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海外情勢から読み解く整備業界の未来と、10年後の未来予想

~国土交通省の第3回「自動運転社会実現本部」開催にともなって~

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2026/06/05

 6月4日、国土交通省より自動運転の早期社会実装に向けた「第3回 国土交通省自動運転社会実現本部」の開催が発表された。この内容を踏まえ、アメリカ、中国、欧州の情勢を比較しながら、自動運転時代での自動車整備業界に求められる新たな点検基準や特定整備について考えてみたい。


6月4日発表の第3回「自動運転社会実現本部」とは?

 「自動運転社会実現本部」とは、国土交通省が中心となり自動運転車の普及に向けた取り組みの方向性や進め方を検討するための会議。将来的にレベル4などの自動運転車が一般道を走る社会を見据え、法律やインフラ整備が国主導で急ピッチに進められている。第3回会議は6月8日に開催される予定である。


 今回の発表では、会議の開催に先立ち金子恭之国土交通大臣(同本部本部長)が自ら自動運転車両を視察すると記されていた。視察予定となっている具体的な車両と実証・導入エリアなどを以下に整理した。表からも、路線バス、ロボタクシー、空港内の物流車両など多種多様なモビリティにおいて自動運転の社会実装に向けて動き出そうという姿勢が覗える。


事業者・協業企業

車両の概要、採用車種

実証・導入エリアの状況

神奈川中央交通

いすゞ
「エルガ EV 自動運転バス」

神奈川県平塚市
日産自動車(既存バス路線の代替を見据えた実証運行)

NEXCO中日本

自動運転除雪車

高速道路など
(除雪作業における梯団走行の自動運転化を目指す)

日産自動車

ロボタクシー
(日産リーフをベースにUberなどと協業)

東京都内
(2026年後半に試験運行開始を目指す)

日本交通・GO・Waymo

Waymoの自動運転システム搭載車

東京都内7区
(公道での走行実証実験)

JAL(日本航空)

自動運転トーイングトラクター

成田空港
(手荷物や貨物の無人搬送車として運用)

世界はどう動いている?海外における自動運転の実装情勢

 日本の動きを理解するには、世界のトレンドを把握することも必要。なぜなら自動車の安全基準や通信規格は、国際的なルール(国連協定規則など)に足並みをそろえる形で日本でも法制化される可能性が高いからだ。以下に比較表を作ってみた。


国・地域

自動運転社会へのアプローチ

レベル4普及状況・特徴

整備・点検に関する動向

アメリカ

州ごとの法整備と企業主導

一部州(カリフォルニアやテキサスなど)ではロボタクシーがすでに商用化

連邦政府の安全基準(FMVSS)の見直しや、リコール時のソフトウェア改修が焦点

中 国

国策としてのスマートシティ連携

特定エリアでの無人テスト走行が急拡大。インフラ整備とセットで進行

車両とインフラの通信(V2X)が前提となるため、通信機器の点検が必須要件へ

欧 州 (EU)

厳格な国際基準(国連協定規則)の策定

型式指定制度に基づく。安全性やサイバーセキュリティに対する基準作りを主導

ソフトウェアアップデート(OTA)やセキュリティに対する厳格な国際点検ルールの発信地

 国際基準がすでに策定されており、それに伴い国内でも保安基準等の改定が行われている。今後、このグローバルスタンダードに準拠する形で、車検制度などについてもさらに改定されていくだろう。

整備業界に迫る‟レベル4時代”の影響と対策

 国内外の動向を踏まえ、日本の自動車整備業界には具体的にどのような影響があるのかを挙げたい。


1. 新たな点検基準とサイバーセキュリティへのさらなる対応

 自動運転車は、カメラやレーダー、LiDARなどの精密な電子部品とAIシステムで構成されている。エンジンオイルの汚れといった物理的な点検に加えて、センサー機能やソフトウェアのバージョン管理といった、IT機器としての点検基準が不可欠になる。診断機を車に繋ぎ、エラーコードを読み取るだけでなく、システムが最新かつ安全な状態かを担保する「OBD(車載式故障診断装置)車検」の高度化が求められる。

2. 「特定整備」の重要性拡大

 現在でも自動車の電子制御化に伴い、カメラやレーダーの調整(エイミング)を行うには国から特定整備事業(電子制御装置整備)の認証を受ける必要がある。現状の制度において、整備対象となる装置は自動ブレーキなどの「運行補助装置」と、レベル3の自動運転システム等に搭載される「自動運行装置」の2種類が設けられている。今後レベル4の自動運転社会が本格化すれば、これら自動運行装置に関連する特定整備の対象範囲や重要性はさらに拡大し、より精密な調整作業が求められるようになる。そのため、高度な電子制御装置の整備ができる設備と人材を持たない整備工場は、将来的に対応できる車両が激減するリスクを負うこととなる。

【未来予測】2036年サイバーセキュリティ車検(仮)はここまで進化する、、かも

 現在始まりつつあるOBD車検はあくまで変革の‟第一歩”。ここから10年先、自動運転が当たり前となり「レベル5(完全自動運転)」となっているかもしれない2030年代半ばには、車の点検・整備の概念そのものが根本から覆っているだろう。


1. OTAの進化、「車検場に持ち込む」概念の消失とフルリモート診断

 ソフトウェアの更新(OTA)はさらに高度化し車は走行しながら常にクラウド上のAIと通信を行い、自らの健康状態を自己診断するようになる。これにより、車検の現場でスキャンツールを繋いでバージョンを確認するという物理的な作業すら不要になり忘れ去られる可能性が高い。車両が自ら国やメーカーのサーバーへ「保安基準を満たしているか」のデータを24時間365日リアルタイムで送信し続けるため、車両の状態を確認することを目的として定期的に工場へ入庫する機会は消滅し、「常時モニタリング(動的車検)」へと移行するだろう(消滅と書いたが、まったくなくなることはないだろうが……)。整備工場に求められるのは、クラウドAIが「物理的な摩耗(タイヤや足回りの劣化など)」を検知した際、ピンポイントで部品交換を行うオンデマンドな対応力となる。


2. ハッキング対策の自律化、AI対AIの攻防とブロックチェーン管理

 将来、車そのものが巨大なデータサーバーとなるため、サイバー攻撃の手口も凶悪化する。これに対抗するため、自動車には“車載AIによる自律型のセキュリティ免疫システム”が搭載される。車両へのアクセス履歴や部品の交換履歴はすべて改ざん不可能なブロックチェーン技術で記録されるようになる。技術者が修理を行う際も、単にログを見るだけでなく、「汚染されたセキュリティチップを物理的に交換し、ブロックチェーン上の認証キーを再発行する」といった、パソコンの高度な復旧作業と同等のスキルが求められるようになる。工場では、メーカー直結の「車両セキュリティ監視センター(V-SOC)」と常時連携しながら作業を行うことになるだろう。


3. 整備工場の要件:国家資格「サイバー整備士」の誕生と生体認証

 工場へのサイバー攻撃リスクが極大化する未来では、「ITコンプライアンス」の要求は現在の比ではなくなる。最新の自動運転車のシステムにアクセスするためには、整備工場自体のネットワークが最高レベルの国際セキュリティ規格(ISO/SAE 21434など)をクリアしていることが法的義務となる。さらに、作業を行う個人にも「サイバーセキュリティ整備士」のような新たな国家資格が必須となり、作業用端末に指紋や網膜などの「生体認証」を行わなければ、車のボンネットを開けることすら(電子ロックが解除されず)できなくなるだろう。セキュリティ投資ができない工場は、文字通り「車に触れることすら許されない」時代となる。無理やり鈑金作業でパネルを叩いたり削ると、サイレンが鳴り響いてお縄なんてことも……

 第3回「自動運転社会実現本部」の開催や海外での実用化の波からは自動運転の普及が現実のものとなりうる予感を感じる。高速道路の拡張整備などまだまだ課題は問題は山積みではあろうが……。まずは自社の整備工場が特定整備にどこまで対応できているか、そして事務所のパソコンやネットワーク環境が安全に保たれているかを見直すことから始めてみてはいかがだろうか。