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人材不足にあえぐ工場に「潜在整備士」と「出張整備」は刺さるのか

潜在整備士、出張整備の活用がどう現場の助けとなりうるのかを考える

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2026/07/07

 自動車整備の高度化と保有台数の高止まりを背景に、整備工場や鈑金塗装工場では深刻な人材不足が現場の機会損失に直結している。入庫依頼を断らざるを得ない現状を打破するための一つの手段として、国家資格を保有しながらも業界を離れている‟潜在整備士”の活用が注目されている。



データが示す人材不足と潜在整備士の規模

 2024年度の厚生労働省の統計では、全産業の有効求人倍率が1.25の中、自動車整備士の有効求人倍率は5.45(フルタイム、パートタイムを含む場合は5.28)となり、全職種平均の4倍以上という非常に高い数値を示している。現場に整備士が足りない状態は、車検や一般整備、鈑金塗装の入庫制限を意味し工場の売上減少に直結する。現場にとっても、スタッフ不足は一人当たりの業務負荷を増大させ、労働環境の悪化を招きかねない。

 一方で、整備士資格を有しながらも認証事業場において整備スタッフとして勤務していない潜在的な自動車整備士は約54.8万人に達している(国土交通省、2023年3月の自動車整備技術の高度化検討会資料より)。この層をいかに自社に迎え入れるかは、工場の処理能力を上げる鍵となりうる。参議院国土交通委員会においても、浜口誠議員から「潜在整備士の職場復帰を促す対策の必要性」が指摘されており、業界全体の課題としても認識されていることが伺える。



業界横断の仕組みと「出張整備」の可能性

 こうした課題を解決すべく、2026年5月には業界横断のハブとして「潜在整備士活用推進協議会」が発足された。この枠組みでは、EVやADASといった最新技術に対応した標準研修プログラムの開発を通じたリスキリング支援や、見積り・部品発注の自動化によるオペレーション業務の効率化が掲げられている。リリースによるロードマップでは、2027年3月を目標とし潜在整備士の実態に関する調査結果の発表が掲げられている。



「潜在整備士」が鈑金塗装工場に与えうる影響

 プラスの影響としては、どのような経験を経てきたかも関係するが、

即戦力の確保:衝突被害軽減ブレーキなどのセンサー類を搭載した車両修理では、分解整備や電子制御装置整備の知識が不可欠なため、有資格者を確保できれば利益率を上げることも可能。
教育コストと時間の削減:ゼロから未経験者を育て、資格取得を支援するには数年の歳月を要する。
顧客単価の向上:鈑金、塗装、整備士の各部門での穴に補充できた場合は、分業体制を築くことで、事故車修理のついでに車検や一般整備、予防整備を提案・受注することが可能になり、1台あたり単価を引き上げられる。

 しかし、もちろんマイナスの影響も及ぼしうる。
 技術的ブランクがあり、電動車の高電圧回路や最新のスキャンツールを用いた故障診断など、最新技術へのアップデートにコストが発生する場合。採用時に週休3日制や柔軟なシフト、適正な給与体系など、働きやすい環境の整備を進める過程で、従来型の働き方をしてきた既存スタッフとの間に不公平感やハレーションが生じるリスクもあるだろう。

 鈑金塗装工場が利益を最大化するためには、「潜在整備士」と「出張整備」をそれぞれ単独として終わらせず、掛け合わせて運用する方が良いケースもあるだろう。たとえば、「短時間勤務を希望する潜在整備士」を採用し、工場のスペースを使わない「出張整備・軽整備の専任部隊」として稼働させる。そこで獲得した顧客の信頼をフックに、自社工場での高単価な鈑金塗装案件へと繋げる仕組みを構築する。これにより、工場の生産性を落とすことなく人材確保と売上拡大の循環を生み出すこともできる。
 これらのメリットを生かし、マイナス面のリスクを下げるためには、自社の現在の設備稼働状況や既存スタッフのスキルマップを正確に把握することが出発点となるだろう。