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2026年 BSサミット事業協同組合全国大会を開催
2026/07/06
BSサミットは7月6日、東京・港区にあるANAインターコンチネンタルホテル東京にて、2026年 BSサミット事業協同組合 全国大会を実施した。石井英幸理事長は、自動車アフターメンテナンス業界が直面する構造的な変化と、それに対応するための新たな方針を明らかにした。EV・SDV化という技術革新、地政学的な産業競争、そして国内の構造的な人手不足といった複合的な課題に対し、同組合が「遠隔」「連携」「価値創造」をキーワードに、新たな時代をどう乗り越えようとしているのか。その詳細な報告と思想的背景を語った。
「仕事はある、しかし儲からない、そして人もいない」
石井理事長は冒頭、アフターメンテナンス業界の現場に共通する声として「人がいない」「忙しいのに利益が残らない」「正しく請求しても通らない」という三つの課題を挙げた。これは単なる一時的な問題ではなく、業界の構造そのものが大きく変わってきているサインであると同氏は指摘する。
この構造変化の根源には、自動車そのものの変革がある。EVシフトはもはや環境対応という文脈だけでなく、中国の圧倒的な供給力、米国の自国産業保護、欧州の環境政策と産業防衛が絡み合う、国家戦略としての産業競争そのものに変質している。石井理事長は「EVシフトは技術競争ではなく、地政学と産業構造の中にある」と述べ、この巨視的な変化が直接的に業界に影響を及ぼすと警鐘を鳴らした。
「車の価値の中心がソフトウェアに移る」
さらに見逃せない変化として、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の普及が挙げられた。従来の自動車がエンジンや足回りといったハードウェア中心であったのに対し、SDVはソフトウェアが価値の中心となる。機能は後からアップデートされ、不具合もソフト更新で解決される時代が到来し、車は「売って終わりの商品」から「使い続けるサービス」へと変貌を遂げる。
この変化の本質は、単なる技術論ではなく「誰がデータを握るのか」という地政学的な競争にある。テスラを擁する米国、国家主導でデータを囲い込む中国、GDPR(EU一般データ保護規則)でルール形成を狙う欧州に対し、日本はハードウェアでは強いもののソフトウェアで遅れを取っているのが現実だと石井理事長は分析する。SDVが収集する多様なデータはもはや国家インフラのデータとも言え、ビジネスモデルも単発の販売利益型からサブスクリプション型へと移行。利益の源泉が製造業からITプラットフォーム企業へと移ることは、スマートフォンで既に起きた構造変化と同じであると指摘した。
「最大の脅威は、顧客接点を失うこと」
これらの変化は、整備事業者にとって「仕事が減る」のではなく「仕事の中身が変わる」ことを意味する。分解修理という「手を動かす仕事」から、診断やデータ分析といった「データを扱う仕事」へシフトし、診断、データ、説明、証明といった価値が収益の中心となる。これは、整備業からサービス業への転換を意味する。
しかし、この転換期には大きな脅威も潜む。電子制御に対応できる工場と従来型の工場との二極化が進むだけでなく、整備の主導権が自動車メーカー側に移る可能性も高まる。遠隔アップデートやメーカーによるデータ管理が進めば、事業者が修理のプロセスから外される危険性すらある。石井理事長が最も強調したのは、最大の脅威は整備が減ること自体ではなく「顧客接点を失うこと」であるという点だ。顧客が来店せず、情報も入ってこなくなれば、事業者の存在意義そのものが揺らぎかねない。
この脅威に対抗するため、石井理事長は「データを握ること」「診断とソフトへの対応力」「連携」の三つを今やるべきこととして挙げた。
「トップダウンではもう乗り切れない」
現代はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)に加え、BANI(脆さ、不安、非線形、不可解)と表現される、予測すら困難な時代である。石井理事長は、今年3月に勃発した米国とイランの戦闘状態に端を発する石油由来製品の価格急騰を例に挙げ、こうした予測不能な変化に対応するには、従来のトップダウン型組織では遅れが生じると断言。PSサミットは組織運営を「トップダウンからボトムアップへ」と大きく転換し、現場の声を吸い上げてスピーディーに意思決定を行う体制を構築した。さらに「朝令暮改を恐れない」柔軟性こそが、これからの組織に求められる力だと訴えた。
「修理業から価値提供業へ」
この新たな組織運営のもと、2026年度の方針として「遠隔」「連携」「価値創造」の三つのキーワードが掲げられた。
「遠隔」は、下請け体質から脱却し、顧客から直接選ばれる工場になることを目指す。そのために、適正なレバレート算出フォーマットの提供や、整備内容の説明ツール「PSサミット イージー リンク フォクラウド」の導入を進める。
「連携」では、自動車メーカー(トヨタ、BYD、KIA)、異業種(オートバックス)、教育機関、そして行政との連携を強化する。特に国土交通省と進める「自動車車体整備業界の基礎統計調査」や「標準作業時間の実態調査」は、業界の健全な発展と価格交渉の適正化に不可欠な取り組みであると位置づけた。
そして「価値創造」では、自動運転やEVの普及によって従来の収益源が縮小する未来を見据える。石井理事長は、これを悲観するのではなく「整備業が主役に戻るチャンス」だと捉える。なぜなら、これからの時代に求められるのは「直す技術」ではなく「安全を証明する力」になるからだ。センサーやソフトウェアが正しく機能していることを証明できる工場が選ばれる時代となり、整備工場は単なる修理拠点から、モビリティの運用を支えるデータ拠点へと進化する必要がある。
石井理事長は「変化が激しいということは、差がつく時代だということ」と述べ、PSサミットという組織を活用し、組合員と共に修理業から価値提供業への転換を実現し、業界の未来を創っていくという力強い決意を表明して挨拶を締めくくった。
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