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車屋の未来、もう始まっている。 第6話:社長が毎日頑張らないと回らない会社は、仕組み化されていると言えるのか
~"社長がいないと困る"は、本当に褒め言葉なのか~
2026/08/07
車屋の未来、もう始まっている。#6

「社長がいないと回らない」は本当に強い会社なのか
その一言は、誇りでもあり課題でもある
事務所でコーヒーを飲んでいると、チャジェ子が聞いてきた。
チャジェ子:
「族長。一日だけ会社を空けられる?」
族長:
「空けられる。」
チャジェ子:
「じゃあ一週間は?」
族長:
「……ちょっと不安。」
チャジェ子:
「一か月は?」
族長は少し笑った。
「それは無理だな。」
チャジェ子:
「この前ね、ある社長が言ってたのよ。『俺がいないと会社が回らないんだよ。』って。」
族長:
「よく聞くな。」
チャジェ子:
「最初は私も、すごい社長なんだなって思った。でも今は少し違う。」
社長の仕事は、誰にも渡せないままか
「頼られている」と「仕事が集中している」は違う
族長:
「どうして違うと思うの?」
チャジェ子:
「もちろん、社長は必要。
経営判断。
資金繰り。
採用。
投資。
未来を決める仕事は、社長にしかできない。
でも。
「今日の入庫は?」
「部品は頼んだ?」
「見積もり送った?」
「このお客さんには何て伝える?」
そんな毎日の確認まで社長しか分からないなら、それは"頼られている"のではなく"集中している"状態かもしれない。」
会社が成長すると、社長の仕事も変わる
成長とは「社長がやらなくていい仕事」が増えること
族長:
「でも小さい会社だと、どうしてもそうなる。」
チャジェ子:
「なる。むしろ自然。
創業した頃は、一人で何でもやる。
営業も。
整備も。
経理も。
電話も。
全部。
そのやり方で会社は大きくなった。
でも。
会社が大きくなっても、仕事の持ち方が創業時のままだったら。
社長の一日は、永遠に24時間しかない。」
チャジェ子:
「族長、会社って、何が成長するんだと思う?」
族長:
「売上?」
チャジェ子:
「売上もそう。でも、本当の成長は、社長がやらなくていい仕事が増えること。」
仕組み化とは、人を楽にすることではない
未来を見る時間を生み出す仕組み
族長:
「それって手を抜くってこと?」
チャジェ子:
「ぜんぜん違うよ。『社長しかできない仕事に、社長が時間を使えること。』それが仕組み化。例えば…・
電話を取る。
予約を書く。
車検時期を調べる。
前回履歴を探す。
見積書を作る。
これらは大切な仕事。でも"社長しかできない仕事"ではない。もし全部が仕組みになっていたら。『新人』でも『ベテラン』でも『担当が変わって』も同じ品質で動ける。だから会社は強くなる。」
例外があるからこそ仕組みが必要
日常を仕組みにして、例外に向き合う
族長:
「でも、そんな理想どおりにはいかないでしょ。」
チャジェ子:
「もちろんそう。人だから例外もあるしイレギュラーもある。
でも…。
例外があるから仕組みを作らないんじゃない。
例外以外を仕組みにするから、例外に時間を使える。」
社長の仕事は、未来をつくること
社長にしかできない仕事へ時間を使う
族長:
「…」
チャジェ子:
「…」
事務所の受付にあるのは
パソコン。
予定表。
顧客データ。
電子車検証。
診断機。
工具。
チャジェ子:
「ねえ族長。昔は工具が会社を支えていた。今は工具だけじゃない。『情報』も『仕組み』も『人』も全部が道具になっている。」
本当に強い会社とは何か
族長:
「じゃあ、社長は何をするのよ?」
チャジェ子:
「未来を見る事。社員が困らない仕組みを考える事。お客さんに選ばれ続ける会社をつくる事。それが社長の仕事だよ。今日の予約表を書くことじゃない。」
「社長がいないと回らない会社。」
一見すると、頼もしく聞こえる。
でも見方を変えれば、
社長が休めない会社。
社員が育ちにくい会社。
未来を考える時間がない会社。
とも言える。
本当に強い会社とは、
社長が何でもできる会社ではない。
社長がいなくても、お客様への約束が守られる会社だ。
そして社長は、その仕組みをつくるためにいる。
明日も現場で汗を流すことは大切だ。
でも、ときには現場から一歩離れて、自分に問いかけてみてほしい。
「もし明日、自分が一週間いなくても、この会社はお客様との約束を守れるだろうか。」
その答えが、会社の次の成長を教えてくれるかもしれない。
エピローグ
この連載では、マイナ免許証から始まり、行政のデジタル化、情報管理、顧客との関係、会社の記憶、そして仕組み化までを見てきました。
一見すると別々のテーマですが、すべては一つの問いにつながっています。
「会社は人でできている。」
そう言われています。もちろん、その通りだと思います。
でも会社は、
人が辞めても、人が休んでも、人が引退しても
お客様との約束だけは残らなければならない。
だから必要なのは、
優秀な社長でも、優秀な工場長でも、優秀な担当者でもなく
人の力を未来へつなぐ仕組み。
制度は変わります。
技術も変わります。
働き方も変わります。
それでも変わらないのは、
お客様との信頼です。
その信頼を、誰か一人の記憶ではなく会社の力として受け継いでいけるか。
その問いに向き合うことが、これからの工場づくりなのかもしれません。
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