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自動車の進化に伴走するフィルターメンテナンス 業界のスタンダードを再定義する
2026/03/12
日本フィルターエレメント工業会の理事長を務め、自動車用フィルターの専業メーカー・パシフィック工業社長として各種フィルターの重要性とともに、適切な交換サイクルを啓蒙する長安純氏。フィルターの交換サイクルが長期化する一方で、エンジンの保護や燃費維持、車内の空気環境改善といったフィルター本来の役割の重要性は高まっている。長安氏に、工場側が顧客に提案すべき適正な交換のあり方などについて聞いた。
ー オイルフィルターを取り巻く現状と現場の対応はどうか
フィルターの交換サイクルは長期化しており、本来はオイルとフィルターの同時交換こそが適正と言えるケースが増加している。その理由の一つがエンジンオイルの高温化とエンジンのアルミ化である。高温のオイルがアルミ製のオイルパンで急冷却されることで、よりスラッジが発生しやすい傾向にあるからだ。
また、車検ごとにしかオイル交換をしない場合、2回に1回のフィルター交換ではフィルターの使い過ぎになる恐れがある。このサイクルが燃費悪化やレスポンス低下を招き、結果としてカーオーナーの不利益につながってしまう。
現場のフロントを含めた技術者が、車検という一過性の時期だけでなく、最適なタイミングでの都度交換を提案できる引き出しを持つことが、カーオーナーの経済的メリットと信頼に直結するだろう。
ー エアフィルターやエアコンフィルターについてはどうか
エアフィルターは高機能化に伴い、センサーとの連動や構造の密閉化(ブラックボックス化)が進んでいる。加えて、DPF(微粒子除去装置)により黒煙が出にくくなったため、見た目で汚れが分かりにくい。特に、軽自動車を中心に多く装備されている不織布製の山数の少ない厚手のエアフィルターは、空気中のホコリや砂などのダストを立体的にろ過する特性を持つ一方で、一見すると汚れていないように見えても、実際には細かなダストが奥に詰まっている。エアブローによる清掃でも汚れを取り除けているかどうか、その効果は限定的なものにとどまってしまう。
当工業会が推計する年間約700万個という交換数は、市場の10分の1に過ぎないと認識しており、多くの車両が目詰まり状態で走行しているのが現状であろう。
エアコンフィルターについても新車時から活性炭脱臭タイプを標準装備する車が増えている。高級車種だけでなく一般的な車種においてもその傾向は見られる。しかしこういった事実を知らず、交換時に安価なノーマルタイプを現場が提案してしまうことも少なくない。せっかくの高機能フィルターをグレードダウンさせているケースが見受けられる。
ーフィルター交換時に工場側に求められる役割とは
自動車の進化に伴い、消耗部品の内容や交換時期も変化しており、台当たりの整備単価は減少傾向である。オイル、エア、エアコンの各フィルターの適正な同時交換を推奨することは、売り上げの維持への貢献だけでなく、環境変化への対応、そして何より顧客の安全と満足につながるのではないだろうか。
“適正に換えれば本来の性能が回復する”ということを、チラシなどを活用して分かりやすく判別できるように伝える。こうした地道な啓蒙活動も、これからの工場に求められる役割だと考えている。
パシフィック工業 代表取締役社長 長安 純 氏