」が配給権を獲得し、第74回カンヌ国際映画祭で上映するやいなや観客を騒然させ、ある視点部門で《Prize of Originality》を受賞した衝撃の話題作がついに日本上陸。

    ©︎ 2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-

    筆者の推しどころ

     ビョークや筆者が好きなアーティストを挙げたら5本の指に入るシガーロスなど神秘的なアーティストを生み出したことでも有名なアイスランドを舞台にした不思議なスリラー。

     台詞やBGMが極端に少なく、“何か”ととも生きる夫婦の幸せ、愛、喪失、そしてやがてくる大きな出来事をも神秘的で美しい自然を背景に淡々と映し出す。

     非現実的な“何か”なのに、人と接しない世界に生きる夫婦はお互いその非現実には触れずに現実的な生活を送る違和感や、アイスランドの民話などが織り交ぜられた不思議なストーリー、美しくも衝撃的な結末に、鑑賞後に「これは何の映画だったのだろうか」と考え込むだろう。

     また、名女優のノオミ・ラパスの演技も鬼気迫るものがあるが、何よりも素晴らしいのが羊たち。CGでやらせているのかと疑いたくなるほどの完璧な演技(?)がこの不思議な作品にさらなるリアリティを持たせる。
     

     ……さて、本作は4回連続で紹介したA24関連の作品でも、スマッシュヒットした「ミッドサマー」に近いテイストである。これはまたサブカル界隈では話題になることだろう。


    ©︎ 2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-

    LAMB/ラム
    監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
    クロックワークス配給
    9月23日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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