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【業界動向・韓国】韓国政府がEV保険について新ガイドラインを本格施行、鈑金塗装・バッテリー修理代高騰の影響

制度変更がもたらす韓国市場への影響と、修理現場の技術者が直面する壁について

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2026/06/30

 韓国において、2026年6月末に予定されているEV向け補助金制度の改定に合わせ「EV火災安全保険」に関する新たなガイドラインが本格施行される。地下駐車場などでのEVが原因となった火災事故が社会問題化したことを背景に、韓国政府は補助金交付の条件としてバッテリーの安全性証明及び指定保険への加入を厳格化する方針を打ち出した。



補助金制度とリンクする「EV火災安全保険」の義務化

 韓国国土交通部及び環境部が推進する2026年の新制度では、EVバッテリー履歴管理システムの導入と連動し、火災リスクに特化した保険への加入が実質的に義務化(補助金受給の要件に入る)される。

 これまでEV自動車保険は、エンジン車と比較して保険料が割高に設定される傾向にあった。韓国金融監督院の2023年度統計によれば、EVの平均修理費は内燃機関車を約30%上回っており、部品代に限れば約50%増という数値がある。今回のガイドライン施行は、消費者保護と火災時の被害補償を担保する目的がある一方で、保険会社に対しては厳密なリスク査定を要求している。結果、各保険会社は損害率を適正に保つため、バッテリー起因の修理リスクを保険料へ反映せざるを得ない状況となっている。



軽微な鈑金修理が全損を招く

 EV保険の保険料引き上げと修理代高騰の主要因には、「バッテリーパックの損傷基準の厳格さ」と「鈑金塗装作業での熱リスク」がある。たとえば、サイドシル(ドア下の骨格部)やフロアパネルへの軽微な損傷の場合、エンジン車であれば引き出しツールや溶接機で鈑金修理が完了する。しかしフロア下に巨大な高電圧バッテリーを搭載するEVでは、修理工程が異なる。


・熱影響の排除

 溶接作業に伴う熱や塗装ブースでの乾燥による熱は、リチウムイオンなどの高電圧バッテリーが熱暴走を引き起こすリスクがある。そのため、多くのカーメーカーの修理マニュアルでは、特定温度以上の環境下や特定部位の溶接を行う際、バッテリーパックの完全な車両からの取り外しを必須としている。

・脱着作業工数と設備要件

 バッテリー脱着には、高電圧回路を遮断する手順、冷却水の抜き替え、重量ユニットを安全に降ろすための専用リフトが必要となる。これには絶縁防具を装備した専門資格を持つ技術者が必要であり、単純な鈑金作業の前にも工数が発生する。

・バッテリーケースの交換基準

 事故の衝撃でバッテリーケースにわずかでも凹みや傷が確認された場合、内部セルへの影響が保証できないため、カーメーカーはAssy交換を指示するケースが大半である。


 これによりパネル修理費がそれほど高くなかったとしても、高額なバッテリー交換費用と脱着工数が加算された結果、車両の時価額を上回り“経済的全損”と判定し買い換えが頻発している。
 また、EV入庫に対応する工場には、万が一のバッテリー発火に備えた防火ブランケットの常備、他の入庫車両から一定の距離に隔離保管スペースの確保が求められる。またバッテリーを再搭載した後には、ADASのエイミング作業が必須となる場合がある。



日本市場はどうか

「電池の安全性」が問われる新基準

 日本では、韓国のように法的な「保険加入の直接的義務化」、「バッテリー主要成分の公開義務」などは施行されていない。しかし、2024~2025年度のカーメーカーへのCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金制度の見直しにおいて、車両の基本性能や充電インフラの整備状況に加え、電池の安全性やサイバーセキュリティー対応、さらには整備人材の育成・確保といったアフターサービス体制の評価項目が新たに追加・強化されている。
 韓国におけるEV火災安全保険の義務化のような直接的な指定制度こそ日本にはないが、「安全で確実なバッテリー管理と整備体制を持たないメーカーの車両は、補助金要件で不利になる」という形での統制はすでに機能し始めている。



保険料への転嫁

 日本の自動車保険(任意保険)でも、EV特有のリスクに対する保険料の算定は進行している。国内損保の保険料算定ベースにおいても、EVの修理単価はガソリン車をほぼ上回る。普及初期こそ「エコカー割引」などの優遇措置で保険料が抑えられていたが、事故データの蓄積に伴い、一部のEV車種では高額な修理費(車両価格に占めるバッテリーのコスト割合が高いことも要因の一つ)が損害率を押し上げ、車両保険の料率クラスが引き上げられる現象が起きている。



社会インフラとしてどのようにEVを扱うか

 日韓ともにこの現象は、カーメーカーと保険を含むアフターマーケットの間で、適切なリスクとコストの分担がなされていないことに原因がある。軽微な損傷にもかかわらず高額な交換を余儀なくされる構造に対し、一部のカーメーカーはバッテリーをモジュール単位で交換・修理できる設計への見直しを急いでおり、また損保会社やリサイクル企業は安全性が確認できた中古・リビルトバッテリーを用いた修理スキームの構築を模索している。
 「EVは環境に良いか」という議論はすでに通り越し、「社会インフラとして適正な維持コストで運用できるか」という現実的なフェーズへと移行している。