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車屋の未来、もう始まっている。 番外編① 実体験:電子証明書更新
【実体験】マイナンバーカードを更新しただけなのに、自分の常識まで更新されるとは思わなかった。
2026/07/29
~車屋の未来、もう始まっている。番外編① ~

10分
「10分くらいで終わるよね。」
そう思って、市役所へ向かった。
結果から言うと、本当に10分で終わった。
すぐ更新された。
ただし、私の常識も、10分で更新された。
「マイナンバーカードを先に更新してください。」
免許更新のお知らせに、そんな一文が書かれていた。
「なるほど。じゃあ先に市役所へ行くか。」
その程度の認識だった。
正直に言うと、何を更新するのかなんて深く考えていない。
「カードの更新」でしょ?
くらいの感覚である。
受付で番号札を取り、順番を待つ。
呼ばれてカードを渡すと、担当の方が笑顔で言った。
「今日は電子証明書の更新ですね。」
……
え?
カードじゃないの?
電子……何?
この時点で、私の頭の中はこうだった。
(帰っていいですか?)
もちろん帰れるはずもない。
更新期限は翌週。
ここで逃げたら、未来の自分が困る。
渋々、話を聞くことにした。
初耳。
更新って、一種類じゃなかったの?
説明を聞いているうちに、「あぁ、案内にもそれっぽいこと書いてあったな。」と思い出した。
……いや、思い出したというより、「そういえば読んだような気がする」くらいが正しい。
昨日の晩ご飯すら危ういのに、5年前の説明なんて覚えていられるわけがない。
話を聞くと、マイナンバーカードの更新には実は2種類あるという。
- 電子証明書の更新(5年ごと)
- マイナンバーカード本体の更新(10年ごと)
知らなかった。なお、この更新制度はデジタル庁でも案内されている。
いや、正確には「忘れていた」のかもしれない。
でも、人間という生き物は本当に都合がいい。
今の自分に関係ない情報は、見事なくらい記憶から消してくれる。
便利なんだか、不便なんだか分からない。
「あー、そういう仕組みなんですね。」
と、分かったような顔で説明を聞いていたが、
心の中では、
(初耳です。)
と全力でうなずいていた。
試練。
4桁は分かる。でも6〜16桁は分からない
本当の試練は、ここからだった。
「では、暗証番号をお願いします。」
まずは数字4桁。
これは分かる。
私の4桁は全国どこへ行っても、だいたい同じである。
セキュリティはガバガバだ。
そんな私を横目に、担当の方が続けた。
「では次に、6〜16桁の英数字をお願いします。」
……
(え。)
……
(そんなの設定した?)
……
(いや、お前が設定したんだよ。)
頭の中で、自分へのツッコミが始まる。
担当の方が優しく言う。
「最初の6文字だけ入力していただければ大丈夫ですよ。」
なるほど。
6文字なら何とか……
ならなかった。
一文字も自信がない。
6文字どころか、
0文字も自信がない。
一回目。
違う。
二回目。
違う。
三回目。
やっぱり違う。
未来の自分へ伝えたい。
「頼むから5年後に思い出せるものにしてくれ。」
……
決めたのは過去の自分だった。
苦笑い
「これ、正解率めちゃくちゃ悪くないですか?」
完全に観念した私は、担当の方に聞いてみた。
「この6〜16桁の暗証番号って……正解率、めちゃくちゃ悪くないですか?」
担当の方は一瞬だけ私を見て、それから満面の苦笑い。
「そうなんですぅ……。」
その笑顔を見た瞬間、安心した。
あぁ、私だけじゃないんだ。
私は今日、
『6〜16桁を忘れる会』の正式会員になった。
担当の方は続けた。
「この場で再設定できますので、大丈夫ですよ。」
本人確認を済ませ、新しい暗証番号を設定。
思っていたより、ずっと簡単だった。
そして最後に、「次回はカード本体の更新になりますので、その時はカード自体を作り直しますね。」と教えていただいた。
ありがとうございます。
その頃には、今日設定した6〜16桁も、きっと見事に忘れていると思います。
データ
市役所を出て、ようやく分かったこと
更新作業は、本当に10分もかからなかった。
拍子抜けするほど、あっさり終わった。
でも、市役所を出てから、免許更新のお知らせをもう一度見たとき、ようやく、あの一文の意味が分かった。
「マイナンバーカードを先に更新してください。」
行く前の私は、「順番が決まっているんだな。」くらいにしか思っていなかった。
でも違った。
今日、私が更新したのは、カードじゃない。
データだった。
行政は「見る」から「読む」へ進んでいる
電子証明書というデータを更新したから、その先にマイナ免許証がある。
電子車検証も同じだ。
紙を新しくしているのではない。
ICチップの中にある情報を最新にしている。
つまり、行政が管理しているのは、紙でもカードでもなく
データなのである。
チャジェ子。
以前、チャジェ子とこんな話をした。
「行政は"見る"をやめて"読む"へ進んでいる。」
その時は、「なるほどね」と思っただけだった。
でも今回、市役所で体験して初めて分かった。
これは未来の話じゃない。
もう始まっている話だった。
私たちは、まだ「カードを更新した」と思っている。
でも行政は違う。
更新しているのは、カードではなく、その中のデータだ。
たった10分。
されど10分。
私が市役所で更新したのは、電子証明書だけではなかった。
自分の常識も、一緒に更新されていたのである。
また一つ、賢くなってしまった。
※後編では、「電子証明書とカード本体は何が違うの?」「4桁と6〜16桁の暗証番号は何に使う?」「免許更新より先にマイナンバーカードを更新する理由」など、実際に調べて分かったことをQ&A形式で分かりやすく解説します。
※2026年7月時点の情報です。
参考資料
本記事で紹介した制度については、以下の公的機関の情報を参考にしています。
※制度は変更される場合があります。最新情報は公式サイトをご確認ください。
この連載を読む
✅ 第1話 財布の中の最後の牙城 ←読了
✅ 第2話 なぜ行政は"見る"をやめて"読む"へ進むのか ←読了
✅ 番外編① 実体験:電子証明書更新 ←読了
□番外編② 電子証明書Q&A
→7/30(木)公開予定
□ 第3話 車屋は整備業から"情報業"になるのか
→7/31(金)公開予定
□ 第4話 工場長が引退すると顧客も消える問題
→8/3(月)公開予定
□ 第5話 顧客車両管理システムは管理ツールか、それとも継承装置か
→8/4(月)公開予定
□ 第6話 社長が毎日頑張らないと回らない会社は、仕組み化されていると言えるのか
→8/5(火)公開予定
