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相次ぐ中古車店の突然閉鎖
~整備、鈑金塗装工場が「取適法」で未払いを防ぐ自衛策~
2026/04/13
■目次
1.頻発する「中古車店の突然閉鎖」と整備工場に迫る未払いリスク
2.2026年1月施行の取適法とは?下請けの工場を守る最強の盾
3.取適法を武器に売掛金未払いを防ぐには
1.頻発する「中古車店の突然閉鎖」と整備工場に迫る未払いリスク
2026年に入り、宮城県(2月)や福岡県(4月)などで、中古車販売店の突然の閉鎖・破産と、それに伴う大規模な納車トラブルが報じられ、テレビの全国ニュースでも連日取り上げられている。
「うちは真面目に整備と鈑金塗装をやっているから、悪質な販売店など関係ない」と考えるのは早計かもしれない。一連の騒動の背景には、外注先である自動車整備、車体整備工場に直結しうる”売掛金の回収不能リスク”が潜んでいる。
カスタム専門店の自転車操業が引き起こす危険
一連のトラブルを起こした販売店に共通しているのは、ジムニーやランドクルーザーといったカスタム前提の人気車種の専門店であったこと。
「納車までに時間がかかる」という顧客心理を隠れみのにし、全額前払いをさせた上で、その資金を別の支払いに回す自転車操業を常態化させていたという。こうなると、工場が被りかねない最大のリスクが、「悪質販売店からの外注(下請け)作業」である。販売店が自社工場を持たず、近隣の工場に車検・一般整備や鈑金塗装を丸投げしているケースは少なくない。
もし取引先が水面下で自転車操業に陥っていた場合、ある日突然連絡が途絶え、数百万円規模の工賃や部品代が一切回収できなくなる連鎖倒産の危険性が生じる。
2.2026年1月施行の取適法とは?
下請けの工場を守る最強の盾
こうした悪質な未払い、支払い遅延から自社を守る強力な武器となるのが、今年(2026年)1月1日に旧下請法から改正・施行された「取適法(中小受託取引適正化法)」である。
対象範囲が拡大し
整備、鈑金塗装の受託も保護
取適法では適用基準に”従業員数”が追加されるなど、対象となる取引範囲が大幅に拡大した。工場が行う車検や、鈑金塗装の受託は「修理委託」または「役務提供委託」として明確に法の対象となる。これにより、小規模な整備工場であっても法律の保護を受けやすくなった。
公正取引委員会も自販連へ要請
自動車業界の「下請けいじめ」は許されない
注目すべきは、政府も自動車業界の取引適正化に本腰を入れている点である。直近の2026年2月24日には、公正取引委員会と中小企業庁が日本自動車販売協会連合会(自販連)に対し、業界内での取適法違反の未然防止を強く要請した。これはディーラーの発注に関する問題が発端ではあるが、販売店(委託事業者)側が下請けの整備工場に対して不適切な取引を強いるといった、いわゆる下請けいじめを国が許さないという強いメッセージでもある。
※【参考】政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
3.取適法を武器に売掛金未払いを防ぐには
この法改正を契機として、工場は悪質業者からの連鎖被害を防ぐために以下の対策はいかがだろうか。
①曖昧な口約束を排除。書面での発注書発行・交付を必ず
取適法では委託事業者(販売店)に対し、作業内容や代金、支払い期日を明記した書面(または電子メール等)の交付が義務付けられている。 「いつもの口約束」や「とりあえず作業を進めておいて」という曖昧な発注はていねいに断り、法定明示事項が記載された発注書を必ず受け取らなければならない。これが未払い発生時の最も重要な証拠となる。
②手形払いの原則禁止と「60日以内の現金払い」の厳格適用
取適法により、受領日から60日以内の支払いが義務付けられ、手形払いは原則禁止(現金または60日以内の電子記録債権への移行)へと大きく舵が切られた。支払いサイクルがルーズな販売店にはこの法的根拠を突きつけ、厳格な入金ルールを再設定する必要がある。支払いが滞った場合は、留置権(民法295条)を行使して車両の引き渡しを拒み、その後の作業を直ちにストップするなどの対応を取るのも一手。
③不当な圧力や支払い遅延には「公的機関への通報」を辞さない態度も必要
もし取引先から不当な買い叩きや代金の減額、支払いの遅延を受けた場合、取適法違反として所轄官庁に申告することが可能である。万が一、トラブルの兆候や理不尽な要求を感じた際は、泣き寝入りせず、速やかに公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口へ通報する体制を社内で共有しておくべきだろう。
一部の販売店による突然の閉鎖や計画倒産は、業界全体への不信感を招きかねない。しかし、地道に技術を磨き、日々汗を流している工場側がその巻き添えになることはあってはならない。2026年は、取適法の施行により「受託する側が守られるルール」が強化された元年である。長年の取引が馴れ合いのみの不適切なものであれば見直し、法律という盾を自社の正当な利益と技術者の誇りを守り抜く手段としていただきたい。