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本田技研工業、2026年3月期決算と四輪事業再構築のロードマップを発表

EV関連損失1兆5778億円計上で営業赤字4,143億円。2029年3月期に過去最高水準の営業利益1兆4,000億円以上への回復を目指す方針。

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2026/05/18

 本田技研工業(Honda)は、2026年3月期の連結業績実績、および四輪事業の再構築に向けた取り組みと今後の事業の方向性を発表した。

 当期の連結売上収益は前期比0.5%増の21兆7,966億10百万円となったものの、四輪電動化戦略の見直しに伴うEV関連損失を合計1兆5,778億円計上したことにより、営業利益は4,143億46百万円の損失となった。同社は今後3年間を四輪事業の再構築に集中的に取り組む期間とし、2029年3月期には過去最高水準となる営業利益1兆4,000億円以上への回復を目指す方針だ。


2026年3月期連結業績とEV関連損失の詳細

 2026年3月期の連結経営成績は、売上収益が21兆7,966億10百万円(前期比0.5%増)、営業利益が4,143億46百万円の損失(前期は1兆2,134億86百万円の利益)、税引前利益が4,033億円の損失(前期は1兆3,176億40百万円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期利益が4,239億41百万円の損失(前期は8,358億37百万円の利益)となった。

 業績に大きく影響したEV関連損失の合計は1兆5,778億円(営業利益で▲1兆4,536億円、持分利益で▲1,241億円)である。このうち、第3四半期累計で発生した米国での販売済みEVの損失引当や減損などが2,671億円、3月12日の電動化戦略変更に伴う北米生産予定EVモデルの上市および開発中止による追加の損失が1兆3,106億円となった。

 事業別の状況として、二輪事業はインドやブラジルを中心に台数を伸ばし、過去最高の販売台数・営業利益を達成した。四輪事業は、関税負担の増加や半導体供給不足などによる台数減の厳しい事業環境となったが、コストダウンへの取り組みなどによって、EV関連損失を除き黒字を維持した。将来投資の原資となるR&D調整後営業キャッシュ・フローは2兆6,579億円となり、キャッシュ創出力を維持している。また、2027年3月期の連結業績見通しについては、EV関連損失5,000億円を見込むものの、これを除く調整後営業利益は1兆円、EV関連損失を含む営業利益は5,000億円の黒字を見込んでいる。


四輪事業再構築に向けたロードマップと3本の柱

 同社は、足元の市場環境の変化を踏まえ、コスト体質の改善、開発効率の向上、重点地域への経営資源の集中投入による魅力ある商品の拡充を通じた競争力の向上を図る方針だ。そのために、まず今後3年間を四輪事業の再構築に集中的に取り組む期間とし、2029年3月期には二輪・金融事業の成長と合わせ、過去最高水準となる営業利益1兆4,000億円以上への回復を目指すとしている。

 四輪事業再構築に向けた取り組みは、「経営資源の戦略的再配分」、「ものづくり体質の徹底強化」、「外部リソースの戦略的活用」を軸とする。


 「経営資源の戦略的再配分」では、需要動向を見据えたパワートレーンポートフォリオの見直しを行う。開発・生産リソースを、足元の需要の高いハイブリッド車に再配分する方針だ。2027年からは、ハイブリッドシステムとプラットフォームを刷新した次世代ハイブリッドモデルの投入を開始する。注力地域の一つである北米を中心に、2029年度までにグローバルで15モデルを投入する計画で、さらに北米では、2029年にDセグメント以上の大型ハイブリッドモデルを投入するとしている。


 また、2年以内に発売予定の次世代ハイブリッド車のプロトタイプ「Honda Hybrid Sedan Prototype(ホンダ ハイブリッド セダン プロトタイプ)」と「Acura Hybrid SUV Prototype(アキュラ ハイブリッド エスユーブイ プロトタイプ)」を世界初公開した。次世代ハイブリッドシステムは、2023年モデルに対して30%以上のコスト低減を目指すとともに、次世代プラットフォームと新開発の電動AWDユニットの組み合わせによる10%以上の燃費向上と、走りのさらなる進化を目指すとしている。次世代ADASは、予定通り2028年発売に向けて開発を進めており、5年間でグローバル15モデル以上のハイブリッド車に搭載していく方針だ。


Honda Hybrid Sedan Prototype

Acura Hybrid SUV Prototype

生産体制の変更と注力地域への展開

 生産体制について、米国オハイオの完成車工場では、余剰能力をすべてICE・ハイブリッド車に充てるとともに、北米の全工場でハイブリッド車が生産できるようにする。米国でのLGエナジーソリューションとの合弁会社であるL-H BatteryのEV用バッテリーラインの一部をハイブリッド車向けに転用するほか、モーター・インバーターのASSYおよび構成部品の現地調達率を4倍以上に高めることで、ハイブリッド車の増産に応える体制の構築と、関税影響の軽減、供給リスク低減を目指すとしている。

 重点地域への商品ラインアップの拡充として、北米、日本、インドを注力地域と位置づけ、戦略的なリソース配分を行う。中国を含めた各地域の取り組みは以下の通り。

  • 日本:軽自動車を中心にEVの拡充を図り、2028年にはN-BOX EVの投入を予定している。さらに2028年以降は、新型VEZELを皮切りに、次世代ハイブリッド/次世代ADAS搭載モデルを展開する。また、「SPORT LINE」、「TRAIL LINE」の追加など高付加価値なラインアップを拡充していくことで、現在の販売台数以上の新車販売と、盤石な事業基盤を実現する方針だ。

  • インド:インドの特性・嗜好に合わせた商品とするため性能要件を再定義し、全長4メートル未満のカテゴリー、ミッドサイズカテゴリーに対するインド向け戦略車を2028年から投入する。インドで年間600万台近くを販売している二輪事業の事業基盤を活用し、二輪車保有客の四輪車へのステップアップ需要を確実に捉え、事業の成長を目指す。その一環としてデジタルプラットフォーム会社「Honda Digital Innovation India」の設立や、2026年度中に事業開始予定のキャプティブファイナンス会社の活用などにより販売拡大を目指す方針だ。

  • 中国:現地の標準化部品、次世代技術における現地技術の活用や、現地パートナーのプラットフォームを活用した新エネルギー車(NEV)の投入により、商品力・コスト競争力の強化に取り組むとしている。

ものづくり体質の徹底強化と外部リソースの活用

 「ものづくり体質の徹底強化」では、「抜本的な原価低減」、「徹底的な開発効率化」、「環境変化に強い生産体質の構築」を推進する。

  • 抜本的な原価低減:直材のコストについて、独自基準の見直しによる標準品の積極的な活用、中国やインドの競争力の取り込みにより、グローバルで原価体質を向上させる。

  • 徹底的な開発効率化:エンジニアリングチェーンマネジメントの徹底的な見直しにより、「開発費」「開発期間」「開発工数」の3つについて2025年比でそれぞれ半減する「トリプルハーフ」を実現する。デジタル環境やAIの活用により、設計・テスト・生産準備を効率化することに加え、開発要件そのものや企画・開発マネジメントの見直しなど、開発プロセス改革により、マイナーモデルチェンジは本年度から、フルモデルチェンジは2028年開始の開発から期間をそれぞれ半減させる方針。

  • 環境変化に強い生産体質の構築:新機種・設備投資の効率的な投入・配分などにより、今後5年間で生産効率の約2割向上を目指す。


     「外部リソースの戦略的活用」では、中国やインドなどのコスト競争力、業界標準品などの外部リソースを柔軟かつ戦略的に活用する。バッテリーについては、当面は完全な自前化ではなく、L-H Batteryの設備を最大限活用するとともに、将来のEV需要拡大への対応も見据えながらも、当面は需要の高いハイブリッドやその他用途を取り込んだ運営効率化を進めるなど、北米での競争力を重視したバッテリー調達戦略をとる。カナダでの包括的バリューチェーン構築のプロジェクトは無期限での凍結とし、今後の調達戦略を引き続き検討していく。自前のコア技術と外部リソースを組み合わせることで、不確実性の高い市場環境下で競争力強化を図る方針だ。

中長期の方向性と二輪事業の展開

 中長期の方向性では引き続き「2050年のカーボンニュートラル実現」を目指すとしている。その実現に向け、地域ごとの市場環境、環境変化、需要動向を見極めながら、EV、ハイブリッド、カーボンニュートラル燃料、カーボンオフセット技術などを組み合わせた多角的なアプローチを加速させる。

 EVについては、今後需要が拡大したときに確実に対応できるよう、EVハードウェアプラットフォームの導入や全固体電池の研究開発を継続して推進していく。また、「ASIMO OS」をEVだけでなくハイブリッドにも適用し、移動価値の向上を目指す。E&Eアーキテクチャーは、国ごとの違いや顧客のニーズ、市場環境の変化、外部リソースの活用などに柔軟に対応するドメイン型とし、統一のソフトウェアアーキテクチャーで高効率な開発を実現する方針だ。


 二輪事業の方向性として、二輪車のグローバル市場は2030年に6,000万台規模に拡大する見通しであり、その中で多様化する顧客のニーズを確実に捉えた商品投入、生産体制の構築により、さらなるシェア拡大、プレゼンスの向上を目指すとしている。


<二輪事業の戦略>

  • ステップアップ需要と商品価値向上:インドや中南米でのカテゴリーのステップアップ需要に対しては、競争力のあるインド、中国のリソースを活用し積極的に商品を投入していくほか、「Honda E-Clutch」などの独自技術・新技術により新興勢力との差別化を図る。

  • 生産体制の構築:二輪事業の最大市場となるインドでは、生産能力を現在の625万台から2028年には約800万台まで拡大する計画。同国内の需要に加え、中南米やASEAN向けのグローバルな輸出拠点としても進化させていく。

  • 電動車への対応:顧客の需要の変化や各国の環境規制などを見極めながら、柔軟かつアジャイルな商品投入と生産体制構築を進める。

財務戦略とガバナンス体制のさらなる進化

 財務戦略について、足元3年間は四輪事業体質の再構築に集中的に取り組み、その後の2年間は、この体質をベースに事業環境に応じて柔軟かつ機動的に商品投入し、四輪事業をさらなる成長軌道にのせていく。EV関連損失の解消、体質改革の深化や注力地域を中心とした新商品ラインアップの拡充により、四輪事業の収益は改善する見込みとし、盤石な収益性を持つ二輪事業や金融事業のさらなる成長を積み上げることで、2029年3月期には過去最高となる営業利益1兆4,000億円以上の達成、2031年3月期には従前からの目標であるROIC 10%の実現を目指す方針だ。

  • キャピタル・アロケーション:2029年3月期までの3年間においては、投入資源を当初のEV向けからハイブリッド車へシフトし、EV投資は3年間で0.8兆円規模にコントロールする。一方、ソフトウェアには1兆円、ICEやハイブリッド車に4.4兆円を投入し、これら合計の3年間の資源投入額は合計6.2兆円とする。その稼ぎを示すR&D調整後のキャッシュフローは、四輪事業の黒字化と二輪事業の強いキャッシュ創出力により、EV関連損失を除き7兆円以上を見込み、投資と株主還元を両立する。2030年3月期以降は、EVの需要動向を見極めながらEV投資の判断を行い、自前化にこだわらず外部リソースの積極的な活用により、投資効率のさらなる改善を図る方針だ。

  • 株主還元:今後もDOE3%を目安として安定的・継続的な配当を実施する。当期の年間配当金は1株当たり70円(中間35円、期末35円)であり、次期配当予想も同額の1株当たり70円(中間35円、期末35円)を計画している。