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損害保険ジャパン、来年1月から自動車保険料を引き上げ
適正な工賃確保に向けて、車体整備業界に求められる対応
2026/08/28
相次ぐ損保各社の自動車保険料引き上げ
損害保険ジャパンは、2027年1月に自動車保険料を平均5%程度引き上げる方針を固めた。これは、修理費の上昇などによる支払い保険金の増加を受けたもの。同社の2026年度の自動車保険のコンバインド・レシオ(損害率+事業費率)の見通しは100%を超えており、保険料の引き上げによって経営環境の改善を図る考え。同社はすでに2026年1月に平均7.5%、同年7月に約1.8%の引き上げを実施している。
なお、同社は今回の改定について、損害保険料率算出機構が今年6月に金融庁へ届け出た「自動車保険参考純率の改定(平均14.4%引き上げ)」とは無関係としており、同純率改定への対応については「反映の有無を含めて検討中」としている。
近年の物価高騰やそれに伴う修理費の上昇などを受けて、損害保険会社各社は自動車保険料金の引き上げを行っている。
東京海上日動火災は2025年10月に平均約8.5%引き上げており、2026年10月には平均約6.5%引き上げる。
あいおいニッセイ同和損害保険は2025年1月に約5%、2026年1月に約6%、三井住友海上火災保険は2025年1月に約7%、2026年1月に約7%、それぞれ引き上げている。また、2027年4月に両社が合併して誕生する三井住友海上あいおい損害保険は、同月に約6%の引き上げを予定している。
先述の損害保険料率算出機構による参考純率の引き上げ(平均14.4%)が6月30日に金融庁の適合性審査を終了したこともあり、今後も自動車保険料の上昇傾向は続くとみられる。
進まない「労務費の価格転嫁」と賃金水準の実態
保険料引き上げの主な要因として修理費の上昇が挙げられる一方、車体整備業界では修理料金への労務費の価格転嫁が進んでいないという深刻な課題を抱えている。公正取引委員会が2023年に実施した特別調査でも、自動車整備業が労務費の転嫁率が低い業種であることが明らかとなった。
厚生労働省が公表した「令和7年賃金構造基本統計調査」から年収を推計*すると、常用労働者10人以上の企業では全産業平均で5,455.6千円、自動車整備・修理従事者では5,038千円、常用労働者5~9人の企業では全産業平均で4,272.4千円、自動車整備・修理従事者で4,255.7千円と、いずれも自動車整備・修理従事者の方が低かった。
また、日本自動車整備振興会が発行する「自動車整備白書 令和7年度版」によると、整備工場においては従業員数が2~5人の企業が全体の半数を超えており、整備要員の平均年収は専業工場が3,957.2千円、兼業工場が4,203.8千円、ディーラーが5,351.2千円で、専業及び兼業工場では賃金構造基本統計調査から算出した常用労働者5~9人の自動車整備・修理従事者の年収を下回っていた。
*賃金構造基本統計調査からの年収の推計について:「賃金構造基本統計調査」では毎年6月分の賃金と、1年間の賞与及び期末手当等特別給与額を調査している。本稿では同調査結果で示された6月分の賃金における「きまって支給する現金給与額」を12倍し、「年間賞与その他特別給与額」を加えて年収を推計した。
賃金停滞が招く人材不足と「間接損害」の増加
労務費の価格転嫁が進まないことによる技術者の賃金停滞が、他業種との相対的な労働条件の悪化を生み、結果として就業希望者の減少と深刻な人材不足を招いている。
厚生労働省が運営する「職業情報提供サイト jog tag」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User)によると、2025年度の「自動車整備士」の有効求人倍率は5.46倍、「自動車板金塗装」は5.17倍で、全産業平均の1.20倍(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」)を大きく上回っていた。
また、損保料率機構が発行する「自動車保険の概況」によると、2024年度の任意自動車保険・対物賠償における修理費は、部品費、工賃、塗装費、間接損害、その他のいずれの費目も前年度比で上昇していたが、その中で最も上昇率が高かったのは代車料や休車損害などを含む「間接損害」で、その上昇率は10%に達していた。これは、修理期間の長期化が影響していると考えられ、自動車の高度化・多機能化による修理技術の高度化に加え、技術者不足による着工までの長期化も影響していると推察される。
整備白書によると、2024年度の認証工場廃業理由において「工員不足」が9.6%、「後継者難」が14.6%だった。このことからも、整備業界において人材不足が深刻な課題となっていることが分かる。
車両の高度化に伴う設備投資と価格交渉の必要性
さらに、自動車技術の高度化に対応する修理技術及び設備機器の確保も、車体整備業界の課題の一つである。先進安全技術が搭載された車両を修理した場合には、ホイールアライメントやボデーアライメントが適正な状態にあることを確認した上で、センサー類の校正が必要となる。各種作業には、ボデーアライメント計測器やホイールアライメントテスター、スキャンツール、ターゲットなどの設備機器に加え、各種アライメントの基準値や適切な作業方法に関する情報の入手が必要不可欠となる。これらの設備投資や情報の確保には、当然ながらコストが必要となる。
鈑金塗装工場の収益源は工賃であり、その工賃は作業時間と工賃単価を掛け合わせて算出される。また、事故車修理においては多くの場合、自動車保険が利用されるため、鈑金塗装工場と損害保険会社が直接交渉し、修理料金について協定することが一般的である。
適正な修理環境を維持し、物価上昇や社会的な賃金上昇に対応した労働環境を整えるためには、定期的な工賃の見直しと損害保険会社との価格交渉が求められる。昨今の物価高騰や労務費の価格転嫁が進んでいない業界課題を受けて、2025年3月には国土交通省が「車体整備事業者による適切な料金交渉を促進するための指針」を公表し、適正な価格交渉を後押ししている。
修理費用の透明性確保と社会的信頼の獲得へ
保険料金の値上がりの理由の一つとして、修理費の上昇が挙げられる中、車体整備事業者においては、業界として取り組む工賃見直しの背景と目的を把握し、その適正性とそれによる社会的貢献をカーオーナーなどに対して論理的に説明できるようにしておく必要がある。その上で、自社の適正な工賃単価を算出し、その明確な根拠をそろえ、修理費用の透明性を確保しておくことが重要となる。