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いけぺろ社長こと池田陽花氏、「若者は給料しか見てない」は間違いだった ― 3,000人の学生が給料より重視していた、たった一つの項目を公開

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2026/05/13

 整備士の雇用支援を行う会社を経営する、いけぺろ社長こと、池田陽花氏が、自身のnoteで、「若者は給料しか見てない」は間違いだった ― 3,000人の学生が給料より重視していた、たった一つの項目という記事を公開した。


https://note.com/ikepero/n/na03473963d11?sub_rt=share_pw


 この記事は、自動車整備業界の採用活動において、経営者の多くが「結局、給料を上げるしかない」と考え、資本力で勝る大手ディーラーとの競争の中で、「給与で劣るうちは採用できない」という諦めを抱いている。この通説に対し、株式会社Dilectaが全国の整備系学校の学生約5,000名を対象に実施した「第2回 整備士学生意識調査」(2025年4月実施、有効回答3,099名)が、この長年の思い込みが間違いであったというデータを示した。調査結果は、学生が就職先を選ぶ際に給与以上に重視する項目があることを明らかにし、業界の採用戦略に新たな視点を提供している。


データが示す「1位」は給料ではなかった


 調査結果は、多くの経営者の肌感覚を覆すものだった。就職先を決める際に重視する項目を19項目で5段階評価させたところ、最も高い平均スコアを獲得したのは「給与・報酬の良さ」ではなかった。トップに立ったのは「人間関係・チームワーク」であり、その差は僅かながらも明確な順位となって現れた。


1. 人間関係・チームワーク: 4.13

2. 給与・報酬の良さ: 4.08

3. 福利厚生: 4.08

4. 会社の安定性・将来性: 4.06

5. 労働条件(勤務時間・休暇): 4.05


 さらに、「5点満点(=重要)」と評価した学生の数を見ると、この傾向はより鮮明になる。「人間関係」を最重要視した学生は1,395名(47.5%)に上り、「給与」の1,357名(45.8%)を38名上回った。これは誤差ではなく、学生たちが「給料」よりも「誰と働くか」を強く意識している事実を示すデータである。もちろん給与が重要でないわけではないが、「若者は給料しか見ていない」という前提で採用戦略を組むことが、機会損失につながる可能性を示している。


3年生になると、さらに「人」を見始める


 もう一つ注目すべきは、学年別のデータである。「人間関係・チームワーク」の重視度は、3年生で急上昇する。1年生(4.11)、2年生(4.08)に対し、3年生のスコアは4.29に達し、「5点満点」と回答した割合も52.3%にまで跳ね上がる。回答者数が470名であることから、これは少数サンプルの偶然ではない。


 この背景には、学生の環境変化がある。二級整備課程を終え、一級整備や板金塗装課へ進級する3年生は、先に就職した同級生から現場のリアルな話を聞く機会が増える。それまで技術やクルマへの憧れが先行していた学生が、現実の職場を目の当たりにし、「ここで毎日働く」という実感を持つようになる。その時、学生が真剣に見るのは、最新設備や給与額以上に、工場で働く人々の関係性なのである。


学生は「職人気質」を警戒している


 では、学生は整備業界の「人」にどのようなイメージを抱いているのか。業界に対するネガティブイメージを尋ねた設問では、「職人気質で、話しかけづらい雰囲気がある」が23.0%(713名)と、体力面や汚れに次ぐ4番目の項目として挙げられた。約4人に1人の学生が、入社前から「話しかけづらい先輩」の存在を警戒しているのだ。


 池田氏自身も元整備士としての経験から、この「背中で教える」文化が、業界が長年かけて自ら作り上げ、採用の間口を狭めてきた「遺産」だと指摘する。学生たちはその空気を敏感に感じ取り、身構えている。そして、その警戒心は、わずか30分の工場見学で確信に変わるか、あるいは覆されるかが決まるという。


明日からできる3つの施策


 この調査結果を踏まえ、池田氏は大がかりな制度改革ではなく、明日からでも実践可能な3つの具体的なアクションを提案している。


 第一に、求人票の「雰囲気」欄の改革だ。「アットホームな職場」といった抽象表現を避け、「毎週金曜の朝礼後、先輩社員が若手に今週困ったことを聞く15分がある」など、固有名詞と具体的な行動を伴うエピソードを記述する。これにより、情報の信頼性が格段に増す。


 第二に、工場見学の案内役を入社3年目前後の若手に任せることである。経営者や工場長ではなく、年齢の近い先輩が自らの失敗談や成長を語ることで、学生は「3年後の自分」をリアルに想像できる。人間関係への関心が高まる3年生に対し、これは特に有効な施策となる。


 第三に、SNSでの発信内容の見直しだ。整備中の車両や最新設備の写真に偏りがちな発信を、休憩室での雑談風景や新人の誕生日を祝う様子など、「人の関わり」に焦点を当てたコンテンツにシフトさせる。学生が最も警戒している人間関係の不安に直接アプローチすることで、他社との明確な差別化が可能となる。


 これらの施策は、3,099名のデータに基づいた、学生の心理に寄り添う合理的な戦略である。給与水準で大手に勝てなくとも、「人」という資産をいかに可視化し、学生の不安を安心に変えていくか。そこに、これからの自動車整備業界の採用活動の勝機が眠っている。