JOURNAL 

シネマエンドレス「さよならはスローボールで」

  • #一般向け

2025/10/22

ユーモアと哀愁あふれる≪脱力系≫ベースボール・ムービー

 地元で長く愛されてきた野球場〈ソルジャーズ・フィールド〉は、中学校建設のためもうすぐ取り壊される。毎週末のように過ごしてきたこの球場に別れを告げるべく集まった草野球チームの面々。言葉にできない様々な思いを抱えながら、男たちは“最後の試合”を始める......。突き出たお腹、もたつく足、空を切るバット......ビール片手にヤジを飛ばしながら、大好きな野球に興じる片田舎に生きる粗野で乱暴だが、どこか憎めない愛すべき男たちのユーモアと哀愁あふれる≪脱力系≫ベースボール・ムービー。


 スパイク・リー、ジム・ジャームッシュら名だたる監督が世界に注目されるきっかけとなったカンヌ国際映画祭〈監督週間〉部門に選出され、オフビートなユルい笑いと心に残る予想外の切なさでカンヌを魅了した話題作がゆる~く日本でも公開。

© 2024 Eephus Film LLC. All Rights Reserved.

サブカルおじさんの推しどころ

 【おっさんたちが野球をするだけ】の映画である。誇張でもなんでもなく、本当にそれだけの映画なのである。なのに、どうしてこんなにクスリと笑えて、子どものころを思い出してノスタルジックな気持ちになるのだろうか。主人公が一切おらず、強いて言うなら野球をする2チームのおっさんたちである。登場人物の誰一人としてキャラの掘り下げもなく、週末に近所で行われているおじさん草野球チームに入り込んだかのような感覚になる作品。だが、そんな慣れ親しんだ野球場がもう取り壊される。仕事や家庭に追われるおっさんたちが気兼ねなく野球をして酒を飲み、ヤジを飛ばして騒ぎ、永遠に続くと思われていた週末が今日終わる。しかし、誰もそこには触れずにいつも通りにジョークを飛ばし、どうでもいい話ばかり。なのに、どうしてこんなにも面白いのか。日本中の疲れたおっさんに観てもらいたい今年のベスト作品になりうるおっさんの身体のように最高にダルダルでゆる~い大傑作。

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監督・脚本・編集:カーソン・ランド/配給:トランスフォーマー/ 10月17日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー


担当記者

青山 竜(あおやま りゅう)

東京編集課所属。映画・音楽・芸術あらゆる文化に中途半端に手を出し、ついたあだ名は「サブカルくそおじさん」。

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