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軽自動車検査協会、令和8事業年度の事業説明会を開催

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2026/04/24

 軽自動車検査協会(江角直樹理事長)は4月24日、令和8事業年度の事業説明会を開催し、江角理事長体制における事業方針を明らかにした。軽自動車の販売台数が増加を続け、検査業務が量・質ともに拡大する一方、協会は深刻な労働力不足という課題に直面している。これに対し、江角理事長は「DXの推進」「施設などの整備」「執行体制の整備」を3つの柱として掲げ、将来にわたって公正かつ確実な検査を維持するための具体的な施策を示した。


 「一番の課題は労働力不足への対応」


 江角理事長は、昨年4月の就任から1年が経過した感想として、全国の事務所を視察する中で強く感じたこととして「検査は社会的に必要な業務である反面、とても大変な困難な業務」であると述べた。法基準の複雑化や電子車検証、OBD検査の導入などにより現場職員の負担は増大している。その上で、将来を見据えた最大の課題として「労働力不足への対応」を挙げた。


 現状、多くの事務所で人手が足りておらず、人材確保に力を入れているものの欠員は解消できていない。さらに、職員の年齢構成を見ると10年後には定年退職者が現在の倍以上に増加する見込みだという。人口減少社会が進行し、多くの業種で人材獲得競争が激化する中、採用は今以上に困難になると予測される。江角理事長は「このままでは職員不足によって業務を処理しきれなくなる恐れがある」と危機感を示し、人材確保の強化と並行して、少ない人数でも業務を遂行できる体制の構築が急務であるとの認識を示した。


DXで利便性向上と効率化を両立


 労働力不足という大きな課題に対応するための筆頭施策がDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進である。経営企画検査担当の石田理事が説明した主要施策では、受験者の利便性向上と業務効率化を両立させるための具体的な計画が示された。

 

 中心となるのは、ワンストップサービス(OSS)の機能拡充だ。これまで新規検査と継続検査に限られていた対象を、住所変更や名義変更、中古新規、返納届出などにも拡大すべく、令和8年度から設計開発に着手する。また、OSSの申請を平日の夕方や土日祝日にも可能とする検討を進め、さらなる利用率向上を目指す。


 さらに、申請書の電子化を一層進めるとともに、自動受付機や、利用者が自ら操作できる自動更新機の導入、キャッシュレス決済への対応など、手続き全体のデジタル化を推進する。これらの取り組みは、受験者の待ち時間短縮といったサービス向上に直結するだけでなく、窓口業務の省力化にも繋がり、限られた人員で増加する業務に対応するための重要な一手となる。



職員の安全確保に必要な措置を講じていく


 事業の根幹を支える職員の安全確保と労働環境の改善も、喫緊の課題として挙げられた。特に深刻なのが、検査コースにおけるペダル踏み間違いによる暴走車両対策である。人身事故には至っていないものの、危険な事案が発生している状況を踏まえ、協会は具体的な安全対策に乗り出す。


 対策の一つとして、大使館などで見られる突入防止ポールをコース上に設置する検証を進める。また、受験者がコース脇の安全な場所に立たないと検査が開始できないようにする「フットスイッチ」を、令和8年度中に全事務所へ導入する計画だ。これにより、万が一の事故の際に職員や他の受験者が巻き込まれるリスクを低減させる。


 加えて、近年の猛暑に対応するため、熱中症対策として全事務所の職員に空調服を配布することも決定した。これまで事務所単位で導入されるケースはあったが、本部が主体となって一括で配布するのは初めての試みだ。職員からの意見を聴取する仕組みを整え、評価・表彰制度の見直しを図るなど、働きやすい職場環境づくりにも積極的に取り組む姿勢を示した。


 手数料が改定されたものの、物価や外部委託費の高騰により、協会の経営状況は依然として厳しい。軽自動車が国民の生活に不可欠なインフラであり続けるために、協会はDXと安全対策を両輪として、労働力不足という構造的な課題に立ち向かう。これらの施策は、将来にわたって「安全安心で環境に優しい地域社会の実現」という使命を果たし続けるための、不可欠な投資と言えるだろう。