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    2022年4月に自動車整備士資格見直し。電子制御装置整備の取扱はどうなる?【IAAE2022セミナーレポート04:国土交通省自動車局整備課】

    整備士人材不足と高齢化、不正車検問題、電子制御装置整備認証取得の遅れなど、自動車整備業界の課題と解決策を総括

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    2022/03/24

     2022年3月9~11日の日程で東京ビッグサイトにて開催された、自動車アフターマーケット総合展示会「国際オートアフターマーケットEXPO 2022」。

     セミナープログラム「最近の整備業界を取り巻く状況とその対応」には、国土交通省自動車局整備課点検整備推進対策官の森本裕史氏が登壇。自動車整備を取り巻く近況について講演した。

    国交省自動車局整備課の森本裕史氏

     整備需要のバロメーターといえる自動車の保有台数は微増傾向にあるが、将来は人口減少に伴い減少傾向に転じると予想されている、一方で整備要員は減少傾向にあり、それに反して有効求人倍率は建築や介護分野よりも高い4.5倍に急上昇している。加えて整備学校への入学者は15年前と比べて半減。整備要員の平均年齢は45歳を超え、世代交代が進んでいないのが実情だ。

    自動車保有台数、自動車整備要員有効求人倍率、自動車整備学校入学者数、自動車整備要員平均年齢の推移

     また、整備工場の事業者数は横ばいないしは微減の傾向だが、特定整備制度の経過措置が終了する2024年には減少傾向が強まると予想されている。

     そうした中、ディーラーによる不正車検が頻発。「車検制度の信頼性を揺るがす事態」と懸念を示した。

     だが、自動運転技術の進化・普及は急速に進んでいる。政府の方針としても、自家用車の高速道路におけるレベル4自動運転を2025年をめどに実現する目標を掲げている。「これらがすぐに整備事業に影響するわけではないが、今後に向けて備えておく必要がある」と警鐘を鳴らしている。

     このように自動車整備業は、人への依存度が高い、自動車社会を支える根幹である一方、労働環境の改善や生産性向上が大きな課題となっている。その解決のためには「経営者と現場従業員との意思疎通、整備事業者同士の連携を通じて、自動車整備業の魅力や課題を外部に発信する必要がある」との見解を示した。

     政府としては、2022年1月13日に、岸田文雄内閣総理大臣と斉藤鉄夫国土交通大臣、自動車整備士3人(若手、ベテラン、女性)が車座対話。整備士からは残業の多さ、休みの少なさ、先進技術への対応、女性用設備の不足、補助金や税制優遇の充実などが、課題として挙げられた。それに対し岸田総理は、中でも賃上げに強い意欲を示している。

    岸田総理と整備士等との車座対話の様子

     国交省としても様々なPR活動を行っているが、「給与面や休暇など待遇の中身が改善されない限りはいくらPRしても若者には届かない」と指摘。また技術面などの教育が不足していれば人材が定着しにくいとも付け加えた。

     さらに、人材不足を補うため、外国人技能実習制度や特定技能制度の活用も推進されているが、「安い労働力として考えると上手くいかない。日本人よりもむしろ手厚くケアする必要があり、トータルコストは日本人よりもむしろかかると理解する必要がある」と警告している。

     不正車検については特に、「経営者が現場と意思疎通を図り、現場の実態を充分に把握する必要がある」と指摘した。

     そのほか、「健康経営」「健康投資」への取り組みや、賃上げ増進税制や中小企業経営力強化税制の活用を呼びかけている。

     また、自動車技術の進化に合わせて、自動車整備士資格の見直しを検討。現行の制度では電子制御装置整備の取扱が想定されていないうえ、二級と三級では取扱内容が細分化されているが、これらを集約したうえ、二級および特殊自動車整備士も電子制御装置整備が行える新制度を2022年4月中に公布し、2027年1月1日に施行、同日以降に新制度下での自動車整備士試験を実施する計画となっている。

    整備士資格見直しの概要

     特定整備については、2024年3月31日までに認証を取得しなければ、たとえ経過措置の適用を受けていても、電子制御装置の整備ができなくなる。しかし電子制御装置整備の認証取得軒数は約3万件に留まっており、「分解整備認証を取得している整備事業者が約9万軒と考えると、2024年3月の直前に申請が集中した場合、それまでに間に合わなくなる可能性がある」と注意を呼びかけた。

     大型車の車輪脱落事故が増加傾向にあることにも触れ、ワッシャー付きホイールナットを用いるISO方式の車両において、清掃や潤滑剤の塗布が不充分な場合に緩みやすいことを例示。適切な点検整備を呼びかけて、講演を終了した。


    (文・写真=遠藤正賢/図=国土交通省)

    2022年1月までの電子制御装置整備認証取得数の推移

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