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国交省・機構、第3回「OBD検査モニタリング会合」を開催(後編)
OBD検査対象装置に車線逸脱警報装置、側方衝突警報装置、ペダル踏み間違い時加速抑制装置を追加
2025/06/30
国土交通省(国交省)および自動車技術総合機構(機構)は2025年6月25日、第3回「OBD検査モニタリング会合」をAP東京八重洲(東京都千代田区)で開催した。
事務局は国交省物流・自動車局自動車整備課と機構OBD情報・技術センター、構成員は日本自動車工業会(自工会)、日本自動車輸入組合(JAIA)、日本自動車機械器具工業会(自機工)、日本自動車機械工具協会(機工協)、日本自動車整備振興会連合会(日整連)、日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)、日本自動車連盟(JAF)、軽自動車検査協会(軽検協)、交通安全環境研究所。
今回の第3回会合では、2024年10月1日より開始されたOBD検査において、2025年2月11日から同年5月13日までに関係者を通じて得られた課題についても確認。国交省物流・自動車局自動車整備課の村井章展(むらいあきのぶ)整備事業指導官が説明した。それらの一部抜粋・要約は以下の通り(各課題の文末()内は意見元、「↓」以下は国交省および機構の対応)。
●検査用スキャンツールにおいて、車両と診断機の接続順序を間違えると、OBD検査実施時に先に進まなくなってしまう。「接続の順序違い」によって検査に影響が出ないよう、検査用スキャンツールの型式認定における接続方法の統一化や、診断機側ソフトの車両認識方法の規格化などできないか。(指定工場)
↓
車両とVCIの接続順序については、検査用スキャンツールによって異なるため、各ツールメーカーの案内のとおり接続してほしい。接続方法等の規格化については、検査用スキャンツールの大幅な改修を伴い、ツールメーカーの負担増ひいては価格への影響が大きいため困難。
●「利用者」の登録と同様、「管理責任者」の登録でも 利用開始日・停止日を先に決めて登録できるようにしてほしい。(指定工場)
↓
ご指摘を踏まえ、システム改修を検討する。
●板金修理後等に正しい処理が行われず、OBD検査不適合になる場合がある(トヨタのウルトラソニックセンサーなど)。(指定工場)
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不適合要因のうち安全系の特定DTCとして最も多いのは通信途絶系のDTCであることから、板金修理後等に結線忘れがないかしっかり確認する、作業後にDTCの消去を行うといった、適切な整備を行うこと。
●「純正スキャンツール」を専業整備事業者でも安価で購入・レンタルができるようにしてほしい。(振興会)
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専業事業者への純正スキャンツールの提供については、道路運送車両法において自動車製作者等の義務となっているため、課題があれば情報提供をお願いしたい。なお、純正スキャンツールを購入・レンタルしやすい環境の整備に向け、今年度に実態調査を行う予定。
●輸入車に対するOBD検査の結果、特定DTCが検出された場合の調整・整備等に必要な情報が、一般の専業事業者においても容易かつ確実に入手できる体制になっているか。(振興会)
↓
専業工場等への整備情報の提供については、容易に入手できる方法により行うよう、道路運送車両法において自動車メーカーや輸入車インポーターに義務づけている。もし提供されないなど問題があれば、当該自動車メーカー等に対し適切に対応するよう指導するので、情報提供をお願いしたい。なお、整備マニュアル等の提供について、今年度に実態調査を行う予定。
●検査用スキャンツールの「バージョン情報」等の確認に手間がかかり負担である。使用中のバージョンが機工協が公表する「型式認定一覧」から外れていたら不適合と言われているが、それならばもっと「バージョン情報」等を見やすくして欲しい。(指定工場、振興会)
↓
「バージョンの管理が煩雑である」との意見はこれまでにもいただいており、所定のバージョン以上であれば、認定機であるとする「上位互換」の考え方を導入する計画。「OBD検査システム・検査用スキャンツール技術連絡会」で大筋合意しており、詳細運用について調整中。前述の改善後の結果を踏まえ、必要であれば機工協が作成する「型式認定一覧」の見やすさを改善する。
●検査用スキャンツールの借用に係る「使用台帳管理」の記載にあたり、機工協が公表する「型式認定一覧」が見辛い。特に、その他特筆事項の「No.○○に同型式の記載有」の記載に気付きづらい。また、メーカー別にソートされていないため探しづらい。(指定工場、振興会)
↓
ご指摘を踏まえ、機工協が公表している検査用スキャンツール一覧表について、ソート可能となるようExcel形式での掲載も行う。なお、ソート等の編集行為については、作業者の責任において行うこと。また、検査用スキャンツールの販売状況等の更新を再開し、国土交通省HP等に掲載する。
第3回「OBD検査モニタリング会合」の様子
続いて、2025年1月23日に開催された「第4回OBD検査システム・検査用スキャンツール技術連絡会」の結果概要を報告した。
緊急的な改善措置等を行った検査用スキャンツールの認定の有効性について、バージョンアップ後それをOBD検査用サーバーへ反映するまでに3週間程度要するため、機工協の「検査用スキャンツール型式一覧表」に当該バージョンが記載されていれば有効。
ただし、特定DTC照会アプリの画面上に「お使いの検査用スキャンツールは認定されていない可能性があります。」と表示される車両では、事前にOBD確認を実施していても機構などでの基準適合性審査時のOBD検査は省略されない。
また、スキャンツールメーカーが当該検査用スキャンツールでは適切なOBD検査を実施できないとし、機工協が公表した場合は無効となることが規定された。
そしてOBD検査対象装置の拡充について、国際連合WP29(自動車基準調和世界フォーラム)において基準が整備されたことを受け、車線逸脱警報装置(レーンデパーチャーアラート)、側方衝突警報装置(クロストラフィックアラート)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置(ACPE)について、OBD検査対象装置に追加することとした(スケジュールは下表参照)。
なお、事前に追加が検討されていた、バックカメラおよびソナーについては、「車両購入後に後付けされる可能性があり、それらについては自動車メーカーが特定DCTを出せないため」(村井指導官)対象外となっている。
OBD検査対象装置一覧
そのほか、2025年3月31日より申請受付開始された「令和6年度補正予算スキャンツール補助事業」について、村井指導官は「開始時期が中途半端だったこともあり、予算消化進捗が芳しくないことを受けて、チラシを制作した。PC、タブレット、VCIそれぞれ単独でも申請可能なので、ぜひ活用してほしい」と呼びかけた。
また、Windows10が2025年10月14日にサポート終了することを受け、OBD検査に使用する端末のOSをWindows11にアップデートすることを推奨するとともに、Windows11ではサポートできない32bit版の特定DTC照会アプリへのダウンロードリンクを削除する方針が示されている。
スキャンツール補助金告知チラシ