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【特別対談】中日本自動車短大×岐阜県車協 車体整備業界の人材不足と人材育成の現状 PART3
車体整備業界の未来は「儲かる業種」への変革にあり 若手人材が集まる会社の共通点
2025/12/12
新たな学生募集戦略で未来を拓く
――今後の学生募集について、どのようなビジョンを持っているか
森 新たにモータースポーツエンジニアリング学科を立ち上げ、大胆な発想でスーパーGTのGT300クラスにレース参戦している。レースが好きな学生にピンポイントでアピールし、サーキットでのピットツアーなどで学生がメカニックとして作業している姿を直接見てもらう。こうした取り組みが功を奏し、日本人の希望者が非常に増え、来年の入学者については定員を超えるのではないか。
あとは、日本人学生が少ないのでいかに留学生を募集していくか。今年生まれた子は70万人おらず、18年後の18歳人口は明らかであり、今増えている留学生をいかに確保するかが課題となっている。今後は国内の日本語学校からだけでなく、海外の提携校から直接留学生を受け入れ、最終的に40人くらいが入学してもらえればいいと考えている。すると、日本人が100人、日本語学校から100人、直接受け入れた留学生が40~50人ほど安定的に募集できれば経営が成り立つ。
外国人を雇用した経験のない会社は敬遠しがちだが、一度雇用すると同等の技術レベルを持った日本人よりも良いという声も聞かれる。いかに日本人だけでなく外国人も上手に採用していくか、我々の学校から輩出する留学生はほぼ日本人と同じ能力を持った外国人だという認識を植え付けることができれば、自動車業界全体で活躍できる人材になるのではないか。
――離職率は高いのか
森 離職率は減っている。10年、15年くらい前であれば、本当に1年足らずで辞めてしまうケースがあった。
篠田 以前は「思っていたのと違った」や「過酷過ぎる」という理由で辞めることがあったが、今ではメンタルケアされて、フロントや部品担当に配置変更するなどゆっくり育てていく傾向にあると思う。ただ、専業工場の立場からすると、申し訳ないが、離職率が高くないと困る。やはり、卒業後すぐに我々のところへ来るイメージは正直湧かない。インターンで募集して、ようやく就職する感じだと思う。
大蔵 我々の業界に来てもらうには、儲かる業種であることをPRしていかなければならない。給与や休みが重視されるのであれば、それに見合った業態に変わっていく必要がある。ただ、今そういうチャンスの時期だと思う。
篠田 事業者が今のままで良いと思ってしまっている実情があって、学生や学校が就職先に求めている点との乖離があるんだなと今回の対談で感じた。
諦めてしまっている事業者も多い。でも、あと数年で廃業できるのかといえば恐らくできない。お金のためでなく、好きを仕事にしている人たちが多い職種。だからずっと続けたい、車に触り続けていたいという思いが根底にある。そこにプラスで儲かる業種であって、チャンスが広がっていることを個社がしっかりアピールし、それを学校からしっかり学生に発信してもらえれば、まだ希望の光が見えるはず。
――女性の学生についてはどうか
森 わずかだが、在籍している。よほど車が好きなのか、車体整備専攻を卒業してディーラー内製工場で塗装している子がいる。ただ、受け入れ先が女子社員のために更衣室などの環境を提供できるかが課題で、先ほど話した卒業生はその子のために環境を整えてもらった。
女性でも充分できる仕事だと思う。色の見分け方などは男性よりも優れ、勝てない。毎年1、2人の女子学生が進学してくるが、不思議なことに卒業後は現場に就職する学生が多い。なので、企業側に「ちょっと女子は……」と言われてしまうと困る。業界側がウエルカムになれば女性もどんどんいける。なので、女性はできないだろうという見方はやめ、できると思ったほうが良い。実際、女性は男性よりできる割合は高く、「男子に負けない」という強い気持ちで入学してくる。
篠田 女性のほうが色を見るセンスがあるのは分かる。実は、女性はマスキングもていねい。それと、我々男性が気付かないところを気付く気配りもある。当社では妻が頑張ってくれているので、女性の目は大事だと思っている。今後も女性が業界に進出してきてくれるのであれば、どんどんチャンスを与えてあげたい。
「儲かる業種」への変革が、業界の未来を左右する
――最後にこの対談の感想を
篠田 今回は学園祭への出展がきっかけでこういった場を設けさせていただいたが、もっと学校と話せる機会があったほうが良いと思った。私たちは非常に恵まれていて、こういった機会は一部の組合員や事業者にしかないので、多くの事業者がもっと学校と接点を増やせるとうれしい。
大蔵 業界が魅力的にならないと、学生たちに見向きもされないし、当然、就職もしてもらえない。やはり世間一般に言われる平均的な給与まで水準を上げ、休日日数も増やし、将来的にディーラーではなく専業工場を就職先に選んで良かったなと思ってもらえる環境作りが大事だと感じた。
先ほども話したが、これはチャンスなので、このような機会を増やし、みんなで共有しながら、業界全体の人材確保と育成を加速させていきたいと思う。