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【ウインターテスト】三菱ランサーエボリューションX 対 トヨタGRヤリス 雪上で激突する、AWDアイコン対決
旧世代か、新世代か。エボか、“エボ2.0”か。2台のラリーマシンが、次なる“スノーキング”の座を懸けて火花を散らす。
2026/04/30

GRヤリスの対抗馬は何か?
正直に言おう。今、このクルマに真正面から挑める存在はほとんどない。速さやラップタイムの話ではない。量産コンパクトの皮を被りながら、まるで改造ラリーカーのような狂気じみた成り立ち。優れた四輪駆動と、魔法のように痛快な直3ターボ。GRヤリスは、この数十年で最も偉大なスモールカーのひとつだ。純粋に「走る楽しさ」のために生まれ、WRCマシンのベース車として仕立てられた一台である。
かつて、それと同じ立ち位置にいたクルマがある。そう、ランサーエボリューションだ。「待てよ、それだ!」トヨタにぶつける相手は、伝説のエボしかない。
真っ先に浮かんだ番号に電話をかける。受話器の向こうから聞こえたのは、バイエルン訛りの低い声。
「こんにちは(Servus)、ヘルマン ガスナーです」
エボを一台貸してもらえないか?
「喜んで。いつ取りに来る?」

日曜午後、アイニリングのガスナー モータースポーツに立つ。門が開くと、そこにはエボの群れ。V、VI、VII、そしてX。すべて本物のラリーカーだ。
「君のクルマはあそこだよ。RSを仕上げたばかり。エアコンなし、ヒーターなし、ラジオなし。軽量仕様。完璧だろ?」
待ってました!凍えようが歌おうが、願ってもない。
レカロのバケットに身体を沈め、キーをひねる。あの独特の始動音。295psの直4ターボが吠える。冷え切ったトランスミッションは渋く、シフトは節度を超えて“機械的”。デフはうなり、きしみ、戦歴を語る。ここ数か月で最高の5時間を走り切り、満面の笑みでリヴィーニョに到着。トヨタもすでに待機していた。
技術比較:雪を溶かす前に
エボは10年以上前から高度なAWDを備えていた。後輪左右に70:30〜30:70でトルク配分を行うアクティブトルクベクタリング、アクティブセンターデフ、アクティブヨーコントロール、スポーツABS、ASC―当時としては極めて先進的なパッケージだ。対するGRヤリスは可変式GR-FOURを搭載。前後にトルセンLSDを備え、280ps/390Nmを四輪へ送り込む。両車とも固定式サスペンションに18インチホイール。ガスナーのエボは245/40 R18のノキアンWRスノープルーフPを装着し、ラリー由来の本気度を示す。一方ヤリスはコンチネンタル ウィンターコンタクト。タイヤ差が勝敗に影響するかは、走れば分かる。
氷雪の上での容赦なき前進力
クラシックカーの旅は始まる。最初の一周で、もうクルマと一体になる。仕組みが身体に入る。
ランエボの直4は2500rpm以下では眠い。ターボラグもまた個性だ。だからこそアクセルは踏み抜き、ギアは荒々しく叩き込む。ホイールハウスで氷が跳ね、バックミラーには雪煙。ターンインでオーバーステアが立ち上がり、必要とあらば強烈な四駆トラクションが前へと引き戻す。時にサイドブレーキで姿勢を整える。
ランエボはGRヤリスよりも繊細な操作を求める。ドリフトは自発的に深追いするというより、直進性へと収束しようとする傾向がある。それでもトラクションは圧倒的。四輪駆動の効率という点では、いまなおダントツだ。
一方のGRヤリスは明らかに現代的だ。だがメカニカルな感触も色濃い。直3ターボは低回転域から鋭く応答し、MTもハードに扱える。ブレーキングでの姿勢づくりはより正確で、コーナーでは遊び心をもってリアを振り出せる。これぞ現代ラリー流儀。グラベルモード(53:47)も試したが、よりリア寄りのトラックモード(30:70)のほうが速く、そして楽しかった。
最終的なタイムは、僅差でエボが上回る。だが差は紙一重だ。

三菱ランサーエボリューションX:王は健在
エボのハンドリングは、時代を超えて魅力を失わない。軽やかで、鋭く、そして正確に雪上を刻む。四輪駆動の理想形がここにある。王者は、いまだ王者だ。
トヨタGRヤリス:正統な後継者
現代のエボは、オリジナルに限りなく近い。短いホイールベースが俊敏さを際立たせる一方で、やや神経質な側面もある。それでもハンドリングとドライビングプレジャーは確実に両立している。
世代は違えど、魂は同じ。雪上ラリーの王座は、いまも熱く、そして純粋だ。
Text: Guido Naumann
Photo: Almuth Heene
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