JOURNAL 

    ビジネスの基本は「忠実なまね」にあり

    【BSRweb独自連載】洗車で始める顧客獲得 第12話

    • #一般向け

    2022/12/15

    成功事例を忠実にまねる

    本荘興産・平井社長による「洗車で始める顧客獲得」は今回が最終話です。前回に続き手洗い洗車を事業化する上で重要な要素について、解説します。
    はじめから読む



     前回は洗車の商品化においては洗車品質の平準化と洗車が売れる時期やタイミングの理解が必須だとお伝えしました。今回は洗車ビジネスを軌道に乗せるために、他者をまねることと自社の強みを理解することの重要性についてお話ししつつ、情報をお客様に正しく伝えるための方法を考えます。

     茶道や武道、書道などの世界では、その道に通じるまでの過程として守破離(しゅはり)という言葉が受け継がれています。これは、まず師に教えを請い忠実に実践する「守」から始まり、自身の経験や他者からの教えなども活かしつつ創意工夫を重ねていく「破」に移行し、やがて完成した独自のスタイルをもってその道を究めていく「離」に達する、という教えです。 成功事例に学び、成功している人を徹底的にまねることは、洗車を含むあらゆるビジネスの基本です。知らないことはどんどん質問し、学びを積極的に採り入れていくことは成功への近道です。
     そこでまずは地域の繁盛店に出向き、実際にサービスを体験してみてください。一連の流れを通して、洗車ビジネスのヒントが数多く得られるでしょう。もちろん、繁盛店とは店舗の規模やスタッフ数、資金力に違いがあるでしょうし、目標とする売り上げや利益、事業にかかるコストなども異なるはずです。しかし、価格やメニュー構成、洗車中の姿勢や洗い方、洗車を勧める時の会話などはまねできるのではないでしょうか? 繁盛店が実践しているテクニックをそっくりそのまま実践し、経験を積んでいけばやがて自社にとって最適な形が見えてくると思います。洗車ビジネスにおいてありがちなのは、「どうせ車検のついでにしか洗車しないだろうし、価格設定はとりあえず1回1,000円ぐらいからにしておこう」といった思い付きによる価格設定です。さしたる強みを示せないままにやるだけでは売れる頻度は極端に低くなり、いつの間にか洗車ビジネスはお蔵入りするでしょう。

    まずは成功している店舗を徹底的に模倣し、基礎を習得することを目指す

    自分たちの強みを武器にする

     ロードサイド店舗の集客には、外観デザインにこだわったり看板やノボリを立てるなどの工夫が重要視されます。たとえば幹線道路に面したガソリンスタンドであれば、「洗車」と大きく書かれた看板が設置されているだけで、充分来店は見込めます。一方、立地面では有利と言えない店舗に関しては外観で目立とうとするよりも、Webサイトや口コミによる集客に注力することをお勧めします。
     お客様に対して伝えるべきなのは、車の専門家としての知識や技術です。車の修理が高度化している中、他の工場では直せなかった故障や損傷を直せるスキルは非常に貴重です。また、それらの修理に欠かせない設備や工具は、お客様にとっては目新しいものです。見せ方によっては店舗が「車のプロ」であることを強く印象付け、「これだけ立派なお店なら質の高いサービスを受けられるはずだ」と、価格に対する納得感も与えます。
     つまり、高い品質のサービスを提供するのに加えて(1)自社のサービスや技術力などを外部に発信して来店を促す、(2)接客スペースや作業場を整理整頓して「魅せる店舗」に進化させる、(3)来店時には口頭で作業内容や価格をきちんと説明する、というステップでお客様と向き合い続ければ口コミで評判が広がり、お客様からの紹介も期待できるようになります。価格だけで競争するのではなく、質の高さで勝負に挑みましょう。

    整然とそろった設備機器は、技術力やサービス品質の高さを連想させる

    正しく、分かりやすく知ってもらうために

     自社の技術力やサービス品質の高さを伝えるのは、車検整備や鈑金塗装においても一般的です。洗車ビジネスの場合、これに加えて車が汚れる原因と、車がきれいになるメカニズムも理解してもらう必要があります。たとえば、量販店などで売られている洗車グッズの中には「雨で汚れが落ちる」、「水なしで洗車できる」などと謳われたものがあります。こうしたキャッチコピーの影響もあるのか、雨が降れば車の汚れは勝手に落ちると思い込んでいたり、頑固な泥汚れを落とそうとして洗車シートでゴシゴシと車を拭いてしまうカーオーナーもいるようです。
     雨には空気中のほこりや排気ガスなどが含まれており、ボデーに付着した状態で放置しておくとシミが発生してしまいます。これらは研磨材や溶剤を使わなければ除去できないので、塗膜を傷めかねません。はじめにボデー全体を水洗いし、その後にカーシャンプーで優しく洗うのは、車になるべく傷が付かないようにしつつ、汚れをしっかり落とすために最適な方法だからです。車のプロにとっては常識でも、お客様の中には知らない方もいらっしゃるでしょう。だからこそ、この古典的な方法をていねいに説明し、お客様の理解を得ることを怠らないようにしましょう。口頭での説明に加えて洗車前後の仕上がりを目で見て、ボデーに触れていただき、良さを実感いただくと効果的です。
     より分かりやすく伝えられるように、お客様と同じ目線に立って考えるのも重要です。女性に対しては洗車をスキンケアにたとえて、「顔を洗う時には洗顔料をよく泡立ててやさしく洗うように、車もたっぷりの泡で洗うときれいになりますよ」と説明すると、相手もイメージがしやすいと思います。

    洗車は洗顔によく似ている。ていねいに洗って汚れをしっかり落とすと、その後の工程もきれいに仕上がる

    作業前後の状態がイメージしやすいメニュー表を使って説明すると、成約率アップが見込める

     全12回にわたり、車屋さんが洗車をフックにして新たなお客様とつながるためのヒントについてお話ししました。当社ではYouTubeなどの各種SNSを通じて洗車にまつわる情報をお伝えしているほか、洗車を本格的に事業化したいと考える店舗に対しての支援も行っています。
     本連載が手洗い洗車のイメージを変え、皆様のビジネスのお役に立つものになれば幸いです。約半年間お読みいただきまして、ありがとうございました。

    本荘興産Webサイト:https://www.honjyo-k.com/
    ウォッシュマン公式サイト:https://www.washman.biz/





    著者プロフィール



    平井新一(ひらいしんいち)
    株式会社本荘興産 代表取締役社長
    岡山県倉敷市出身 1974年生まれ

    大阪の音楽系専門学校を卒業後、北海道の美装専門店での現場修行を経て1999年に同社へ入社。営業担当として全国を飛び回る傍ら、国産カーメーカーの純正ボデーコーティングの企画・開発にも関わる。2014年より現職。
    近年は洗車ビジネスに関するセミナー講師やクライアント企業のブランディング・PRのサポートなどにも取り組んでいる。

    ログインして コメントを書き込む
    コメント入力者
    •  
    • ※こちらのお名前がウェブサイトに掲載されます。

    コメント

    投稿する