JOURNAL 

    <小説>鼓動 もう一つのスクープ(第13話)

    • #一般向け

    2021/09/15

    BSRweb小説企画第一弾

    業界記者の視点で描く、自動車業界を題材にしたオリジナル小説。
    第1話へのリンク

    ※この小説はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

    第13話 独立愚連隊の会議風景

     スクープばかりを追い続けていたわけではない。フリーライターはGBの制作に関わったり、企業の社内報や企画の小冊子も手掛ける。中には毎日自動車新聞の企画会議に加わって企画特集を手伝うといった仕事もある。
     企画会議が出席した十数人のガス抜きの場に化すことも時々ある。ある企画が目標よりも高い収益を上げたため、その慰労を兼ねた定例会議が伊香保温泉で開かれた。北沢も企画の小冊子の編集に関与したことで招待され、気があまり乗らなかったが参加することに。
     「それではこれから定例の会議を始めます。まず企画分野の収益状況を報告します」と同社企画部長の永島清次が事務的に淡々と述べる。と、報告が終わらないうちに部員の坂口明が割って入った。「増紙キャンペーン期間なのに何故、皆意識が低いのか。もっと会社の幹部が率先して地方に増販を呼びかけないとダメだ」
    「今、私が大事な話をしている最中だ。しかも増紙キャンペーンは今日の議題ではない。それにいつも企画提案に消極的なのはどういう訳なの」と怒り心頭の様子を見せる永島部長。
     すると部長に反論せずに突拍子もないことを言い出した。「永島さん、貸しているお金返してくれませんか」と、あり得ない発言をする坂口。「坂口君、今ここで言うことではないのでは」と一蹴されたが、出席していた社員の雰囲気がこの発言をキッカケに一変した。各自バラバラに不規則発言を繰り返し、会議自体が自然散会に。その後、食事を兼ねた宴会に移ったが、各人の不満が爆発した格好で収拾がとれない事態に陥った。これがかねてより噂されていた独立愚連隊のような部署、と妙に言い当たっている場面に出会った。

    <筆者紹介>
    中野駒
    法政大学卒 自動車業界紙記者を経て、自動車流通専門のフリー記者兼アナリスト。業界歴併せて40年。

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