JOURNAL 

損保協会、 「修理工賃単価に関する 対話・協議のあり方にかかるガイドライン」を発表

会員会社に適切な価格交渉に必要な考え方の周知徹底、遵守を呼びかけ

  • #一般向け

2025/04/08

日本損害保険協会(損保協会)は、損害保険会社が車体整備事業者と自動車修理の工賃単価について対話・協議する際の考え方として、「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」を2月17日に制定し、3月14日に発表した。

 同ガイドラインは、各損保会社に対して、社会環境や車体整備事業者の実態を踏まえた修理工賃単価に関する方針検討や車体整備事業者とのていねいな対話・協議を促すために、損保会社が車体整備事業者との間で健全かつ適切なコミュニケーションを行うための環境を整備する内容となっている。

 国土交通省(国交省)の指針は、労務費や原材料費の高騰を適切に価格転嫁する必要性や、見積書・領収書、作業記録簿の標準様式の使用などを推奨し、自動車整備業界における価格交渉の適正化を強く求めるものになっている。損保協会は、この国交省の指針も会員である損保会社に周知することで、損害保険業界全体として価格交渉にていねいに対応する必要性を強く打ち出している。

 しかし、先行報道では損保協会のガイドラインにある以下の記述が、会員会社に対して消費者物価指数で料金交渉を行うよう指示しているかのような誤解を生む内容となっていた。損保協会には、会員に対して料金交渉の方針や内容を指示する権能はない。

(1)対話・協議方針の決定

修理工賃単価にかかる自社の対応方針を経営陣の関与の下で決定し、決定内容を社内に周知する。

(取り組み例)

修理工賃単価(対応単価)にかかる考え方について、経営陣の関与の下、消費者物価指数のみならずその他の要素も考慮するなど、環境変化を踏まえて定期的に見直す。

 これは、損保会社の採用する修理工賃単価にかかわる考え方を経営陣の関与の下、会社として決定することを求めたもので、一例として「消費者物価指数のみならずその他の要素も考慮する」と言及されているものである。

 なお、消費者物価指数は財・サービスの価格の変動を示す指標であり、たとえば現在、政府が進めている労務費転嫁との関係では直接的な実態を表す指標となりえない。このため車体整備事業者・損保会社ともに、価格交渉では社会環境に応じて採用すべき指標を検討することが必要で、損保協会のガイドラインにおいても、急激な物価の上昇やそれに伴う労務費転嫁が求められる社会情勢を踏まえ、この考え方を例示して明確化した格好。国交省の指針にも同様の記述があり、今後の交渉においては両業界ともに争点(物価高騰や労務費の転嫁など)に応じ、対外的な説明責任を果たせる根拠のある交渉が行われることが期待される。
 損保協会関係者は、「具体的な協定内容にまで踏み込むことはできないが、顧客に代わり損保会社が車体整備事業者と交渉するには、対話・協議の姿勢を明確化し、社会に宣言することが重要と考えた。車体整備事業者は指針に基づく請求根拠等の明確化や作業内容の透明性確保に取り組んだ上で交渉、損保会社はガイドラインに基づく経営陣関与の下での対応方針の決定・周知やていねいな対話・協議を進めることになる。今後も円滑な協定を継続するには、指針・ガイドラインを踏まえたコミュニケーションが重要で、中長期的な信頼関係の構築につながることを期待したい」としている。

 同ガイドラインの発表により、損保会社と車体整備事業者との間で、修理工賃単価に関する対話・協議がより円滑に進み、最終的には顧客の利便性向上に加え、整備業界全体の健全な発展につながることが期待される。 損保協会は、国交省の指針も踏まえて、今後も関係者との建設的な対話を通じて、より良い自動車保険サービスの提供を目指すとしている。