JOURNAL 

自動車保険の概況 任意自動車保険 修理費費目別統計表からみる傾向

2025/05/07

対物賠償

・部品費
部品費においては、2022年度と比較して2023年度の構成比は若干減少しているものの、認定損害額単価は155,322円から163,153円へと増加している。これは、部品価格の高騰などが影響していると考えられる。

・工賃
工賃の構成比はほぼ横ばいであるが、認定損害額単価は64,242円から67,789円へとわずかに増加している。

・塗装費
塗装費は、構成比、認定損害額単価ともにわずかに減少しており、それぞれ53,173円から55,644円となっている。

・間接損害
間接損害も、構成比、認定損害額単価ともに減少し、63,044円から71,603円となっている。

・その他
その他費用の構成比はほぼ横ばいであるが、認定損害額単価は27,637円から28,918円へとわずかに増加している。

これらの要因から、対物賠償の修理費合計の認定損害額単価は363,417円から387,107円へと増加している。

車両

・部品費
車両保険においても対物賠償と同様に、部品費の構成比は若干減少しているものの、認定損害額単価は177,793円から184,203円へと大きく増加している。

・工賃
工賃の構成比はわずかに増加し、認定損害額単価も77,533円から82,706円へと増加している。

・塗装費
塗装費の構成比はほぼ横ばいであるが、認定損害額単価は60,005円から62,893円へとわずかに増加している。

・その他
その他費用の構成比はわずかに増加し、認定損害額単価も32,036円から33,347円へと増加している。

これらの要因により、車両保険の修理費合計の認定損害額単価は347,367円から363,149円へと大きく増加している。

全体的な傾向

全体的に見ると、2023年度は2022年度と比較して、対物賠償、車両保険ともに修理費の総額が増加する傾向にある。特に部品費と工賃の増加がこの傾向を牽引していると考えられる。

この背景には、自動車の部品価格の上昇や、人件費の上昇などが考えられる。

■塗装費は伸び悩み、修理規模は小さくなっている

部品費と塗装費を2014年から2023年で経年比較すると、顕著な差異が見られる。部品費は順調な上昇を続け、2014年比で対物賠償では33.86%増、車両では30.36%増と、3割を超える伸びを示している。一方、塗装費の伸びは部品費に及ばず、対物賠償で9.69%増、車両で19.3%増に留まっている。

この差は、修理費全体が拡大する中で部品費の伸びが特に大きいため、相対的に塗装面積が減少している可能性を示唆する。つまり、保険で修理される事故の規模が以前に比べて小さくなっていると考えられる。

もちろん、この背景には衝突被害軽減ブレーキをはじめとする先進安全装備の普及による事故被害の軽減も寄与しているだろう。しかし、同時に考慮すべき点として、車両の平均車齢が上昇し、車両の残存価値が低下していく一方で、部品価格は高騰しているという事実がある。この状況下では、修理費用が車両の価値を上回り、「経済的全損」となるケースが増加しやすくなっていると言える。