JOURNAL 最新ニュース
日本ペイント、自動車補修の次世代VRトレーニングツール「nax VRP-X」を発表
深刻化する人手不足と技術継承の課題を「測る」、「改善する」教育モデルで支援
2026/10/30
自動車整備業界の人材不足解消へ、新ツール受注開始
日本ペイントは2026年10月27日、自動車補修塗装の人材育成を支援するVRトレーニングツール「nax VRP-X(ナックス ブイアールピーエックス)」を発表した。同製品は同年10月末より受注を開始する。
国土交通省は、自動車整備分野において2029年までに約2万8,000人の人材不足が生じると推計(自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針[令和6年3月29日一部改正])している。同社はこのような課題の解決に向け、未経験者の早期育成と現場の教育負担軽減を目指して同ツールを開発。塗装技術の習得に不可欠な基礎練習や反復練習をVR空間で実現し、人材獲得難と育成に悩む自動車補修業界に新たなソリューションを提案した。
「感覚」を「数値」に。職人技を可視化する「nax VRP-X」の実力
「nax VRP-X」は、実際の塗料や塗装設備を使わずに、VR空間内で繰り返し塗装トレーニングができるシステム。フロントフェンダー、フロントドア、リヤドアに対して、「塗る」、「見る」、「判断する」の一連の作業をVR空間で再現しており、塗装後に隠蔽状態を確認して塗り直す過程まで練習することができる。
塗装作業では、パネル単体だけではなく、車両に複数パネルを組み付けた状態でも作業が可能。新品パネルと補修パネルを選択することができ、裏面や端部などの確認・塗装にも対応する。
スプレーガンの距離、角度、速度、塗り重ね幅、軌跡などの操作データや、VR空間での膜厚、隠蔽、タレ、ムラといった塗膜の状態を確認・採点する機能を搭載。従来は感覚的に伝えられることが多かった熟練技術者の塗装動作やノウハウをデジタルデータ化し、「どこが違うか」、「次に何を直すか」をその場で示すことで、次世代への技能継承を支援するツールとなる。
VR デバイスと、VR コントローラーを使用し、VR 空間で塗装トレーニングを行う
スプレーガンの距離・角度・速度・塗り重ね幅・軌 跡などの操作データを採点する機能を搭載
熟練技術者の塗装動作やノウハウをデジタルデータ 化し、バーチャル空間で再現することができる
「nax VRP-X」開発背景と目指す姿
10月27日に開催された記者発表会では、日本ペイント・マーケティング本部の野村誉之部長が、「nax VRP-X」の開発背景と今後のビジョンについて説明。自動車整備職種の有効求人倍率が5.45倍に達していること、事業者の未経験者受入体制完備率が50%を超えていること、そして自動車塗装技能者の平均年齢が50歳であるという3つのデータを示し、業界が深刻な人材不足と技術継承の急務に直面している現状を指摘した。
その上で、若手ペインターは「練習する時間がない」、「正解が分からない」、「失敗できない」、一方で指導者も「教える時間がない」、「技術を言語化できない」といった悩みを抱えており、従来のOJTだけでは教育が立ち行かない時代になっていると説明。そこで、「背中を見て覚える」という従来のスタイルから、客観データに基づいて「測る」、「改善する」という新たな教育サイクルへの転換を目指し、VRに着目したという。
VR空間への現場移植により、初心者が何度でも反復練習できる環境を提供するだけでなく、「nax VRP-X」の本質は「熟練職人のカンコツ(経験や勘)をデータ化してデジタル解析すること」にあると強調。塗装ガンの距離や角度、動かし方などを可視化・採点することで塗装技術を科学し、技術者の早期育成に挑戦する姿勢を見せた。
さらに野村氏は、技術継承や人材育成にとどまらず、水性塗料の導入促進や工場水回り改修の提案など「労働環境改善」も含めた包括的なソリューションを提供していくと力説。材料サプライヤーから、鈑金塗装業者のビジネスを多角的にサポートし、業界をより魅力的なものにしていくビジネスパートナーとして事業者を支援していく考えを示した。
「nax VRP-X」の開発背景と今後のビジョンを説明する日本ペイント・マーケティング本部 部長・野村誉之氏
現場の課題とVRへの期待
説明会後半には、ホンダモビリティ南関東 サービス事業企画課課長 板金集中管理センター所長の鈴木保氏、関東マツダ ネットワーク・サービス改革グループ グループ長の小倉道夫氏をゲストに迎えたトークセッションが行われた。
採用と育成の課題
両氏からは、若年層の減少に伴い、鈑金塗装部門の採用が難しくなっている現状が語られた。そのような環境下において、関東マツダでは海外からの技能実習生の受け入れを進めており、ホンダモビリティ南関東では社内向けの動画で鈑金塗装の仕事を紹介し、サービススタッフから鈑金塗装事業への異動を誘致するなど、各社の取り組みが紹介された。
また、育成面においては、若手にとっては技術習得までの期間の長さや、ベテラン層においては「技術の言語化」の難しさが課題として挙げられた。
VRトレーニングへの期待
「nax VRP-X」に対して、鈴木氏は「実際の仕事ではミスができないが、VRならあえてミスを体験させることができる。内製工場だけではなく、協力鈑金工場にもこのシステムを開放して、勉強できる機会を作りたいと考えている。また、実際の塗装と違いVRは短い時間で手軽に練習できるのも大きな強み」と将来的な活用に意欲をのぞかせた。小倉氏も「入社当時のマニュアルがなかった世代から若手への育成をつなぐツールとして、また、工場見学に来た学生に塗装を体験してもらう入り口としても期待している」と、同ツールの可能性を高く評価した。
ホンダモビリティ南関東・サービス事業企画課課長 板金集中管理センター所長の鈴木保氏は、「VRならあえてミスを体験させることができる」と、VRトレーニングに対する期待感を示した
関東マツダ・ネットワーク・サービス改革グループ グループ長の小倉道夫氏は「工場見学に来た学生に塗装を体験してもらう入り口としても期待している」と、気軽に塗装作業を体験できるVRツールは、採用面においてもメリットがあるとの考えを示した
トークセッションの様子。左から日本ペイント・マーケティング本部カテゴリーマーケティング部ブランドコミュニケーショングループ・柳谷典子マネージャー、同社・野村誉之氏、ホンダモビリティ南関東・鈴木保氏、関東マツダ・小倉道夫氏
記者発表会での「nax VRP-X」体験会の様子。奥のスクリーンには、体験者のVRゴーグル内の映像がリアルタイムで投影されている
一度に厚塗りをすると、タレが発生する
あなたにおすすめの記事
-
日本ペイント、自動車補修の次世代VRトレーニングツール「nax VRP-X」を発表
2026/10/30
-
「あ、終わったね。自動ブレーキ発動してる」高速道路でプリウスがトラックに直前割り込み、荷崩れなら賠償はどうなる?
2026/10/30
-
ENEOSホールディングス、NIPPOを完全子会社化 株式譲渡契約を締結
2026/10/30
-
【車業界版・今日は何の日】10月30日は「香りの記念日」!現場で使える顧客トークネタ
2026/10/30
-
DRPネットワーク、九州ブロック大会を開催
2026/10/29
-
【講習会ルポ】フジペックス、法規制対応についての講習会を開催(2026年10月8日)
2026/10/29