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スズキの2026年3月期決算、売上収益・税引前利益・当期利益が過去最高を記録

原材料コスト上昇や投資拡大で営業利益は減益も、四輪・二輪の世界販売台数は増加

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2026/05/18

 スズキが発表した2026年3月期の連結業績(2025年4月1日~2026年3月31日)は、売上収益が前期比8.0%増の6兆2,929億67百万円、営業利益が同3.1%減の6,229億9百万円、税引前利益が同0.1%増の7,307億44百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同5.6%増の4,392億67百万円となった。売上収益は5期連続の増収、税引前利益と当期利益は6期連続の増益となり、それぞれ過去最高を記録した。

 当期は、原材料コストの上昇や人および技術への成長投資を継続したことにより、通期では増収減益となった。ただし、第4四半期連結会計期間(2026年1~3月)の業績は、売上収益が前年同期比15.2%増の1兆7,763億円、営業利益が同18.8%増の1,938億円となり、四半期として過去最高を達成している。

 世界販売台数は、四輪車が前期比7万9千台増(2.4%増)の332万台、二輪車が同19万7千台増(9.5%増)の226万1千台となった。四輪車はインド、パキスタン、アフリカなどで増加し、二輪車はインド、中南米などで増加した。


営業利益の増減要因

 前期と比較した営業利益の増減要因において、外部要因では為替影響が64億円の増益要因となった一方、主にインドでの価格上昇による原材料価格変動が850億円の減益要因となった。外部要因を除く項目では、インドを中心とした台数増により574億円、売上構成変化等により522億円、原価低減により436億円の増益効果があった。売上構成変化等の主な内訳には、日本での「ジムニーノマド」投入や「クロスビー」のモデルチェンジ、インドでの「ビクトリス」の投入効果が含まれる。

 一方で、持続的な成長に向けた投資を拡大した。人的投資を中心とした固定費等で427億円、研究開発費で301億円、減価償却費で216億円それぞれ増加している。


事業別の業績推移

 事業別の業績では、四輪事業の売上収益が前期比7.6%増の5兆7,064億20百万円、営業利益が同3.5%減の5,476億32百万円(利益率9.6%)となった。台数増加や売上構成変化の改善、原価低減などの増益効果があったものの、持続的な成長に向けた投資の拡大により減益となった。

 二輪事業は、売上収益が前期比14.2%増の4,544億88百万円、営業利益が同9.7%増の447億70百万円(利益率9.9%)の増収増益となった。主にインドやコロンビアなどで販売を伸ばしたことが寄与している。

 マリン事業は、売上収益が前期比8.9%増の1,194億56百万円、営業利益が同13.0%減の266億5百万円(利益率22.3%)となった。アメリカ、中南米、欧州などで台数を伸ばしたものの、主に米国関税の影響により減益となった。
 その他事業の売上収益は同3.9%増の126億1百万円、営業利益は同2.0%増の39億円(利益率31.0%)だった。


日本およびインドにおける生産・販売状況

 四輪車のグローバル生産実績は、新工場が稼働したインドや経済が回復したパキスタンなどで増加し、前期比23万7千台増(7.2%増)の353万3千台と過去最高を達成した。

 日本国内の四輪販売において、2025年度の軽自動車販売台数はシェア33.0%で国内1位を獲得し、2023年度以降3年連続で首位を維持した。登録車販売台数は「ジムニーノマド」や「クロスビー」を中心に販売を伸ばし、過去最高となる16万8千台を達成している。軽自動車と登録車を合わせた合計販売台数では4年連続で国内シェア2位を維持した。また、1月に発売した「eビターラ」も順調な滑り出しを見せている。

 インド市場における四輪販売では、新型SUV「ビクトリス」の投入効果などにより、国内卸販売台数が前期比3.7%増の186万2千台、輸出台数が同34.6%増の44万8千台となり、ともに過去最高を記録した。2025年9月のGST(インドにおける物品・サービス税)改訂以降、人気のSUVセグメントだけでなく、減税効果の大きかった小型車でも需要の回復が見られている。同社は急速に拡大する需要に対応するため、2026年度上期中にカルコダ工場とハンサルプール工場で2つの新たな製造ラインの稼働を開始させる予定だ。これによりインドの年間生産能力は合計290万台となる見込みである。なお、グルガオン工場については、周辺の物流制約を考慮し、従来の生産能力は70万台であったが現状は50万台としている。


中期経営計画「By Your Side」の進捗

 同期より開始した中期経営計画「By Your Side」では、経営目標として営業利益8,000億円、営業利益率10.0%、ROE13.0%を掲げている。初年度の業績は営業利益6,229億円、営業利益率9.9%、ROE13.8%となり、1年目としては順調な滑り出しとなった。

 同社は目標達成に向け、「新車収益」、「バリューチェーン収益」、「固定費」の3つの軸を基盤とした取り組みを推進している。資本効率の面においては、一般的なROIC経営を参考にスズキの実態に合わせ、個々のプロジェクトの投資と収益の関係や運転資本の適正管理を通じて資本効率の向上を図るとともに、リスク極小化や適切な情報開示を通じた資本コストの低減に取り組む方針だ。

 中期経営計画の達成に向けては、コーポレートスローガンである「By Your Side」を体現し、社是と行動理念を実践して顧客に寄り添い、困りごとを解決するオペレーティング・システムをグローバルで進める方針。日本で培った成果や知見を、インド事業だけでなく各地域における四輪、二輪、マリンおよび新規事業の成長につなげていく考えである。


2027年3月期の業績予想とリスク試算

 2027年3月期の通期連結業績予想は、売上収益が前期比8.1%増の6兆8,000億円、営業利益が同8.5%減の5,700億円(利益率8.4%)、税引前利益が同9.7%減の6,600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同13.5%減の3,800億円を見込んでいる。

 四輪販売台数では前期比7.1%増の355万台を見込み、インド新工場への設備投資に伴う生産能力増強により主にインドで販売台数を伸ばす計画だ。しかし、原材料価格の高騰等が負担となる見通しのため、増収減益を予想。また、不透明な中東情勢によるリスク影響は次期予想に織り込んでおらず、足元ではリスクマネジメントにより大きな影響は出ていないものの、リスクが本格的に顕在化した場合の営業利益への影響を通期で約1,000億円と試算している。