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    電動化で自動車整備はどう変わる? 最新FCV&ADASの注意点は?【IAAE2023:あいおいニッセイ同和自動車研究所】

    電動車のメンテナンスについて実体験を交えて説明。2代目トヨタ・ミライの定期点検とLiDARエーミングを解説・実演

    • #イベント

    2023/03/29

     2023年3月7~9日に東京ビッグサイトで開催された、自動車アフターマーケット総合展示会「国際オートアフターマーケットEXPO(IAAE)2023」。

     セミナープログラム「カーボンニュートラルを見据えた電動車への対応と高度運転支援システムのセンシングデバイスについて」には、あいおいニッセイ同和自動車研究所(以下、AD自研)研修部技監の小島一郎氏が登壇。自動車電動化の背景とメリットについて解説するとともに、現行トヨタ・ミライの実車を用いたFCV特有の点検整備とADASエーミングの実演を行った。

    あいおいニッセイ同和自動車研究所の小島一郎氏と、2代目トヨタ・ミライの水素ガス漏れ点検実演の様子

     日本政府は2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言。これに呼応して、2035年までに乗用車の新車販売を全て電動車にする方針を発表した。

     なお、2010年には「次世代自動車戦略2010」で、ハイブリッド車、バッテリー電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、クリーンディーゼル車からなる次世代自動車の、2020年および2030年の新車販売比率目標を掲げている。

     だが2020年実績を見ると、次世代自動車全体の販売比率は39.42%に達しているものの、その大半はハイブリッド車(新車販売全体の34.77%)。BEVは同0.39%、PHVは同0.38%、FCVは0.02%と、目標に遠く及ばない結果となった。

     しかしながら、「『日本の環境対策は遅れているのでは?』というイメージもあるが、実はそんなことはない」。

     2001年を100%とした自動車保有全体のCO2排出量を見ると、日本は2019年時点で23%削減。その一方で、イギリスは同9%削減、フランスは同1%削減に留まっており、ドイツとアメリカに至ってはそれぞれ3%、9%増加している。

     なお、「Tank-to-Wheel(燃料タンクから車輪まで。走行中のみ)では、BEVやFCVは走行中にCO2をほとんど排出しないため最も環境に良いということになるが、火力発電が主体の日本ではWell-to-Wheel(油井から車輪まで。動力源の製造・輸送・供給から走行まで)の考え方の方が適している。もっと言えば、LCA(ライフサイクルアセスメント。素材の採掘、部品・車両・動力源の製造・輸送・供給から、走行中、廃棄まで)のトータルでO2排出量がどの程度削減されるかが、今後カーボンニュートラルを目指すうえでも必要になる」と、小島氏は付け加えている。

    次世代自動車の販売目標。中央赤字は2020年の実績値

     では、電動車の優位性はどこにあるのか。まず燃費が良いこと、とりわけBEVとFCVはZEV(ゼロエミッションビークル)であることに加え、「電動モーターはアクセルペダルを踏み込んだ瞬間に最大トルクを発生するため加速性能が非常に高い」こと、そしてメンテナンスコストを抑えられること、特にBEVとFCVはエンジンを搭載しないため「オイル交換などエンジン関連のメンテナンスが発生しない」ことが挙げられる。

     このうち電動車のメンテナンスコストが低いことについて、小島氏は自らの体験談を交えながら詳細を解説。補機ベルトがないためその交換が不要(マイルドハイブリッド車を除く)になるうえ、エンジン始動時の電流量が少ないため補機バッテリーの消耗が少なく、また回生ブレーキを中心に減速するためブレーキパッドの摩耗も少ないことを明らかにした。

     なお、約11年間17万km所有・走行しているトヨタ・プリウスαは、「耐久テストも兼ねているため補機バッテリーとブレーキパッドを購入後一度も交換していない」ものの、高速道路走行が主体ということもあり、実際に点検しても補機バッテリーの健全性(SOH)は約50%あり、ブレーキパッドの残量も充分で、いずれも要交換水準に達していないことが確認されている。

    約11年間17万km所有・走行したトヨタ・プリウスα補機バッテリーの健全性テスト結果

     一方、FCVに関しては、水素を燃料とすることから、独自のメンテナンス項目がいくつか存在する。今回は現行2代目トヨタ・ミライについて、実車を用いた作業実演を交えながら解説した。

     その中で、FCスタック冷却時に発生するイオンを除去するイオン交換器フィルターの交換サイクルは、初回3年または6万km、2回目以降6万kmごととされており、「基本的には車検ごとに交換することになる」。また、エアコンプレッサーのブリーザーパイプ先端に装着されているフィルターキャップは、10万kmごとに交換する必要がある。

     そして高圧水素タンクは、使用期限が製造後15年と定められているうえ、15年間使用するには、初回は製造後4年1ヵ月、2回目以降は前回検査日より2年3ヵ月以内に容器検査を行わなければならない。

     こちらは「実際に製造されてからカーオーナーに納車されるまでのタイムラグと車検有効期限の前後に余裕を持たせた設定となっている」ことを指摘しつつ、「車検と同時に実施すればカーオーナーの持ち込み負担も抑えることができる」とアドバイスしている。

     また、12ヵ月ごとの定期点検項目として、水素供給装置の導管・継手部のガス漏れと損傷、ガス容器取付部の緩み・損傷、冷却装置の冷却水量(24ヵ月ごと)と水漏れ、エアクリーナーエレメントの状態、水素センサー検知機能が設定されている。

     車検時には、国土交通省管轄のものとして、高圧水素タンクの有効な刻印・証票の目視確認、配管などの機密点検(水素検知機で確認)、水素ガス漏れ検知器の断線・短絡確認(メーター警告灯目視確認またはスキャンツールで故障コード確認)が必要。

     加えて経済産業省管轄のものとして、高圧水素タンクの外観検査(目視)、漏洩検査(水素検知機で確認)、刻印・証票などの確認(目視)が求められており、かつ容器検査には最高充填圧力の60%以上が必要とされている。そのため「車検入庫時には水素を満タンに充填してもらうようカーオーナーにお願いする必要がある」ことを解説した。

     そして、水素の危険性に関し、天然ガスおよびガソリンと比較しながら、「取り扱いを間違えなければ安全な燃料」であることを説明した。

    天然ガス、ガソリン、水素の特徴比較表

     その後、2代目トヨタ・ミライに設定されている「トヨタチームメイトアドバンストドライブ」のアドバンストドライブカメラと前方・側方・後方LiDARのうち、前方および側方LiDARのエーミングを実演。それぞれ専用のターゲットが必要となり、かつ側方LiDARは位置決めのポイントが多く厳密さも要求されるなど、実務上の注意点を分かりやすく説明していた。


    (文・写真=遠藤正賢/図=あいおいニッセイ同和自動車研究所)

    2代目トヨタ・ミライのLiDARエーミング作業実演の様子2代目トヨタ・ミライのLiDARエーミング作業実演の様子2代目トヨタ・ミライのLiDARエーミング作業実演の様子2代目トヨタ・ミライのLiDARエーミング作業実演の様子2代目トヨタ・ミライのLiDARエーミング作業実演の様子

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