JOURNAL 最新ニュース
国交省・NASVA、JNCAP「新オフセット前面衝突試験」のデモを実施(前編)
「共存性能」(コンパティビリティ)の概念を採り入れた評価を2024年度より導入
2024/11/28
国土交通省および自動車事故対策機構(NASVA)は2024年11月8日、2024年度の自動車アセスメント(JNCAP。安全性能評価)より導入されている「新オフセット前面衝突試験」のデモンストレーションを、日本自動車研究所(JARI)つくば研究所衝突実験棟(茨城県つくば市)で実施した(デモの詳細は後編で紹介)。
新オフセット前面衝突試験デモの様子
従来のオフセット前面衝突試験は、車重が同等の車両との衝突を想定し、構造物に固定されたアルミハニカムへ試験車両を64km/h・オーバーラップ率40%で衝突させていた。
しかし、「正面衝突等による死亡事故が、我が国の交通死亡事故の約3割を占めている(2023年実績)ので、これを減らしていく必要がある」(NASVA・諸川慎治自動車アセスメント部長)うえ、「実際の事故では相手の車両が存在し、相手の車両にも被害が発生している」(同)ことから、試験方法を変更。
従来のオフセット前面衝突試験と実際の正面衝突事故の比較イメージ図
「新オフセット前面衝突試験」では、アルミハニカムのデフォーマブルバリアを構造物に固定するのではなく、台車の前端に装着。なお、国内乗用車の販売台数を加味して算出した平均車重から、総重量を1200kgに規定している。このような形で対向車を模した台車と試験車量の双方を50km/hで走行させ、オーバーラップ率50%で衝突させることとしている。
なお、デフォーマブルバリアの形状・構造も変更されており、従来はメインハニカムブロックと、その先端下側に取り付けるバンパーエレメントの2層構造だったが、「新オフセット前面衝突試験」では奥側ほど硬くなる3層構造のプログレッシブデフォーマブルバリアとなっている。
新オフセット前面衝突試験とその考え方のイメージ図
自車乗員の保護性能(SP:Self-Protection)評価については、試験車両に乗せる前面衝突試験用ダミーのうち、運転席側を従来の「ハイブリッドIIIダミー成人男子50%タイル」(身長175cm、体重約78kgの大人の男性を模擬)から、より人間に近づけて開発された最新モデルの「THOR(ソア)ダミー成人男子50%タイル」(身長約175cm、体重約77kgの大人の男性を模擬)に変更。評価部位も従来の21項目から24項目に増加した。満点は従来通り12点。
さらに、従来は後席に乗せていた「ハイブリッドIIIダミー成人女子5%タイル」(身長150cm、体重約49kgの小柄な大人の女性を模擬)を、「新オフセット衝突試験」では助手席へ移動。なお、THORの同等モデルが開発中という事情から、「ハイブリッドIIIダミー成人女子5%タイル」を継続使用することとした。評価部位は従来の後席乗員保護性能評価と同じ9項目、満点も同じ12点を維持している。
新オフセット前面衝突試験における自車乗員の保護性能(SP:Self-Protection)評価方法の概要
そして、台車の減速度と、アルミハニカムの変形量の凹凸の大小および、突き刺さり(40×40mmの範囲で変形量640mm以上)の有無を評価。これにより、試験車両の相手車両に対する加害性低減性能(PP:Partner-Protection)の評価を、新たに行うこととした。こちらは減点法となっており、最大で5点が減点される。
これについて、NASVAの中村晃一郎理事長は説明会冒頭の挨拶で、「従来のオフセット前面衝突試験では当該車両に乗る乗員の被害を評価していたが、新オフセット前面衝突試験では当該車両が衝突する車両への加害性についても評価を行う。そのため、自分の車両と、衝突した相手の車両、双方の安全を確認する、すなわち『共存性能』(コンパティビリティ)を評価する試験になっている」と、新旧試験の違いを端的に表現した。(続く)
(文・写真=遠藤正賢 図=NASVA)
新オフセット前面衝突試験における相手車両への加害性低減性能(PP:Partner-Protection)評価方法の概要
ログインして コメントを書き込む
投稿する