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走行距離課税は、誰が言ったのか
2022/11/11
2022年10月20日、参議院予算委員会で鈴木俊一財務相がEVに対する走行距離課税導入の可能性に触れたことに端を発し、マスメディアやSNSなどで活発に議論が議論が生じている。
交わされている意見は走行距離課税に対して否定的な意見が多く、国民の自動車諸税に対する不満が改めて露わになったと言えよう。一方で、ガソリン車にまで課税されるのではないかなど憶測が飛び交っている。実際にガソリン車にまで走行課税が及ぶのか、質疑内容を見て判断して貰いたい。
結論から言うと、与党の税制改正議論の中でEVに対する走行距離課税について、今すぐではないにしても、一つの方法であると考えているというのは事実だ。一方で一部で取り沙汰されているような、ガソリン車への走行距離課税は今のところないようだ(一部で指摘されている通り、将来的にガソリン車に課税される可能性は否定できない)。
■鈴木財務相の答弁内容
濱口議員
「続きまして、自動車関係諸税についてお伺いしたいと思います。自動車の税につきましてはですね、ユーザー負担が非常に重い事が課題になっております。令和5年度の税制改正に向けてはですね、自動車を取り巻く環境変化を捉えながらですね、中長期の視点で抜本的な改革をして行こうと、こういう方針も示されています。エコカー減税の延長等自動車ユーザーの負担軽減というところをしっかりと取り組んでいく必要があると思っていますし、一方でですね、地方で暮らす自動車ユーザーはですね、車が生活必需品です。こうした皆さんにですね、更に負担を強いるような走行距離課税というものは導入すべきではないという風に思っております。令和5年度の税制改正に向けて自動車関係諸税どのような議論と方針で行かれるのかお伺いしたいと思います。」
鈴木財務相
「与党の税制改正大綱におきまして、カーボンニュートラル目標実現への貢献、自動車を取り巻く環境変化の動向、インフラの維持管理の必要性などを踏まえつつ、国・地方を通じた安定的な財源確保を前提に、受益と負担の関係を含め、中長期的な視点に立って検討を行う、とされているところでございます。そのうえで先生ご指摘のエコカー減税などの自動車関係諸税の来年度具体的な見直しの内容につきましては、与党での議論を踏まえまして、税制改正プロセスのなかで適切に検討して参りたいとそういうふうに思っているところでございます。そのうえで先生から走行距離課税の導入については、これは相応しくないのではないかと、こういうお話がございましたが、電気自動車がこれから普及していく訳でございますが、電気自動車等はガソリン車と異なりまして、燃料課税によって走行段階での課税が行われていないわけでありまして、その一方でガソリン車よりも重量が重く、道路への損壊に与える影響がむしろ大きい事、そして厳しい財政事情を考えてみれば、いずれかの時点では負担の在り方を見直すことを考えていく必要があるのではないかと思っております。その際、電気自動車等に対する課税の方法として、一つの考え方ではあると思っているところではございますが、いずれも来年度に向けましては、与党の税制改正についての議論を踏まえて、それを元にしながら、しっかりと政府としても対応してきたいと考えております。」
濱口議員
「カーボンニュートラルを進めていく上で、電動車の普及を進めていこうという政府の方針もある中で、電動車、電気自動車をはじめですね、課税すると言うのは、やっぱり方向性としては間違っているという風に思っていますし、また地方においてもですね、やっぱり自動車というのはなくてはならないものになっていますので、地方の皆さんだけに負担を課すような税の考え方というのは公平公正な税の在り方としてはやっぱり大きな問題であると思っておりますのでその点は今一度申し上げておきたいと思っております。」
■重量を問題視するのであれば、トラック・バスなど大型車の税率の見直しが先ではないか?
自動車諸税の問題について枚挙に暇がない。道路保全の財源が足りないのであれば、なぜ道路特定財源をやめて一般財源化したのかなど議論は尽きない。
今回のEVの走行距離課税に関する鈴木財務相の発言のなかで、『電気自動車等はガソリン車と異なりまして、燃料課税によって走行段階での課税が行われていないわけでありまして、その一方でガソリン車よりも重量が重く、道路への損壊に与える影響がむしろ大きい』というのが筆者は気になっている。
自動車の重量に関する課税は自動車税や自動車重量税など幅広くかけられており、一概に言えないが燃料税を走行時にかけている課税というのであればEVに課税されていないことは事実だ。しかし、ガソリン車とEVの重量差を比して道路損壊への影響を語るのは違和感を覚える。トラックやバスなどの輸送車両の方が乗用車の比ではないからだ。たとえば、自動車税は財産税的な側面と道路損壊への影響を課税根拠に持つが、トラックは最大積載量で税額が決まるが、自家用車よりも圧倒的に使用頻度も高く、重量があるにも関わらず、税額は低い。そも、重量を問題視するのであれば燃料税は重量と比例しないのはおかしい。
車体重量が道路損壊に与える影響は、軸重が2割増えるだけで舗装への影響は約2倍、橋梁への影響は9倍になるという研究結果がある。これは、2022年10月26日に行われた税制調査会で財務相が提出した説明資料でも使用されている。軸重量が与える道路損壊への影響を重大な課税根拠とするのであれば、まずはトラックやバスなどの大型車への課税見直しを検討しなければなるまい。
物流コストの増大は避けられないが、自動車を所有していない人でも、物流を通じて道路を間接的に利用しているため、広く税負担を行うのであれば、トラックなどの大型車や営業用車両への課税を見直す検討が先ではないだろうか。
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