JOURNAL 

    ビック・ツール 代表取締役 新井義一氏

    誰もが買いたい、使いたいと思う製品を鈑金塗装工場に届けたい

    • #インタビュー

    2023/01/13

     2022年8月、ビック・ツールの新井義一専務が新たに社長に就任した。新井新社長は高校を卒業後、同社に入社。入社以来、営業の第一線で活躍し、数々のヒット商品の開発も手掛けてきた。
     社長就任の抱負をはじめ、今後の製品開発の方針や原材料費高騰による影響とその対応策などについて話を聞いた。

    ──社長就任の抱負を

     創業して以来、当社はものづくり企業として数々の製品を自動車補修業界に生み出してきた。そのため、皆さんに買って良かった、使って良かったと言っていただける製品を開発することが、当社の企業価値、そして使命だと認識している。
     創業当時からの揺るぎないこの理念を引き継ぎ、これからも他社には真似できないオンリーワンの製品を自動車補修業界に提供していきたい。

    ──現在の自動車補修市場をどう見ているか?

     自動車補修業界は景気に大きく左右されにくい業界だととらえている。昨今、自動車技術の進化により事故件数が減少傾向にあるが、決して世の中から自動車事故がなくなるわけではなく、この先も少なからず需要はあるはずだ。
     しかし、事故を起こし、車が傷付いても直そうとしないカーオーナーが増えることは予想される。また、若者の自動車離れやカーシェアリングの普及なども相まって、ますます仕事の入る工場とそうでない工場との格差が広がっていくのではないか。
     今やインターネットやSNSによる口コミは、人の行動や心理を決定づける重要なファクターである。そのため、ていねいな接客応対ができ、安心・安全な車体修理を提供する工場は口コミで評判を呼び、カーオーナーから選ばれる工場になっていくだろう。これからは、このような直需志向の工場作りが重要になると見ている。
     当社では医療業界向けの製品を展開しているため、医師との付き合いも多い。困っている人を助ける職種という点では、自動車補修業界も医療業界と同じくらい価値の高い仕事だと言えるだろう。
     何よりも鈑金塗装工場で働く職人の手を見れば、優れた技術力を持っていることは明白だ。車体修理は人の技術でしか直すことができず、その技術力によって品質が変わる。この素晴らしい技術を次世代に継承していくことができれば、業界の未来は明るいと確信している。そして、明るい未来を思い描ける工場が増えていくことを願っている。

    ──今後の製品開発の方針について教えてほしい

     ユーザーに役立つ製品を作る。これこそが“ものづくり”であり、当社の存在意義だと考える。そして、現場で代えが利かない製品は必ず売れる製品であって、そのような製品を持つメーカーは間違いなく強い。この視点を大事に製品開発し続けてきたことが、「イオンシャワーブース」や「月光ドリル」といったヒット商品を生んだ。
     また昨今、スポットドリル研磨機の「ローケンS2000」が「月光金太郎」とともに海外で高い評価を受けている。このローケンシリーズは、新型車に採用される鋼板の硬さに合わせて改良が加えられており、現行のS2000では1,500MPa級超高張力鋼板の穴開けに対応する。日本でも海外でも硬い鋼板の穴開け作業に苦労する技術者は多く、また穴を開けられたとしてもすぐにドリルの刃が立たず、使えなくなる課題は万国共通のようだ。
     このような現場での困りごとは必ず現場に答えがある。だから私は、製品開発には人との出会いが大事だと考える。何気ない会話、ふと目にした作業風景などからひらめくことも多く、実際にそのひらめきがきっかけでヒット商品が生まれた。
     しかし、製品開発は失敗の連続ばかりで、ほとんどの製品は日の目を見ないのが実際のところだ。だが、その失敗を糧に技術を磨き、困っているユーザーに向けた製品を開発することこそが醍醐味だとも言える。人との出会いに感謝し、持てる技術力を駆使して、誰もが買いたい、使いたいと思う製品を生み出していきたい。

    ──原材料費などが高騰している昨今、製品開発に与える影響は?

     一部の商品で価格改定したが、できる限り、このまま価格を維持していきたい。なぜなら、一番苦しんでいるのは私たちの製品を愛用いただく現場の工場だからだ。彼らに負担を強いる前に、自社の生産性を上げてコストの削減に努めていく。
     当社は「日吉津村から世界へ」を合言葉に、メイドインジャパンにこだわってきた。海外に生産拠点を置くメリットも充分理解しているが、国内生産のほうがこのたびの急激な円安の動きや他国との経済摩擦などによる影響を受けにくく、何より生産のコントロールが利きやすい。
     製造コストが2倍に上がったならば、同じ時間で2倍の個数を生産すれば良い。口にするほど容易ではないが、ユーザーのために努力を惜しまず、生産性の向上に努めて、価格を維持し続けていきたい。

    ──読者へ一言

     最近、ボデーショップレポートを読んでいても広告や新製品記事に目新しさを感じない。おそらく多くの読者も同じことを感じているのではないか。
     すべては業界を、そして現場の技術者をワクワクさせる製品を生み出せていないメーカーに責任がある。もちろん、当社もここ数年、自動車補修業界向けに新製品が開発できていないことに責任を感じている。
     私の頭の中にはいくつもアイデアが浮かんでいるが、まだそれを具現化できていない状況。しかし、近いうちに必ず皆さんがアッと驚く、そして買いたい、使いたいと思う新製品を発表したい。ぜひ、期待して待っていてほしい。

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