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    【インタビュー】ウルトジャパン 代表取締役社長 永田裕介氏

    生産性・安全性・健康・環境への貢献をキーワードに、工場の利益を生む製品の開発・販売を推進

    • #インタビュー

    2021/05/11

     今年3月、自動車用ケミカル用品などを販売するウルトジャパンの代表取締役社長に永田裕介氏が就任した。
     永田氏は外資系化学・素材メーカーで自動車アフターマーケット向け事業部長を務めた後、材料メーカーなどを経て、今年1月に同社へ入社。
     長く自動車アフターマーケットに携わってきた永田社長に、市場環境に対する認識や今後の経営戦略を聞いた。

    永田裕介社長

    ーー社長就任の抱負を

     自動車整備業界においてウルトというと、ブレーキパーツクリーナーの会社という認識が強いが、実は幅広い製品を扱っている。国内では約5,000アイテムを販売しているが、これでもグローバルで持つ商材の1/6程度。まずは国内におけるウルトブランドの浸透を図っていく。
     また、国内では売り上げの95%を自動車アフターマーケット向け製品が占めているが、世界全体で見ると建築資材、一般工業向け、自動車向けの製品がそれぞれ30%程度で、バランスの取れたポートフォリオを形成している。すぐに同じ比率にすることは難しいが、自動車業界向けの販売を伸ばしつつ、他業界に対しても積極的にアプローチしていきたい。

    ーー今後の経営戦略は

     ウルトは自社ブランドで製品を持ち、エンドユーザーまで直接届けるというのが世界共通のビジネスモデル。海外にはウルトショップというBtoB専用の実店舗もある。このモデルの良さを活かしつつ、今後はマルチチャネル化を推進していく。
     建築、一般工業向けについては直販ルートが確立されていないので、積極的に販路拡大を進めていく。一方、自動車アフターマーケットに対しては、30年以上直販にて事業を展開しており、既存のお客様を軸としながらも、着実な新規開拓を進めていく。
     当社のマルチチャネル化は、これまで直販で販売していたユーザー層に対し、チャネルを増やすことで売り上げ規模を拡大させるという考え方ではない。対象とするユーザー層を住み分け、これまで商流を構築できなかった領域へアプローチできるパートナーと協力していく方針で進めている。
     ユーザーによって事業環境や価値観が異なるため、同じ販売・営業方法でそのすべてをカバーできるとは考えていない。各ユーザーに合わせた戦略が必要であり、マルチチャネルの活用もその一環ととらえている。

    永田裕介社長

    ーー自動車アフターマーケットに向け製品展開について

     国内市場では、「ブレーキパーツクリーナー」と「アンダーボディーシール」(下回り防錆剤)が2本柱として事業を支えている。ここにもう一つの柱を加えたいと考えており、整備工場がカーオーナーに販売できるサービス、利益につなげられる商材の開発に取り組んでいるところだ。
     その一つに、エバポレーター洗浄システムがある。抗菌・除菌・洗浄技術は、もともとウルトが強みを持つ領域。さらに同システムでは液剤塗布用のガンにモニターを搭載しており、施行個所を確認しながら作業することが可能で、静止画や動画として保存すれば洗浄効果をカーオーナーへ説明する際にも活用できる。同システムは、工場における収益モデルと併せて今年から積極的に提案しており、多くの問い合わせをいただいている。
     また、我々は事業を展開するにあたり、PSHEというキーワードを掲げている。これは、生産性(Productivity)、安全性(Safety)、健康(Health care)、環境(Environment)の頭文字をつなげたもので、ユーザーの生産性、安全性、健康性、そして環境に貢献する商材を取り扱うという姿勢を表している。
     先ほど例に挙げたエバポレーター洗浄システムも、PSHEの考え方に合致した製品で、このように今後の製品開発においては、PSHEにユーザー収益への貢献という視点をかけ合わせて進めていく。これら取り組みが、ウルトブランドの浸透につながると考えている。

    自動車アフターマーケット向け製品ラインアップ。手前側のエバポレーター洗浄用スプレーガンは、手元のモニターで洗浄部位の確認が可能

    ーー新型コロナウイルスの影響及び対応は

     営業活動においては、ユーザーから訪問を断られるケースが発生している。しかしながら、ユーザーとの接点を維持することは非常に重要だと考えており、営業活動のサポートを目的とした電話セールス部門を新たに設置した。コロナ禍において、社員を取り巻く環境は非常に大きく変化している。引き続き、社員の安全確保を第一に、製品の安定供給を維持すべく努めていく。
     一方、先ほど申し上げたPSHEの考えに基づき、製品面でも対応を進めている。
     新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ヘルスケアや安全性に対する社会的関心が高まっており、この傾向は今後しばらく続くと見られる。整備工場においても、カーオーナーからそれらに対応したサービスを求められるケースが増えるだろう。これは、整備工場にとってはビジネスチャンスとなる。我々がカーオーナーの要求に応えられる製品やソリューションを届けることで、整備工場はカーオーナーに新たな価値を提供できるようになる。このような製品の開発・提供は、当社の社会的価値につながると考えている。

    ーー自動車技術の変化への対応は

     電動車の普及により、回生ブレーキを主体とする車両が増えている。摩擦ブレーキが装備されている以上、ブレーキパーツクリーナーの需要は残ると考えているが、その使用量は激減すると予測している。そのため、自動車技術の変化に呼応した製品の拡充を、積極的に進めていかなければならないと強く認識している。
     自動車がいかに変化しても、車内環境の快適性は求められる。カーエアコンは快適性向上に大きく寄与する装置であり、その整備に関連した商材は強化していく。また、居住環境を快適にする製品は自動車アフターマーケット以外でも需要があるため、業界を問わず積極的に提案していきたい。

    ウルトジャパン株式会社:https://eshop.wuerth.co.jp/ja/JP/JPY/

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