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OBD検査の2024年10月開始で実際の車検業務はどうなる? そして海外では?【IAAE2021セミナーレポート08:自動車技術総合機構】
指定整備工場では法定スキャンツール、機構および軽検協の検査場では検査用タブレットとVCIを使用。検査システムの構築は国際標準化を視野に予定通り進行へ
2021/05/09
3月17~19日にオンラインで開催された自動車アフターマーケットの総合展示会「IAAE2021 ONLINE Vol.1」で、総計43本が無料公開されたセミナー。
「自動車検査の現状と今後の取り組み」には、自動車技術総合機構(以下、機構)の猪股博之審議役が登壇。
2021年10月以降(輸入車は2022年10月以降)の新型乗用車・バス・トラックを対象として、2024年10月(輸入車は2025年10月)から開始予定となっている、「OBD検査」(OBD車検)の作業の流れについて、2019年度に実施した実証実験の内容も踏まえながら講演した。
自動車技術総合機構の猪股博之氏
OBD検査では、自動車メーカーから提供される故障コード読み出しに必要な技術情報や、「特定DTC」と呼ばれる保安基準不適合の故障コードを、機構が一元管理し、全国の車検場および整備工場に提供。指定整備工場が車検を行う際、OBD検査専用アプリをインストールした「法定スキャンツール」で特定DTCを車両から読み出し、機構のサーバーへ送信すると、同サーバーから合否判定の結果が戻される、というのが大まかな流れとなっている。
指定整備工場におけるOBD検査の流れ
なお、機構および軽自動車検査協会の検査場でOBD検査を行う際には、法定スキャンツールの代わりに検査用タブレットを用い、さらに「VCI」(Vehicle Communication Interface)と呼ばれる通信機器を車両のOBDポートに接続することが想定されている。
2019年度に行われた機構検査場におけるOBD検査の作業詳細(前半)
2019年度に実施された実証実験における、機構検査場でのOBD検査の流れは以下の通り。
1.タブレット画面右下の車両受付ボタンを押して検査を開始。
2.車検証のQRコード2および3から車両情報を読み取る。
3.タブレット画面に車台番号、登録番号、燃料、機構サーバーによるOBD検査対象判定結果が表示される。
4.OBD検査の対象車両だった場合、VCIのQRコードを読み取る。
5.VCIを車両のOBDポートに接続する。
6.タブレット画面右上のVCIボタンを押すと、VCIとの接続が確立され、検査開始ボタンに変わる。
7.検査開始ボタンを押すと、ボタンが「検査中」になり、ECU情報を使って車両からDCT情報を取得。それを機構サーバーに送り、特定DTCかどうかを判定する。その間の試験の進捗はボタン左側に表示される。
8.機構サーバーが車両から入手したDCTの中に特定DTCが含まれていなければ、保安基準に適合しているとして、OBD検査合格と判定され、その結果が表示される。含まれている場合は保安基準不適合としてOBD検査不合格と判定され、結果ボタンを押すと検出された特定DTCが表示される。
2019年度に行われた機構検査場におけるOBD検査の作業詳細(後半)
機構は今後、「2024年10月のOBD検査開始までの間に、内部での実証実験や、関係者との連携によるプレテストを実施。2023年10月にはプレ運用を行い、システム上のバグを発見しつつ、運用面の課題を抽出・解決する」計画となっている。
一方、海外においても、「欧州では電子装置の検査を推奨するEU指令が出ており、それに基づきいくつかの国ではOBD検査の段階的な導入を試みている。また米国では排ガス検査にOBDを活用しており、韓国や中国でもEVの普及を念頭にOBD検査を促進させる動きがある」という。
こうした動向を踏まえ、猪股氏は「OBD検査基準の国際調和が今後、国連において検討が進む可能性がある。その時、前述のOBD検査が国際的にも先進的な取り組みであることから、日本が先導役となる。その点からも、機構はこのスケジュールに沿って、着実に実証実験などを行いながら、知見を積み上げていく必要がある」と、OBD検査を2024年10月に着実に開始する重要性を強調して、講演を締めくくった。
(文=遠藤正賢/写真=IAAE運営事務局/図=自動車技術総合機構)
OBD検査実施に向けた今後のスケジュール
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