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鈑金塗装の工数不足は損保と「個別交渉」へ! 実態に即した交渉を進める具体的方法とは?

  • #コラム

2026/07/08

2026年6月24日、国土交通省より「事故車修理の標準作業時間調査結果」が公表され、車体整備業界に大きな波紋が広がっている。広く普及している「自研指数」では終わらない作業があるという現場の声を受け、国交省が第三者的立場から海外の標準作業時間(CAB工数)との比較調査に踏み切ったものである。


調査の結果、鈑金作業(脱着・取替)を中心に自研指数とCAB工数の間に大きな差があることが明らかになった。これを受け、国交省の報告書には「車両の状態や修理方法によって、自研指数の時間内に作業が終了しない場合は、損害保険会社と個別交渉すること」と明確に示された。


では、車体整備の現場では具体的にどうやって個別交渉を進めればいいのか? 国交省の報告書の内容を整理しつつ、損保会社との個別交渉をスムーズかつロジカルに進めるための実践的な方法を考えてみる。

「一律〇〇%増」の交渉は不適当

報告書では、今回の結果はあくまで一定条件下での参考値であり、個別事案の妥当性を一律に裏付けるものではないとしている。


そのため、「国交省のデータで差があったから、一律で自研指数の〇〇%増しで請求する」といった交渉ではなく、個別事案ごとに透明性を持って、作業時間の妥当性を説明することが求められる。


また、損保会社の不合理な説明により交渉が進まない場合には、国土交通省の情報提供窓口に情報を入れるようアナウンスされている。この点は事業者にとって非常に心強い追い風であると言えるだろう。

どうやって個別交渉すべきか?

損保会社との個別交渉において、単に「自研指数では時間が足りない」「もっと工数を認めてくれ」と感情的に主張するだけでは、交渉は平行線をたどる。個別交渉を成功させる鍵は、「客観的な事実(エビデンス)」「ロジカルな説明」である。


国交省が留意を促す「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」や「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」を念頭に置き、アジャスターが納得せざるを得ない仕組みを自社で作ることが重要となる。


そのための具体的な第一歩となるのが、次に挙げる①指数テーブルマニュアルの熟読②修理前・中・後の写真撮影だろう。

①「指数テーブルマニュアル」の熟読

損保会社と対等に渡り合うためには、普段使用している自研指数の「指数テーブルマニュアル」を徹底的に熟読し、その内容を深く理解することが不可欠となる。ここで最も重要となるのが、各作業の指数に対して「何を作業範囲として含んでおり、何を含んでいないか(付帯作業などの扱い)」を正確に把握する視点である。


今回の調査結果に対し、自研センター側は「重複計上を避けるため、準備作業やリフトアップ等の付帯作業は別の関連作業(リヤバンパーや溶接パネル取替など)に含めて設定している場合がある」という見解を示した。しかしこれに対して日車協連が指摘する通り、このような指数の詳細な内訳や根拠は、長年業界に対してブラックボックス化されてきた部分である。


マニュアルを熟読し、“含まれているもの・含まれていないもの”を明確に区別できるようになれば、

  • 含まれていない作業は明確に指摘した上で、工数を追加で計上
  • 含まれているというアジャスターの根拠のない主張を技術的かつ論理的に矛盾を突く

ことができるようになる。


また自研センターニュースの確認も必須だ。2025年4月より有償での印刷物の発刊を廃止し、Webサイト上で新刊及び過去分ともにPDFで閲覧が誰でもできる。


交渉を始める前にまず相手を知ることから。指数テーブルマニュアルと自研センターニュースをよく読み込み、「自研指数」への理解を深めることこそが個別交渉の第一歩となる。

②修理前・中・後の写真撮影

個別交渉における最大の武器であり、損保会社に対する「透明性の確保」に直結するのが、詳細な写真による修理プロセスの記録だ。 協定の段階で作業時間の妥当性を証明するために、「修理前・修理中・修理後」の写真を、時系列で誰が見ても分かるようにしっかりと撮影しておく必要がある。


写真に収めるべき重要ポイントとしては、


修理前(損傷状態)

基本となる5方向(正面・左右45°・真横90°)の撮影はもちろん、損傷と目線の高さを合わせ、スケールなどと一緒に写すことでどの部分に、どれだけの波及や歪みが生じているかを正確に収める。また、ナンバープレートや車検証、走行距離やガソリン残量、警告灯の点灯状態なども記録する。


修理中(実際の作業工程)

トリムの脱着、リフトアップの回数、取替パネルのスポット溶接点数、高張力鋼板や樹脂といった素材の明確化など、「実際にその作業時間を掛けなければ安全・適正に修理できなかった事実」を工程ごとに時系列で撮影する。


修理後(完成状態)

メーカーの修理マニュアル通りに適正な品質で修復が完了したことを示す。またエイミング作業やスキャンツールを接続した様子も記録に残しておく。


このように「写真」という動かぬ証拠をそろえて提示すれば、アジャスターへの説得力が増し、個別交渉のスムーズな妥結につながるはずだ。

適切な工数確保でメカニックの処遇改善へ

今回の国交省の発表は、これまで現場が苦しんできた「指数と実作業時間の乖離」という課題に光を当てる大きな転換点となった。日車協連も述べている通り、時代や実態に即した適正な標準作業時間を確立し、適切な修理費を確保することは、深刻な人材不足の解消やメカニックの処遇改善、ひいては「整備難民」の発生を抑制するために確実に必要である。


「指数通り」の請求に甘んじることなく、マニュアルの熟読による“含まれる・含まれない”のロジック構築と、時系列で収めた写真によるエビデンス確保を徹底し、自信を持って損保会社との個別交渉に臨むべきである。


当たり前のことを当たり前に行う。これからは見積り作成者の真価が問われることになるだろう。

事故車修理見積書作成クラウドサービス「EGwebプロ/マンスリープロ」
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