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【閲覧注意】冠水したアルファードの悪臭の正体は!? フロアの下に潜む繁殖したカビの惨状と修理費(その2)

残クレアルファードのフロアマット、シートをはがしてみたら……

  • #コラム
  • #一般向け

2026/09/08



前回の「その1」として、残クレ(残価設定型クレジット)で購入した車が冠水した場合に陥る、絶望的なローン地獄と車両保険の落とし穴について解説した。全損判定によるローン一括返済の恐怖や、修理後の査定落ちペナルティなど、残クレ車における冠水はまさに四面楚歌である。

では、それらを回避するため「保険を使わず、なんとか自腹で臭いだけを取り除き、残クレが終わるまで乗り続ける」という選択をした場合はどうなるのか。「自走できるのだから、臭いさえ消えればなんとかなるのでは……」という悲痛な思いで工場を訪れたカーオーナーの車を預かることになった工場は、フロアカーペットを剥がした瞬間に衝撃的な現場を見ることになる。

ここから先は衝撃的な写真が掲載されるので、食事中の方などはご注意いただきたい。



残クレアルファードのシート、フロアマットをはがしてみたら……

線状降水帯、ゲリラ豪雨の被害から3週間経ったある日、とある地方の工場に冠水したものの自走可能なアルファードが入庫した。工場の社長曰く、「話ぶりからカーオーナーは残クレ(残価設定型クレジット)で購入したらしいが、保険は使わずに何とかこの臭いを除去してほしいと依頼してきた」らしい。

すでに、カーオーナーは複数の自動車工場を回ったらしいが、冠水車だと分かると修理を拒否されたという。なぜ多くの工場は冠水車の修理を嫌がるのか。それは、30万円近い高額なクリーニング代を請求して徹底的に洗ったとしても、「まだカビ臭い」というクレームにつながるリスクが極めて高いからである さらには、清掃して数ヶ月後に、見えない部分で腐食が進んでいた配線がショートし、最悪の場合は車両火災を引き起こす危険性もある。工場側からすれば、割に合わないばかりか、自社の信用問題に関わるリスクの多い作業となる。

だが、飛び込みでやってきたというカーオーナーの切実な話を聞き、社長はそれらを理解した上で「臭いが確実に消えるのは約束できない」という前提で作業に取り掛かった。




フロアまでの冠水だったが、フロア下にあった機器関係はショートを起こしたのか、スライドドアは手動でしか開かなくなっている。カーオーナーは少しでも出費を抑えたいのか、「しばらくは手動のままでいい」とのことだった。





すべてのフロアとシートを脱着し終わったアルファード。車内にはかすかにカビ臭さを感じる。では、そのカビ臭い原因はどこなのか。






シートを外し、フロアマットを取り除く。すると、むき出しになった鋼板とそこに塗布された振動や騒音を抑えるメルシートが見える。


そのメルシートがカビの温床となっているのである。冠水によってフロアカーペットを通り越して汚水が入り込み、カーペット裏のスポンジ(吸音材)やメルシートが水分を吸ったまま密閉状態になるため、このように強烈なカビが一気に繁殖してしまうのである。これはメルシートの素材であるアスファルトやゴムが腐っているというよりも、冠水した際に入り込んだ泥水や下水に含まれるバクテリアなどの有機物がシートの表面に付着し、それがカビの栄養源となって繁殖している。




冠水が原因と断定はできないが、シートレーンもかなり錆が進行している。






あまりの衝撃的なカビの繁殖力に言葉を失うだろう。だが、それにしては臭いはそこまで強烈ではない。

では、どこが臭いの原因なのか。さまざまな場所に鼻を近づけて、時には顔をそむけるような臭いに直面することもあったが、その原因はフロント部分にあった。




運転席下のマットを外すとフロアスペーサーと呼ばれる発泡スチロール製の嵩上げ材が出てくる。







このフロアスペーサーの裏側にある黒いスポンジ部分。ここが強烈な臭いの元であることが分かった。その臭いは文字通り「牛乳を搾った後に放置し続けた雑巾の臭い」とでも言うべきもので、願わくば今後の人生で二度と嗅ぐことがないことを切に祈るほどのものであった。



冠水車の増殖したカビ、その清掃方法は



冠水した残クレアルファードの臭いの原因は分かった。では、実際にどのようにこのカビまみれのフロアを清掃・除菌していくのか。一般的には以下のような過酷な工程で行われる

① 内装の「全バラシ」(完全分解)
シートはもちろん、フロアカーペット、防音用のフェルト、発泡スチロール製のフロアスペーサーなど、床にあるものをすべて取り外し、鉄板(フロアパネル)がむき出しになるまで徹底的に解体する。

② スチーム洗浄と特殊洗剤による除菌
カビが繁殖したメルシートや鉄板に対し、高温のスチームクリーナーや、強力なアルカリ性洗剤・酵素系クリーナーを使って泥やバクテリアを根こそぎ洗い落とす。同時に、シートレーンの錆も落としていく。
メルシートのカビがあまりにも酷く、内部まで根を張っている場合は、ヒートガンで熱して柔らかくし、スクレーパーでメルシートごと削り落とす場合もある。その後、新しい制振材を貼り直す必要も出てくる(今回は洗浄のみ)。

③ 数日掛かりの徹底乾燥
水分が少しでも残っているとすぐにカビが再発するため、業務用の大型ヒーターや送風機を車内に入れ、数日間かけて完全に乾燥させる。

④ オゾン発生器や光触媒による強力脱臭
目に見えない隙間やエアコン内部に染み付いた下水臭・カビ臭を消すため、高濃度のオゾン発生器や光触媒などを使って車内を密閉し、長時間の脱臭・殺菌処理を行う。



これらを徹底的に行った結果、

カビは目視できないレベルになり、シートレーンに付着した錆も入庫時より大幅に除去された。



清掃後、新品のフロアマット、フロアスペーサーを取り付ける。




シートを元に戻して、清掃終了となった。



アルファードのカビ除去清掃。気になるその値段は……

残クレアルファードのカーオーナーの切実な依頼でカビの繁殖したフロア清掃を対応した社長。

気になるのはその値段だが、その社長は「カーオーナーのあまりの悲壮感にそこまでお金は取れなかった」と前置きした上で請求額は24万円ほどだった。

一般相場よりかなり破格の値段と言えるだろう。通常の相場で考えると、

シート・カーペットの脱着+特殊クリーニングのみの相場:15万円 〜 30万円

洗って乾かして臭いを取るだけの工賃のみ。アルファードはシートが大きく重量もあるため、作業員が複数必要になり工賃が高額になる。

部品交換を伴う場合の相場:30万円 〜 50万円以上
今回対応した作業はこれに当たる。一度泥水を吸ったフロアカーペットやスポンジ、フロアスペーサーは、洗っても悪臭が抜けきることがなかった。そのため、本来であれば部品代が上乗せされこのような高額となる。

電装系の修理が加わる場合の相場:50万円 〜 100万円オーバー
シート下のコンピューター(ECU)や電動シートのモーター、ワイヤーハーネス(配線)がショートして腐食している場合、これらをすべて引き直す必要がある。今回の場合、スライドドアの配線を直していたら同程度の金額になっていたという。




冠水した車も乗ろうと思えば乗れる

24万円という工場の温情による破格の費用で、カビの清掃という目の前の問題はクリアできた。しかし、カーオーナーにとってはここからが受難である。

スライドドアは依然として手動のままであり、見えない部分に侵入した水分が、数ヶ月後、あるいは数年後に深刻な電装系トラブルや車両火災を引き起こすリスクは抱えたままだ。オーナーは、残価設定ローンの支払いが終わるまで、その恐怖と隣り合わせでこの車に乗り続けなければならない。

ゲリラ豪雨や線状降水帯といった異常気象が日常となった今。 アンダーパスなどの僅かな油断、そして油断もなにもない自然現象の脅威により愛車が廃車となり数百万の借金を生む可能性がある。

だが、冠水した場合でも修理・清掃をしてくれる工場があることは確かである。自身の愛車が冠水したとしても廃車を決断するのはまだ早いかもしれない。

思い入れのある愛車が冠水したとしても、廃車の判断をする前にまずはお近くの鈑金塗装工場に相談をしてみるのもいいだろう。