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【車業界版・今日は何の日】11月7日は「鍋の日」!現場で使える顧客トークネタ

超高張力鋼板の「焼きなまし」と、MIGブレージングの熱力学的最適解

  • #トピックス

2026/11/07

【車業界版・今日は何の日】11月7日は「鍋の日」!現場で使える顧客トークネタ



■ 11月7日は「鍋の日」

11月7日は、暦の上で冬の始まりとされる「立冬」になることが多いことから、食品メーカーが冬の風物詩である鍋物をPRするために制定した「鍋の日」である。鍋といえばグツグツと煮立つ熱が連想されるが、車体整備の溶接では、鋼板を融点まで熱して溶かすこと自体が、最新車両の剛性を損なう原因になりうる。この熱の問題に対する選択肢として、修理書で指定される場合があるのが、「MIGブレージング(ろう付け)」という接合技術である。


従来の溶接が抱える熱の問題

母材もワイヤーも溶かして一体化する

旧来の鈑金塗装で主流だった半自動アーク溶接(MAG溶接)は、母材の鉄板と溶接ワイヤーの両方を約1500℃以上に加熱し、双方を溶かして一体化させる工法だ。

ハイテン材は熱で強度が下がる

現代の自動車骨格には、超高張力鋼板(ハイテン材)が多用されている。複合組織型の鋼板は、製造過程の熱処理によって高い強度を得ているため、修理作業中の不用意な加熱は厳禁だ。素材によっては300℃程度の熱でも強度低下を起こす。

溶接の熱が加わった部分(熱影響部)では、金属組織が変化して軟化し、母材より強度が落ちる。衝突安全性を担う骨格が、修理後に弱点を抱えたまま納車されるリスクがある。

項目

半自動アーク溶接(MAG溶接)

加熱温度

約1500℃以上

母材

ワイヤーと一緒に溶かす

ハイテン材への影響

熱影響部が広がり、強度低下のリスクが大きい

薄板パネルへの影響

溶接熱で歪みやすい


MIGブレージングの仕組み

銅シリコン合金で「ろう付け」する

熱影響部の拡大を抑えるために、修理書で指定される場合があるのがMIGブレージングだ。鉄のワイヤーではなく、融点が約900〜1000℃と低い銅シリコン合金(CuSi3など)の専用ワイヤーを使う。

シールドガスにはアルゴン100%を用いてアークを発生させる。すると、先に溶けるのはワイヤー(銅合金)であり、母材の鉄板は溶かさずに済む。母材も加熱はされるが、溶かさない温度域に抑えることで、熱影響を最小限にする。

項目

半自動アーク溶接(MAG溶接)

MIGブレージング

ワイヤー

鉄系

銅シリコン合金

ワイヤーの融点

約1500℃以上

約900〜1000℃

シールドガス

炭酸ガス系

アルゴン100%

母材

溶かす

溶かさない

熱影響

大きい

小さい

毛細管現象で隙間に流れ込む

溶けた銅合金は、毛細管現象によって鉄板同士のわずかな隙間へ流れ込み、接着剤のように双方を接合する。母材を溶かさず、異種金属で繋ぐ「ろう付け」の理論だ。


防錆性能と作業上の注意点

亜鉛めっきの損傷が小さい

低温で接合するため、鋼板表面の亜鉛めっきが焼け飛びにくい。めっきが残りやすい点は、防錆の面で有利だ。ただし、ブレージングを行った後も、溶接部の防錆処理は省けない。

使えないケースもある

ブレージングは、鉄同士の接合に使う工法だ。鉄とアルミなどの異種金属は、SPRなどによる機械的接合を使う。熱を使わない接合方法との使い分けが必要になる。

修理書に従う

使用するワイヤーとガスの種類、接合する位置、工法の指定は、メーカーの修理書で定められている。骨格部分の作業は、修理書の確認が大前提だ。


まとめ

項目

ポイント

従来のMAG溶接

約1500℃以上で母材も溶かし、ハイテン材は熱影響部で軟化する

MIGブレージング

融点約900〜1000℃の銅シリコン合金で、母材を溶かさずに接合する

原理

溶けた銅合金が毛細管現象で隙間に流れ込む

防錆面

低温のため亜鉛めっきの損傷が小さい。溶接後の防錆処理は必須

使えない接合

鉄とアルミなどの異種金属は、SPRなどの機械的接合を使う

前提

メーカーの修理書に従う

熱を精密にコントロールし、素材の組成を壊さずに剛性を復元するMIGブレージングは、最新車両の修理に欠かせない選択肢だ。