JOURNAL 

見積りグランプリ2025入賞者インタビュー 第3位 高橋 豊

東洋ボデー(山口県周南市)

  • #イベント

2025/10/17

交換と修理の境目を見極め精度の高い判断を下す

車体の損傷画像を一見しただけでは、損傷被害がそこまで大きくないと感じた。しかし、損傷状況の写真とヒントの“左右フロントサイドメンバーに損傷あり”という文言から、衝突時の応力を想定し、左側への波及を考慮した。加えて、ボンネットのヒンジ損傷や右フロントフェンダーの傷とドア方向への後退が視認できたため、外見以上に損傷が広いと予想して見積りを開始した。その際は、部品コード順ではなく作業ごとに記載し見やすい見積書を心掛けた。

計上で注意したのは、損傷波及による修理と交換の判断。ラジエーターサポートは損傷の程度を写真から判断して交換とし、指数範囲内に左フロントサイドメンバーが含まれているため、左フロントサイドメンバーコネクターAssy取替を忘れずに計上した。また、ラジエーターサポートに付くフロントディスタンスセンサーへの直接の損傷は判断が難しかったが交換。ラジエーターシュラウドにも損傷が波及していると考え、同様に交換とした。

修理では、左右フロントサイドメンバー及び右フロントドアだけでなく、右フロントストラットハウジングを項目に挙げた。フードレッジ、リインホースメントは修理とし、右フロントフェンダーロアブラケットは交換した。

エイミング作業は、運転支援システム再設定・調整基本作業で0.2、大型SST準備作業で0.1、スキャンツール接続作業で0.3を計上。レーダーセンサー調整作業は、指数通りの0.6とした。

塗装は、交換したフードや右フロントフェンダー、修理した右フロントドアを計上。インナー別の内板調色として0.5や、ヒンジ及びフロントバンパーリインホースメントの塗装費用も漏れのないよう努めた。

高橋 豊(経験年数10年)

車両全体を俯瞰的に見る現場経験を基に正確な見積りを

現役の鈑金技術者として25年以上培ってきた経験を活かし、損傷部位だけでなく車全体を俯瞰的に見ることで、より適正な見積書を作成している。現場作業や見積り時以外の日常生活でも、視界内で細部と全体を意識することで微細な違和感である”気づき”を感じ取れるよう心掛けている。このようにアンテナを常に張ることで、入庫車の損傷状態を正確に判断する感覚を養う。

また、山口県車協やJA共済が開催する技術研修や見積り研修へ積極的に参加している。指数の設定のない項目についても、しっかりとした根拠を持って計上できるよう、さらに研鑽を積みたい。ASVが普及する中で、今後も顧客が安心・安全に愛車に乗っていただけるよう、鈑金現場と見積りの両方から質の高いサービスを提供し続けていく。

関係者コメント

現在、フロントスタッフを含む見積りチームのリーダーも務めているが、見積りだけでなく、担当の鈑金部門でもていねいかつ迅速な作業で修理に取り組んでおり、絶大な信頼を寄せている。

また、令和元年に出場した第44 回全国フロントマン選抜技術競技会(JA共済自動車指定工場協力会主催)では優秀賞に選ばれるなど、実績も申し分ない。

当社では、各部門は分業制で入庫を処理しているが、本人からは来期以降に「塗装技術や一級自動車整備士の国家資格を習得したい」という意向も聞いている。本人の業務負荷も考慮しながら、資格や技術の習得も全面的に支援していきたい。

石井 哲也 社長