JOURNAL 

見積りグランプリ2025入賞者インタビュー 第4位 鈴木 淳

幸栄自動車工業所(千葉県柏市)

  • #イベント

2025/10/17

慣れないメーカーの車種ながらもポイントを押さえ、増額の可能性にも配慮

今回の課題を見るなり、「まいったなあ」と思った。と言うのも、当社はホンダ車やスズキ車がメインで、日産車はほとんど扱っていないからだ。

今回のポイントとしては、運転席側のドアを上から写した写真があったと思うが、エンジンが5cmほど入り込んでいることから、サイドメンバーにもダメージが及んでいると推定し、見積りに加えた。そこから自ずとラジエーターコアアッパーサポート、ロアサポートともに気を配った。また、フードヒンジも曲がっていたため、エアクリーナーハウジングの取替も盛り込んだ。

前述のように日産車には不慣れなため車体構造のイメージも湧かず、慎重に必要な項目を計上していった。また、プロパイロットについても手探りながら運転支援システム再設定・調整指数は使用せずにエイミング費用やアラウンドビュー調整確認を忘れずに計上した。

鈴木 淳(経験年数20年)

普段から意識することは分かりやすさ

今回はもちろんだが、普段の見積り作成時に気をつけているのは、見積りに責任と気持ちを込めること。言葉は悪いかもしれないが、金額の高い、安いはどうでもよく、ちゃんと説明ができるかどうか、見やすい見積書になっているか、相手の目線を意識し、契約者にも金額が納得感をもって伝わるかが重要だ。

また、これは修理明細書(請求書)を渡す時の取り組みだが、作業した個所は必ず写真を残し、逆に、作業した個所でも写真が残せていないところについては料金を請求しないよう、全社的に徹底している。

当然、普段の見積りでも指数設定のない項目が含まれる場合がある。この場合、掛かったまたは掛かるであろう時間と難易度を基に、同種の作業から数値を参照している。

日々の研鑽として、見積り作成技術向上のために努めていることは、実際に入庫してくる車両が教材であり、そこからいかにフィードバックするかを意識している。

新型車が出るたびに、メインで扱うホンダ車の構造を学ぶ講習に参加しているが、最近の講習ではホワイトボデーの用意がなく、構造を理解するには内製工場からもらう資料が頼りだ。車両の高度化が進む中、新しく追加される作業のレーバーレートの設定交渉、またそれの価格転嫁のタイミングは難しい。柔軟に考えられる頭=若さが必要だと思う。

そんな若い技術者が報われる車体修理業界であってほしいと思う。分解整備同様に人の命に直結する仕事であり、車体整備士が同等に扱われることを切に願っている。

関係者コメント

実は見積りグランプリに応募したことを知らなくて、今回の取材があると聞いて応募したこと、しかも入賞したことをようやく知った。私は20 年前に経営を鈴木たちの代に任せて、オーナーの立場で接している。

今回入賞したと聞いて、生意気な言い方かもしれないが、当たり前のことだなと感じている。と言うのも普段から、過剰もなく逆に漏れもないスタンダードな、顧客のことを考えた見積書を作っている。だから、見積り以外も含めて変なことはしないと安心して見ているからだ。創業者である私の意図も充分理解した上で、まじめに取り組み、部下も育ってきている。このまま変わることなく、仕事も本大会も頑張れ!

大橋 勲(左)・好子