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東京海上の「2025年度 指数対応単価に関するご案内」について同社に聞いてみた

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2025/09/12

東京海上日動火災保険が、取引のある自動車車体整備事業者に対し、事故車の修理工賃の目安となる「指数対応単価」の案内文書を配布したことが、業界内で波紋を広げている。この単価が、同社と日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)との間で締結された団体協約の単価と同額だったため、日車協連の組合員から「団体に加入する意味がない」との不満の声が上がっている。

結論から記すと、日車協連に所属する車体整備事業者にとって不満が出るのは仕方がない一方で、事業者毎に工賃単価を判断しようとしている東京海上の姿勢は、保険金の適正な支払いという側面では正しいと筆者は考えている。また、別紙で付属しているアンケートは特定整備認証の有無を確認するもので、積極的に協力してほしい。


国交省・損保協会の指針に則った対応か

東京海上日動の案内文書配布は、国土交通省や業界団体が定める指針に沿った対応だと見られる。同社は、国土交通省が公表した「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」や「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」、さらに自らの業界団体である日本損害保険協会が定めた「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」に基づいて、工賃単価の評価方法に関する自社の立場を文書として示している。

これまでのやり取りは、個別の案件ごとや年度初めに電話口で伝えるなど、書面で交わされることは少なかった。このため、他の損害保険会社と比較すると、東京海上日動のこの対応は、より透明性が高く進んだやり方と言える。

団体交渉の成果と個別単価が同額に

今回、特に問題視されているのが、案内された単価が日車協連との団体協約で合意した金額と同一だった点だ。日車協連の組合員からすると、苦労して団体交渉を重ねて獲得した単価が、組合員ではない事業者にも同額で提示されていることになり、不公平感が募っている。

この単価設定の理由について、東京海上日動は「具体的な締結に至る交渉過程や弊社の意図は開示いたしかねます」と回答を避けた。一方で、「結果として団体協約において締結した単価と、弊社において設定している各地域に適用される対応単価は一致しております」と述べ、両者が同額であることを認めている。

これは、東京海上日動の立場からすれば、特定の団体に所属しているかどうかで車体整備事業者の単価を変えることはないという公平な判断に基づくものと推測される。同社は日車協連の組合員とそれ以外の事業者で価格を区別することはできず、一貫した基準で単価を設定しているため、結果として金額が一致したと考えられる。

また、東京海上日動は、特定整備認証(分解整備+電子制御装置整備)を取得している修理工場には100円を加算する運用を行っており、日車協連加盟工場であっても同様だという。同社は、どの工場が認証を取得しているか、精緻な情報を持ち合わせておらず、アンケートへの回答を依頼しているとしており、アンケートへの協力は、双方にとって利益がある。

繰り返すが、日車協連に所属する車体整備事業者にとっては、不満が出るかもしれないが、適正な車体整備料金の支払いという意味では正しいと考えられる。

上記のような文書が東京海上から届いたようだ。別紙でQRコードで特定整備認証有無を確認するアンケートが付属している。是非協力を!(宛先の企業名や単価など一部修正しています)

当社からの質問は下記の通り。

【ご質問内容】

(1)配布の意図

・同社の整備料金に関する考えや立場を示したものでしょうか?それ以外の意図はありますか?

<ご回答>

ご認識の通りです。

当該書面は指数対応単価の使用や水準に関する協議を行うにあたり、弊社の基本的な考えをご説明するものです。

 

・日車協の組合員事業者であっても、特定整備認証を取得している場合はアンケートに協力したほうがよいでしょうか?

<ご回答>

ご認識の通りです。
弊社は特定整備認証(分解整備+電子制御整備)を取得されている修理工場には100円を加算する運用としておりますが、弊社として、どの修理工場が特定整備認証を取得しているか精緻に把握できていないため、アンケートでのご回答を依頼しているものです。日車協連加盟工場であっても同様のため、ご回答いただくことで加算することが可能となります。

 

(2)指数対応単価(工賃単価)〇〇円について

・モデル工場で取引した場合の単価でしょうか?

<ご回答>

弊社において設定している各地域に適用される対応単価になります。

あくまで弊社見解としてお示しする金額であり、当該金額を強制するものでは無く、修理工場の主張も伺いながら1件1件の個別事案において協議するものです。

 

・日車協以外の場合、提示金額以下での取引はあり得ますか?

<ご回答>

弊社からご提示する単価は書面上の単価を下回ることは無いため、修理工場から低い単価での協定要望がある等の特殊なケースを除けば、基本的には当該単価を下回ることはございません。

 

・団体協約締結と金額が同じというのは偶然一致、もしくはモデル工場の取引を前提に協約締結を行ったのでしょうか?(交渉内容は原則非開示と伺っています。公開できる範囲の回答でお願いします。)

<ご回答>

具体的な締結に至る交渉過程や弊社の意図は開示いたしかねますが、結果としては団体協約において締結した単価と、弊社において設定している各地域に適用される対応単価は一致しております。

<文・石芳賢和>