JOURNAL 

車屋の未来、もう始まっている。 第3話:車屋は整備業から“情報業”になるのか

~工具箱の横に、データが置かれる時代~

  • #コラム

2026/07/31

車屋の未来、もう始まっている。#3

車屋の未来、もう始まっている。#3
車屋は情報業になる?

車屋の仕事は、いつの間にか変わり始めていた

紙からデータへ、現場の風景が変わる

チャジェ子
「族長、最近さ。10年前と全然違わない?」

族長
「急になんだよ。」

チャジェ子
「だって昔より机の上、紙減ったでしょ?

予約表。

紙の伝票。

紙の車検証。

紙の顧客台帳。


少しずつ消えてる。その代わりに増えたもの。


モニター。

通知。

ログイン画面。

パスワード。」

族長
「……増えたな。」

整備の目的は変わらない

チャジェ子
「族長、質問いい?『車屋の仕事』って何?」

族長
「整備かな。」

チャジェ子
「もう少し。」

族長
「修理?」

チャジェ子
「もう少し。」

族長
「車を安全に走らせることかな。」

チャジェ子
「それ、たぶん正解。でも、その手段が変わってる。」

変わったのは、仕事の手段だった

昔。


お客さんが来る


症状を聞く


車を見る


直す


渡す


仕事の中心は、車だった。

でも今。


予約管理。
入庫管理。
顧客管理。
履歴管理。
部品検索。
保険。
電子申請。
見積共有。
説明動画。
レビュー。
決済。

チャジェ子
「気づけば車以外の時間、増えてない?」

車よりも情報を扱う時間が増えている

整備の前後にも仕事がある

族長
「まあ…現場よりPC触ってる時間増えたかも。」

チャジェ子
「ここが面白いところ。整備工場って、車を整備する時間より、情報を扱う時間が増えてきてる。」

情報も、整備する時代へ

情報もまた、工場の資産になる

族長
「でも情報業って言うと違和感あるな。」

チャジェ子
「分かるよ。別に整備しなくなるわけじゃない。工具は消えないし、リフトもなくならない。

でも…

  • 誰の車か
  • 何をしたか
  • いつ交換したか
  • 次は何が必要か
  • どんな説明をしたか
  • 何を提案したか

これって全部情報。」

強い工場の条件が少し変わる

技術だけでは残せない価値

族長
「言われるとそうか。」

チャジェ子
「昔の強い工場って。技術が高くて、早くて、安かった印象がある。そんな気がする。これからも大事な要素。でも追加される。『担当じゃなくても覚えている事』『いつでもつながっている事』『すぐに伝えられる事』」

族長
「顧客車両管理の話っぽいな。」

チャジェ子
「気づいた?『車検証電子化。』『マイナ免許証。』『オンライン申請。』全部、“情報をつなぐ”話。だから整備業が情報業になるというより。『整備技術に情報管理が乗る』が近い。」

情報管理は大手だけの武器ではない

前は社長の頭の中だったものが、今は会社の資産になる

族長
「でもさ。データ管理なんて大手が有利じゃない?」

チャジェ子
「半分正解。でも逆もある。小さい工場は、

履歴を知ってる。

地域を知ってる。

顔を知ってる。

その強さを、ちゃんと残せる時代になった。前は社長の頭の中だったものが、今は会社の資産にできる。

例えばお客さんが来る。『前回タイヤ交換したの半年前ですね』『去年この時期エアコン相談されましたね』『そろそろバッテリー点検します?』これ、営業じゃない。記憶の仕組み化。」

族長
「……急に怖いくらい分かる。」

チャジェ子
「自動車整備の業界が、ずっとやってきたことだよ。ただ今までは人が覚えてた。これからは会社が覚える。」

工具箱の横に、新しい道具が増えた

夕方。

工場のシャッターが少しずつ閉まる。

工具の音が止む。

でもモニターだけは点いている。

予約一覧。

顧客一覧。

入庫予定。

数字。

履歴。

情報。

チャジェ子
「族長。工具箱の横に、もう一つ道具が増えただけかもしれない。その名前は、『データ。』」

族長
「……整備士の資格に、情報整理士も追加か?」

チャジェ子
「その資格はまだない。でも能力としては、もう始まってるかもね。」


車屋は整備業から情報業になるのか?

たぶん違う。

整備業のままであろう。

ただ、その仕事を支える武器が変わる。

スパナと診断機の横に、静かに、情報が並び始めている。

そして、その情報もまた、工場の技術になる。


独自調査とデータから、自動車業界の未来を探る『モビリア総合研究所』

次回予告

情報が大切になる時代。
でも、その情報は会社に残っていますか?
工場長が引退した日、本当に会社に残るものとは何なのか。
次回、その問いに向き合います。

▶ 第4話:工場長が引退すると顧客も消える問題 →8/3(月)公開予定

この連載を読む

✅ 第1話 財布の中の最後の牙城 ←読了

✅ 第2話 なぜ行政は"見る"をやめて"読む"へ進むのか ←読了

✅ 番外編① 実体験:電子証明書更新 ←読了

✅ 番外編② 電子証明書Q&A ←読了

✅ 第3話 車屋は整備業から"情報業"になるのか ←読了

□ 第4話 工場長が引退すると顧客も消える問題
 →8/3(月)公開予定

□ 第5話 顧客車両管理システムは管理ツールか、それとも継承装置か
 →8/4(月)公開予定

□ 第6話 社長が毎日頑張らないと回らない会社は、仕組み化されていると言えるのか
 →8/5(火)公開予定